鳥取県と岡山県の県境 蒜山三山の懐に位置する山陰の秘湯 関金温泉は、倉吉駅から車で20分、蒜山高原からは30分に位置する温泉地。
鳥取県中部と山陽地方を結ぶ備中街道 (美作街道)上にあり、江戸時代には関金宿が置かれて湯治場としても栄えていた。
現在の温泉街は寂れている。大きな建物や旅館の跡は残るが、営業しているようには見えない。
明治23年当時のこの通りは、上ん茶屋、下ん茶屋、隠居茶屋の三つの茶屋があったそうで、上ん茶屋が温凊楼(閉館)、他二つが鳥飼旅館となり、現在営業している旅館は唯一、鳥飼旅館のみに。
昭和36年頃の温泉街の様子を見つけた。この頃はまだ10軒の旅館があったそう。
今では寂れてしまっているけど、温泉通で知らない人はいない温泉だし、日本の名湯百選の一つで、国民保養温泉地にも指定されている。
鳥飼旅館は江戸時代からの老舗旅館。9時から18時まで500円で日帰り入浴ができる。電話で確認が必要みたいで、というか、電話に出ないとか玄関で呼んでも誰もいないなどの書き込みを見ていたので、まずは電話。
出なかったらどうしようと、どきどきしながらかけたけど、あっさり電話は繋がり、感じの良い奥さんが気をつけておいでね〜と。
着いてみると、本当に寂れた温泉街。明らかに営業している鳥飼旅館の佇まいにほっとした。
『この温泉は、飲めます』という掲示。源泉かけ流し、消毒もなし。楽しみ。
玄関のドアは手動。出て来てくれるかなと、またちょっと不安になりながら声をかけると、とても愛想のいい笑顔の女将さんがすぐに出て来てくれた。ほっ。
玄関奥から階段を上がり左に曲がると浴場はこちらの案内板。このドアから外に出ると男女別の内湯の入り口。
宿泊者は夜中じゅう入れるらしいけど、男女入れ替えがあるのかは分からない。
女湯が「銀湯」
男湯が「白金湯」。
関金温泉の湯は無色透明無味無臭で、あまりにも美しいことから伯耆民談記で「銀湯」と記され、以後長きに渡り「白金の湯」と呼ばれている。
脱衣所はお世辞にも清潔ではなく、秘湯の日帰り入浴施設みたいな。スリッパをどこで脱ぐべきか迷った。
フェイスタオルが備え付けてあり感動したけど、500円しか入浴料払ってないし、宿泊者用かな、と遠慮した。
すごく暑い日の夕方近く、扇風機と網戸からの風では汗が引かない。
浴室に入ると緑。薄暗い緑の空間だった。
湯船はタイル。もう一つの浴室の湯船は檜らしい。いいな。檜の方が好み。
そして、金の鶴のタイル画。
傷を癒している鶴を行基が発見し、その後 弘法大師が整備したと伝えられている温泉なので。開湯1300年とかなりの歴史がある。
湯船の中には椅子。半身浴できるようにとのことだけど、微妙に深く下がった湯船なので、階段として便利。
竹筒から注がれる源泉は無色透明の単純弱放射能泉。日本有数のラジウム含有量。実は三朝温泉に次いで日本国内第2位。関金温泉と三朝温泉の湯が放射能を帯びている理由は、昭和30年に近くで水成ウラン鉱が発見され、これに由来することが判ってる。
ホルミシス効果や温泉成分で老化や生活習慣病の予防に役立つとされ、健康効果も高い。温泉に浸かること、飲むこと、それから、
この緑の空間で、窓を開けずにたっぷり息を吸い込むことが大切。
近くに残る共同湯の「関の湯」は塩素消毒するようになったので、関金温泉で源泉そのもののお湯に入れるのは、ここ鳥飼旅館のお湯だけになってしまったそう。貴重な貴重な湯船。
湯船から溢れた湯は、湯口に近いこの辺りの縁から洗い場に流れ出ている。ざばざばのかけ流しではないけど、確実にかけ流されている。
アルカリ性の析出なのか、白い析出物。
さらさらのお湯だけど、硫酸塩泉独特の皮膚にしっかり浸透していく感じがある。若干の粒子感がありつつも、滑らかに肌を滑っていく。メタケイ酸も含むので、保湿効果がある。
湯温は40.7度前後で、真夏はやっぱり熱いけど、夏以外の季節ならゆっくり入ってラジウム吸収できるのでは。
なんと贅沢なことにシャワーも源泉。ラジウム泉のシャワー! 今まであったことないと思う。
以前は露天風呂があったそうで、露天用だった33.7度の源泉(毎分10.1ℓ)と、内湯用の鳥飼2号源泉の、2本の自家源泉を持っているからこそできる。
ほんとに貴重で大切な源泉と旅館。ここ以外みんな無くなってしまったようだけど、なんとしても守っていただきたい。
関金温泉から10分程の旧国鉄倉吉線の廃線跡。竹林の緑を見てから蒜山高原へ戻る。
関金温泉 鳥飼旅館
★★★★
単純弱放射能泉
51度
pH 8.1
18.8ℓ/分
男女別内湯
加温加水循環消毒なし
2019.8.7 日帰り入浴
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