東北新幹線の一ノ関駅からレンタカーで80分ほど。岩手、宮城、秋田の3県にまたがる栗駒山の中腹、標高1,100mに位置する温泉地。
江戸時代からの湯治場で、11月上旬から4月下旬までは積雪で道路が通行止めになる秘湯。
同じ源泉を利用している2軒の宿があり、ひとつが須川温泉の栗駒山荘。秋田県側に建ち、東成瀬村の第三セクターである秋田栗駒リゾートが経営してる。
もうひとつは、歩いて5分ほど車だと一瞬で着く、県境を跨いだ岩手県の一関市にある須川高原温泉。
宿泊客は無料で相互入浴できる。ただ、寒くて、出掛けて行こうって気になれなかった。とりあえず部屋から大浴場まで暖まりに行くのが精一杯。
栗駒山荘の玄関ロビーは3階になる。大浴場もこの階。地元の野菜や土産品などの売店も同じ階にあり、16時半までは日帰り客がたくさん。
下足箱は日帰り用と宿泊者専用に分かれてる。宿泊者用は各部屋ごと。これ、いいな。スリッパを入れ、裸足で廊下を進む。
手前に男湯、奥が女湯。入れ替えはなく、夜は24時まで。その後湯の張り替えが行われ、朝4時から入れる。9時から1時間清掃なので、宿泊者は実質9時まで。
チェックアウトの頃には、たくさんの人が10時からの日帰り入浴待ちでフロントはごった返し。
畳敷きの脱衣所は、山奥の温泉場の雰囲気そのもの。かなり広く、籠もたくさんある。
湯小屋の中に脱衣所がある感じで、天窓からは浴室の木造りの天井が見える。
硫黄の匂いが立ち込める大浴場、仙人の湯。
入るとすぐに広い洗い場。左右と奥の壁際に、シャワーが並んでる。シャンプーやボディソープもある。
左手の洗い場の向こう側が内風呂。
細長い大きな湯船が白い濁り湯で満たされてる。
湯船の中は、かろうじて周りに一段の段差があるのが見えるけど、かなり強く濁ってる。
すべてが木造り。床も天井も湯船も秋田杉。秘湯の湯治場風情、素敵。
酸性度の強い泉質で、金属やコンクリートはすぐにぼろぼろになってしまうため、大浴場や脱衣所だけじゃなく、建物全体が秋田杉。
天井で繋がってる、向こう側が男湯。
湯口は真ん中あたりにひとつ。ざばざば注がれているので、近づくと熱い。
湯口から注がれてる源泉は49度超え。岩手側で自然湧出してる。数百m引き湯することで湯揉みされマイルドに。
本来なら源泉の近くでのかけ流しの方がいいかもしれないけど、源泉温度が48度と熱めなので、引き湯した方がいいや。脱衣所のは平成9年の分析書だった。HPに載ってる平成19年のだと49.9度。
pH 2.3の酸性・含鉄(Ⅱ)・硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉。酸性度が高く、殺菌効果が強い。ウィルスを不活性化させるので、今まさに有り難い泉質。
筋肉や関節の慢性的な痛みなどに効果があるといわれてる。硫化水素に加え、遊離二酸化炭素を348mgも含むので、血管拡張効果で血のめぐりがよくなるのかな。石膏泉も鎮静作用がある。
歯が解けそうで怖いのでちょっと舐めただけだけど、酸っぱい。まさにレモン水。
湯口は白い湯の花がこびり付いてるけど、流れ出てくるお湯は多分透明。
窓に向かって湯船の左奥は43度ちょい、右手の露天風呂出入り口側は43.5度超えと、差はあるもののとにかく熱く、全く浸かっていられない。
溢れるお湯は窓際の、この排湯口からかけ流されていく。
端には白い湯の花が溜まり、縁の木にも引っ付いてる。湯の中には紐状や粉状の白い湯の花がたくさん舞ってる。
粉っぽい硫黄の匂いがたまらなく心地いい。もう少しぬるかったらいいのに。
いくつか木のベンチがあり、休みながら入れる。
窓の向こうには、栗駒山の裾野に広がる須川高原が一望できる。この日は狙った以上の紅葉の見頃。雨だったけど、この景色が見られて大満足。もちろん露天風呂からはもっと間近に絶景を堪能できる。
一転して翌朝は靄で真っ白。何も見えない。チェックアウトまでこの状態だった。
でも、翌朝のこの湯船に感動。
湧出したばかりの無色透明の源泉。夜中にお湯を抜き掃除され、新しいお湯に張り替えられる。正真正銘、張り替えられた綺麗な源泉を、早朝4時からじっくり味わう。
気持ちいい。新鮮で清潔。フレッシュな透明な湯面には膜のように白い粉とつぶの湯の花が浮いてる。これが空気に触れて酸化しだんたん白濁していくのか。これは宿泊者の特権。
しかも、昨日は熱くて入れなかったのに、今朝は湯口で47度弱、湯船は41.5度と、入れる温度。
ふわするの肌触りだけど、湯上がりの肌はねっとりし、少しちくちくする。塩が効いてる。天然の保湿成分のメタケイ酸が250mgも含まれてるので、保温保湿効果が高い。
ガラス窓の向こうには内風呂と平行するように、細長い露天風呂が見える。段差がついているので、少し階段を降りたところにある。
栗駒山の大自然が見渡せる大パノラマ露天風呂。
左手に秣岳、右手にブナの原生林が茂る野鳥の森、眼下にイワカガミ湿原、そして山と森の稜線が交わる正面中央に出羽富士の鳥海山が見渡せる。天気のいい日は。
昨日は幸運にも、雨なのに綺麗な紅葉が見えた。湯船が熱くて42度超えで、ゆっくり入っていられなかったのが残念。
でも、今朝は40.5度のぬる湯。真っ白で何も見えなくたって、ぬる湯の方がいい。気温2度で、霙まじりの雪が降ってきたけど、それでもぬる湯最高。
長く入ってると、手が細かいしわしわになり、ふわするの肌触りに。
湯船は内風呂よりも長いのかな、同じくらいなのかな。かなり大きい。真ん中あたりに向かい合う2つの湯口があり、豪快にどばどばと源泉が投入されてる。
毎分6,000ℓも自噴していて、それを2つの宿で利用してる。1箇所から湧き出す単独源泉からの湧出量としては国内2位(1位は9,000ℓの玉川温泉)。
昨日は内風呂の湯口と同じ49度超え、翌朝は48度割れの湯温だった。2つの湯口とも同じ。
湯船の端っことは湯温が明らかに異なり、ここだけ熱い。
お湯は両端にある小さな排湯口からかけ流されてる。
湯が上を通る木が真っ白に。
隅の方には白い湯の花が溜まり始めてる。
露天風呂の湯船も、周りには一段の段差があり、ここに座っていられる。縁や段差は秋田杉だけど、湯底だけは御影石。
霙や雪の中、濡れながら入ってたの?と笑われたけど、ぬる湯が超気持ちよくて、頭が濡れても入ってたかった。けど、湯船への移動がめちゃくちゃ寒い。
冬が近づいてくると、温泉本来の暖まるという目的が、急に前面に出てくる。夏の間忘れてた。どんなに暖まっても、冷え性ですぐに冷えてくるので、寒くて何度も何度も温泉に入りに行く。またこの季節に来たいな。
須川温泉 栗駒山荘
★★★★★
酸性・含鉄(Ⅱ)・硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉
49.9度
pH 2.3
6,000ℓ/分
内風呂(男1女1)露天風呂(男1女1)
加水加温循環消毒なし
2021.10.16 宿泊
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