旭岳温泉 湯元 湧駒荘(北海道)

大雪山系の旭岳の麓に湧く旭岳温泉。旭川空港から車で45分ほど、旭岳ロープウェイまであと1kmちょっとの標高2,291mの山間に9軒の宿がある。

創業72年の湯元 湧駒荘は、旭岳温泉で最も古い温泉旅館。昭和25年に湯宿が建てられ、アイヌ語で「湯の向こうの沢」を意味する“ユコマンベツ”から名付けられてる。

大浴場は本館と別館の2箇所だけど、別館の「神々の湯」は改修工事中で利用できず。

本館の大浴場は「ユコマンの湯」と「シコロの湯」。合わせて11もの湯船がある。

21時に男女入れ替えで、一晩中いつでも入ることができる。朝は9時まで。

シコロの湯の脱衣所。畳敷きで綺麗。化粧水などのアメニティやドライヤーもある。

日帰り入浴客の多い時間帯はかなりの混雑だったけど、夕食前には誰もいなくなった。

シコロの湯の方が少し小規模。とはいえ、かなり広めの浴室に、シャワーは10個。

壁に配置された木は、シコロという木で、古くから医薬品の原料とされてきた殺菌力に優れた木。

正面に並んだ2つの湯船と、右隅に1つで、内風呂は3つ。

それぞれの湯船の縁や床が、黒や茶色に染まっていて、源泉かけ流し感が伝わってくる。

こちらの大浴場では、3つの異なる源泉が利用されてる。

2つ並んだ奥側の湯船は、壁に元湯と書いてある。

ここと右隅の湯船は芒硝泉。ナトリウム-硫酸塩泉のことだけど、23号孔元湯源泉の新しい分析書の泉質はカルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉。

ナトリウムとカルシウムがほぼ同量だけど、分析書上は石膏泉。

芒硝泉ならむしろ、この2号孔源泉の方がしっくりくるけど、どっちなんだろ。

ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉の芒硝泉。

緑がかった茶褐色に濁って見え、ある程度の塊になった茶色の湯の花がふわふわ舞ってる。ほんのり金気臭。鉄分を含んでいるからか、縁にはオレンジ色の析出物がすごい。

ざばざば縁から溢れかけ流されていて、配湯口が一生懸命。

仮に2号孔なら、pH 6.4の中性で、自然湧出で毎分10ℓだけ湧いてる。源泉温度は56度。湯口で49.3度もあり、湯船は端っこでも42度。熱くて一瞬しか入れない。

高温なので炭酸ではないかもだけど、遊離二酸化炭素が212mg含まれ、泡付きがしっかりあり、ふわつるの肌触り。保湿成分のメタケイ酸は220mgも含まれてる。

隣り合った湯船に注がれているのは、炭酸水素塩泉。透明に澄んでいて、木造りの湯船の底まで見える。

湯色だけじゃなく、縁の外側が黒く染まっていて、明らかに隣の湯船と源泉が異なる。

壁の石に付いた析出物や色も、

全く違う。

では炭酸水素塩泉に戻って。

透明のお湯の中に大量のオレンジ色っぽい茶色の湯の花がわさわさ舞ってる。

湯口は42.5度ちょいで、湯船は39度割れのぬるめ。

源泉はおそらくこの1号孔で、pH 6.6の中性。泉質はマグネシウム・ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉。

血圧低下、鎮静作用があるマグネシウム分を多く含んでいる正苦味泉。炭酸水素イオンも488mg含んでる。

マップには目薬の湯と書いてある。メタホウ酸が6mg含まれてるからかな。シコロの湯の3源泉はどれも、殺菌作用のあるメタホウ酸が6mg以上含まれてる。

漆の木みたいな芸術的な木の縁。

隣り合わせの42度と39度の湯船。しかも違う源泉で、なんとも贅沢。

ここから見えてる出入り口の近くの湯船は、この熱湯と同じで芒硝泉の寝湯と書いてある。

同じような濁り湯で、金気臭あり。

湯口からは45度の源泉が湯量を絞ってほんの少しずつ注がれていて、浅い寝湯なのも相まって37.5度と、1番のぬる湯。

ぼこぼこと析出物で飾られた湯口。触るとオレンジ色の湯の花が付く。

むぅー、いいね。

少しずつだけど、確実にかけ流し。

露天風呂は石畳の廊下の先に。屋根や壁はあるけどしっかり屋外。

透明だけど、端っこの方に砂のような細かい薄茶色の湯の花が溜まってる。

湯口は2つあり、メインの長い方が47度ちょいで、短い方は43度弱。湯口近くは41度超えで熱く、離れたところだと40.5度ほど。

湯口の頭上には野生の花が垂れ下がっていて、蜂が蜜を集めに来てる。石の上には立派な毛虫がわさわさ歩いていて‥、無理だった。

短い湯口には、こってりとオレンジ色の湯の花が積もってる。

こっちの泉質は、カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉の石膏泉なのかな。カルシウムの鎮静作用が高い傷の湯。pH 6.6の中性。

源泉温度が45度で、鉄イオンも含まれてる。

この奥に屋根なし露天風呂があることは分かるのだけど、男の人の声がするので、行きづらい。ほとんどの人が、あっち女湯ですか?って聞いて確かめてから行くほど。

野趣溢れる湯船。

屋根付き露天風呂を振り返ると、これ。左側の葦簀に囲まれた湯小屋が、もう一方の男性用の露天風呂なので、声が聞こえてたんだ。でも、あの扉が開かないものなのかどうかも分からないので、やっぱり安心できない。

湯口で45.5度、湯船は43度近くとすごく熱い。

泡を伴ってざばざばと投入されてる源泉。薄茶色の湯の花がたくさん舞ってるのが見える透明なお湯。

これ、元湯の湯船と同じ源泉かなぁ。かなりしっかり泡付きがある。

でも、熱いし、扉が開かないか心配だから、速攻で内風呂に戻る。

夜の21時に男女入れ替えで、今度はユコマンの湯に。脱衣所は同じような造り。

湧駒荘は敷地内に自家源泉を5本も持ってる。他に小さなものも多数あるのだそう。源泉はすべて浴室から2~55mの位置にあり、手を加えず湯船に直接投入されてる。

ユコマンの湯では5本の源泉が全て味わえる。

浴室に入るとすぐ、脱衣所の目の前の位置に石膏泉の寝湯がある。

右手奥に大きな浴室があるようで、手前の通路が洗い場。壁際にずらりとシャワーが並んでる。

シコロの木に囲まれた寝湯。2つの湯船に分かれていて、左の湯口のある方が39.5度、右側が38.5度。

オレンジ色に染まった湯口からは、42度弱の源泉が注がれてる。

2号孔源泉なのかな。

湯温で考えたら1号孔?どちらも中性の硫酸塩泉で、芒硝泉か正苦味泉かと違いがあるけど、細かい成分はほぼ同じ。

湯口側は湯が新鮮なので透明感が強い。深さも膝上まであるけど、ぬるい方は膝小僧の真ん中あたりまでしかなく、かなり浅い。

真ん中の仕切りの低い箇所から、隣の湯船に湯が注ぎ込む。向こうは笹濁り。

オレンジ色のふわふわの湯の花が固まって、湯底を漂ってる。

じっとり肌に馴染むお湯で、ほんの少し金気臭がある。

ざばざばかけ流しが気持ちよくて、脱衣所に戻る時はここの排湯で足を注いでから。

洗い場の向かいにガラス戸があり、

露天風呂への通路がある。

あ、突き当たり、湯船の向こうの扉。しっかり錠がしてある。この扉の先にあるのはもう一方のシコロの湯の屋根なし露天風呂。

こちらは広い屋根付きの露天風呂。石膏泉と書いてあった。透明なお湯に焦げ茶のような黒っぽく染まった石。

塩ビ管の湯口は湯の中で、47度と高めの湯温だったけど、湯船は40度割れ。さすがに夜は外気が冷たいからかな。

昨日の毛虫が頭から離れなくて、速攻で内風呂に戻る。

洗い場の通路の先、数段下がったところに広がる大きな浴室。想像してたよりもずっと広い。

ここには4つの湯船がある。

1番左奥がぬる湯。

どこにも泉質名とか書いてない、ただぬる湯と書いてある湯船。とても小ぶりで、2人は入れるけど、知り合いじゃなければ、独りでしか入らないサイズ。しかも、深さも膝下までしかなく浅い。

綺麗な澄んだお湯で、木造りの湯船が細部まで見える。黒く着色してるのか、元がこういう木なのか分からない。

湯船の木は北海道産のトド松、カラ松、シコロの木で造られてるのだそう。残念ながら区別がつかない。

湯口からは34.5度くらいの源泉が、勢いよく出たり、緩くなったり。湯船は33.7度。

全然冷たくなく、ざぶんと入れる。ざぶんと入ると、縁から湯が溢れ出ていく。

真ん中の存在感ある湯船は、目薬の湯。

貝汁のようなブルーがかった薄濁り。溢れたお湯が染めた石はオレンジ色。

湯口は湯の中にあり、45.5度ちょっとの源泉が投入されてる。湯口はオレンジ色。

湯船は39度ちょっとの適温。あまり匂いはなく、きゅうっときしむような浴感。

これが、22号孔目薬の湯源泉なのかな。泉質はマグネシウム・カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉で、正苦味泉。
源泉温度が41.2度なので、あってるかどうか分からない。pH 6.3で、毎分60ℓの自然湧出。

壁や手すりには焦げ茶とベージュのつぶつぶ析出物。

薄茶色のふわりとした湯の花が舞っていて、手にとって見ると、濃い茶色やオレンジ色の粒の湯の花が混じってる。

この大岩は自然の岩を動かさずそのまま浴室に組み込んである。ユコマンの湯は、旭岳温泉(旧勇駒別温泉)の元祖の湯。

右奥にあるのは元湯。湧駒荘の源泉は大正3年に発見され、ホウ酸が含まれていたことから目薬の湯として有名になった。

奥の部分が浅くなってる。めっちゃ浅いけど寝湯なのかな、手すり的なものもある。

縁からどんどん溢れ出てる熱いお湯。

元祖の湯は、湯口で46度弱。湯船は42.5度と熱いので、じっと入っていられない。

石膏泉と書いてあるので、おそらくこの23号孔元湯源泉。0.3mg鉄イオンを含むカルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉。源泉温度は45度。

湯口にオレンジ色の湯の花が溜まっていて、金気臭もあり。pH 6.6の中性で、きゅうっと肌に馴染むお湯。

透明感があり、湯の花はほんの少し。

木の縁からかけ流されてくお湯が、独自の形を作り上げてる。

洗い場側から見て、右手前のこじんまりした湯船が炭酸水素塩泉。こちらも透明感がある。

縁から滔々ととかけ流されてる。

澄んだ湯の中に大きめの湯の花がわさわさ舞ってる。

外に湯口はなく、入り口の段差の側面にこっそりある。分かりにくいけど、かなりの量が投入されてるんだろうな。

湯口付近には粒状の粘土みたいな湯の花が溜まっていて、

大きめのオレンジ色の粒をつかまえ、

触るってみるとねちょっと溶ける。

金気臭がしっかりある。湯口付近は41.5度弱、湯船は39.5度。

湯温的に24号孔源泉なら、泉質はマグネシウム・カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉。

湯が新鮮な感じと、ふわつるの肌触りが気持ちいい。

ところどころオレンジや黒く染まってる浴室の石は、鉄平石という自然石を集めて造られたもの。

どの湯船がどの源泉なのかにばっかり気を取られたけど、5本とも硫酸塩泉で、保湿効果のあるメタケイ酸を200mg程、殺菌作用のメタホウ酸を6mg程含んでる。

硫酸塩泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉と分散されてるようだけど、それぞれの成分量がしっかりあるので、鎮静作用も保温効果もある美肌の湯。

元湯の熱さが有難いくらいのもう少し秋が深まった頃が一番いいかも。

 

旭岳温泉 湯元 湧駒荘
★★★★★
[1号孔]
マグネシウム・ナトリウム•カルシウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉
44.5度
pH 6.6
45ℓ/分
[2号孔]
ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉
56.3度
pH 6.4
10ℓ/分
[22号孔目薬の湯]
マグネシウム・カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉
41.2度
pH 6.3
60ℓ/分
[23号孔元湯]
カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉
45.1度
pH 6.6
110ℓ/分
[24号孔]
マグネシウム・カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉
40.4度
pH 6.4
12ℓ/分
ユコマンの湯(内風呂5 露天風呂1)シコロの湯(内風呂3 露天風呂2)
加温加水循環消毒なし
2022.9 宿泊

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