赤川渓谷沿いの秘湯、塩原元湯温泉は開湯1200年の歴史がある塩原温泉発祥の地。
毎年秋に開催される「塩原温泉古式湯まつり」では、元湯温泉の元泉館の源泉が温泉街の各祭壇に奉納されているのだそう。
東京駅から1時間10分ほどの那須塩原駅から、バスで塩原温泉バスターミナルまでも1時間10分ほど。そこからは宿の送迎車で15分。3月中旬だけど雪だった。
1600年代、山津波が起きる前は32軒の宿が並び、元湯千軒と呼ばれるほど栄えていた温泉地だけど、現在は3軒のみ。
山津波後、無人だったこの地に明治15年に創業したのが元泉館。手前の隣がゑびすや、奥の上にあるのが塩原元湯温泉 大出館(栃木)-温泉手帖♨︎ 。
元泉館は3本の自然湧出の自家源泉を持ち、1階に3つの浴場がある。玄関から見て廊下の右にあるのが「桧風呂」。
左にあるのが「岩風呂」で、さらに廊下を突き当たりまで進み、道なりに左に曲がり、
屋外に出て進むと露天風呂付きの大浴場がある。
上から見た大浴場。右下に見えてるのが本館との通路。
大浴場「高尾の湯」は、江戸時代の名妓、二代目高尾がここ元湯の出身だったことから名付けられたもの。
利用時間は朝7時から夜21時半まで。朝9時半までと言われたけど、朝8時から日帰り入浴が始まるので、ばたばたと9時半までに退出しなきゃいけないわけではなかった。
男女入れ替えはない。かなり広い脱衣所。脱衣棚には籠はなく、スペース広め。日帰り客の荷物も入る大きさ。アメニティはなく、ドライヤーが2つ。
浴室も広く湯船も大きいけど、洗い場スペースがすごく広い。
壁際にシャワーが5つ。
大きな湯船には灰色がかった黄緑色の濁り湯。誰とも同時に入らなかったけど、何人一緒でも気にならないほどの大きさ。
縁から溢れ出ず、湯口の近くのこの排湯口から流れ出てる。この湯が露天風呂に使われてるのかな、と思ったけどよく分からなかった。
翌朝は乳白感が強かった。夜から雪だったからかな。
大浴場の源泉は3本のうちのひとつ、高尾の湯。泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。pH 6.6の中性で、ふんわりした肌触り。
源泉温度は49度。この日の湯口は53度超えで湯船は42度。翌朝は52度で41.5度なかった。42度だと熱くてやだなぁと思うけど、冬場の41.5度は心地いい。
ふわつるでなめらかな湯感触。湯上がりは指先がするするになる硫黄泉。
露天風呂は箒川の上流、赤川の渓流沿いにあり、雪景色が美しい。
緑がかったグレーの乳白色の濁り湯。
湯の花が沈殿していて、歩くともわもわっと舞い上がる。
白い粒状の湯の花もたくさん舞ってる。
最初入ったときの湯船は43.5度とめちゃ熱だったけど、数分後には42度だった。湯口は41.5度弱。
翌朝は湯口が47度で湯船40度とどんな仕組みかよく分からないけど、かなりのぬる湯でいつまででも入っていられる心地いいぬるさだった。
湯尻からしっかりかけ流し。
この宿の1番特徴的なお風呂は岩風呂の「邯鄲の湯」。
入り口に飲泉所がある。この飲泉の源泉は高尾の湯。苦みが少しある。昔から胃腸の名湯で、傷口をふさぐ効能があり胃潰瘍が治ったとか。
朝食で温泉粥か食べられる。お粥にしても、苦みが強めのクセが強く、味わい深い。
邯鄲の湯は混浴なのだけど、15時から20時半までが女性専用時間で、21時から翌朝9時までが混浴となる。
脱衣所は男女別で、
それぞれの脱衣所から向こうに出た瞬間から一緒になる。
脱衣所は広くはないけど、ほとんど人とかち合わないので充分。
脱衣所から4、5段降りたところに浴室がある。
洗い場もあり、シャワーが2つ。秘湯の風情がありまくりの木造りの湯小屋で、
高い天井には湯気抜きの窓。
正面の木の壁の手前には屏風絵のような岩。邯鄲の湯が特徴的なのは、岩肌から源泉が湧出していること。
一番乗りだったのか、湯膜がすごい。すごすぎてテンション上がる。
湯船はゆったりで6人サイズくらい。つめればもっと入れるけど、どうなんだろ。女性専用時間に2回入ったけど、どちらも独泉だった。
2つ湯口があるのだけど、明らかに岩から出てるであろう方から。
湯船は39.5度ちょいのぬるめなんだけど、ここだけ熱い流れがある。
自らの析出物で道を狭めていきそうな細い湯道から49度の源泉が流れ込んでくる。
奥の黒い湯溜まりからは、絶えずぐつぐつぼこぼこじゅわじゅわと音がし、石油のような鉱物の匂いがする。
これが邯鄲の湯源泉。湧出量は毎分わずか1.9ℓ。泉質名は高尾の湯と同じ含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。pH値も同じ6.6の中性だけど、見た目これほど違うものなのか。
邯鄲の湯が湧き出るぐつぐつぼこぼこじゅわじゅわという音よりも、少し大きめに響く水音が、もう一つの湯口。
この湯口からは大浴場と同じ高尾の湯源泉が注がれてる。湯口で45度。白い湯の花がべったり付いた湯口を見て思い出したけど、高尾の湯の内風呂の湯口はグレーの析出物が付いてた気がする。
湯尻から排湯されたお湯はぐるっとまわり道してここに流されてる。白い道ともう一方に濃いグレーの道。
邯鄲の湯が染み出したやつなのかなとも思ったけど、高尾の湯なのかもしれない。
ブレンドすることで、湯の花や湯膜がすごいことになるのかな。
これだけ湯膜あるとざらりとしそうだけど、ふわふわやわらかな浴感。少し粉っぽい硫黄の香り。
いつまででも入っていられる湯温と気持ちよさ。中国の故事、邯鄲の夢にちなんでつけられてる。
最後に3つ目のひのき風呂「宝の湯」。こちらは男女別に1つずつ。入れ替えもなく、翌朝9時まで一晩中入ることができる。
脱衣所から2段ほど下がったところにある浴室。この感じもザ秘湯。
天井も高く、すごく低いところにいる気分。
細長い湯船で3人サイズ。
緑がかった乳白色、ペパーミントグリーンのような綺麗な濁り湯。湯船は析出物でコーティングされているのか、底はつるつるでお尻がつるんつるん。だけど、側面はじゃりじゃりで、擦れると痛いやつ。
排湯の道は真っ白コーティング。
源泉温度は56度と3本の中で一番高温。自然の間隔で出たり休んだりする間欠泉。熱い時は水を入れてと張り紙があったので、熱いのやだなと思いながら入ると、湯尻で40度ほどの適温。
間欠泉なので30分おきにたくさん源泉が出るのだそう。熱い時は加水して、とわざわざ書いてあるくらいだから、ものすごく熱くなるのかな。
何回か入ったけど、湯温も湯量もだいたい同じくらいだった。
湯口は49度超え。湯口からは石油のような匂いがする。
このすごい湯口、元はどんなだったんだろう、舌みたいなやつ析出物の塊なのかなと眺めてたけど、そんなわけないか。
膝がぼんやり見えるくらいの濁り具合。湯の花が舞ってるわけじゃない濁り湯で、ほんの少しだけ湯葉みたいなタイプの小さな湯の花がある。底にはざらりとした小石みたいなのも。
粉っぽい硫黄の匂いで、ふわつるの肌触り。ミルキーで強めの濁りが、秘湯の本物の温泉感があり心地いい。誰かが加水したのかもだけど、熱すぎない適温なのも良かった。
3本の源泉は見た目からして全然違うけど、泉質名は全部同じ。このミルキーな濁り湯がすきで、湯口の析出も大好物だけど、岩から湧出してる邯鄲の湯も湯膜がすごくてぬる湯の名湯でインパクト大。露天風呂が好きな人は高尾の湯に行くのだろうし、うまく分散されてる3本の源泉。
塩原元湯温泉 秘湯の宿 元泉館
★★★★★
[高尾の湯]
含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
49.1度
pH 6.6
72.0ℓ/分(自然湧出)
[邯鄲の湯]
含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
46.2度
pH 6.6
1.9ℓ/分(自然湧出)
[元泉館新堀 宝の湯]
含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
56.0度
pH 6.9
21.0ℓ/分(自然湧出)
内風呂(男2女2混浴1)露天風呂(男1女1)
加水加温循環消毒なし
2025.3 宿泊
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