安達太良山の麓、海抜600mの高原にある岳温泉。
最寄駅は二本松駅で、新幹線の郡山駅から東北本線で20分ちょっと。駅からは西へ20分で温泉街。郡山駅からレンタカーだと40分ほど。
ちゃんとした温泉街に驚いた。こういう温泉街久しぶりに見た。
平安時代に坂上田村麻呂が開湯した温泉地だけど、江戸時代に二本松藩が安達太良山の標高1500mに整備した温泉街は、土石流で崩壊。
1年後に再建された14件の旅館と3つの共同浴場、茶屋や商店などの立派な温泉街は、明治元年の戊辰戦争時に、二本松藩士により焼き払われ、明治3年に再々建されたものの、明治36年には旅館からの失火で再び全滅。
3度の大災害から復興を経て再再々建され、今のような温泉街になったのだそう。
ちょうど桜も満開で、たくさんの人が歩いてた。
現在の温泉宿は15軒ほどみたいで、高評価が気になっていた、お宿 花かんざしへ。
昭和初期に建てられた木造家屋。野に咲く花のように大らかな優しい宿でありたいと、全8室のお部屋はすべて野に咲く可憐な花の名前。
泊まった部屋は“宵待草”。
全8室のうち3室(現在1室工事中)が源泉100%かけ流しの露天風呂付き。
朱い信楽焼の湯船。ふたりでも十分にゆったり入れるほどの大きさだけど、もちろんひとりで。
底には湯の花がたくさん溜まっていて、
足を踏み入れると、もわぁと舞い上がり、一瞬にして白い濁り湯に。くぅ〜。こういうお湯久しぶり。
紛うことなく源泉かけ流し。
湯口は片口みたいになっていて
立派な白い析出物がびっしりこびり付いてる。
湯口の真ん中に湯が湧き出る穴があり、時折り白い湯の花が一緒にぼこりと舞い上がる。
湯口の中は51.5度。熱い源泉なので手をつけようと思わなかったけど、この溜まってる湯の花どんな感じだったんだろう。
露天風呂はちゃんと屋根があり、お庭に繋がってる。シャワーもついてる。
背中を温かい湯口側にもたれると、ちょうど首までつかって、両踵が反対側の壁に付くサイズ。
40度ちょいの絶妙なぬる湯で、超快適。ぬるくするために、湯量をマックスに絞ってもらった。
そしたら、うまいことに注がれるお湯がちょうど湯船の縁にあたり、首の辺りだけほどよく暖かく、あとはぬる湯という最高の湯船を生み出した。
つるつるの陶器にお尻にざらざらの湯の花。漂う白い湯の花を眺めてたら時間忘れるほどの極楽。
大浴場は男女別で2つ。一晩中入ることができ、夕食時と朝食時に入れ替えがある。暖簾を目安に。
夕方と朝食後に女湯だった奥の大浴場。フェイスタオルが備え付けで、何回でも入りにきやすい。
脱衣所と浴室がガラス戸とガラス窓で見えるようになってる。
2つのうち、こちら側は内風呂のみ。もう一方の大浴場には内風呂と露天風呂がある。
ゆったりとした造りで、洗い場は壁際にシャワーが2つ。
タイル造りがレトロな湯船。タイル派じゃないけど、全然嫌ではない。
洗い場側へ溢れた湯がどんどんかけ流されていて、床に湯の花が溜まって滑るので注意。
湯の花がすごい。白い大小の湯の花が無数に舞ってる。粉雪みたいな、いやスノードーム⁈あんな感じ。
じっとして目をつぶってると、手や身体に積もっていくのが確かに分かる。
岳温泉の源泉は、安達太良山と並びそびえる鉄山の南、標高1500mのくろがね小屋付近で、毎分1290ℓも自然湧出してる源泉を引き湯してる。
湧出時は70〜80度の源泉が、標高差900mの傾斜を活かした山肌を伝う湯樋を通り、8kmもの距離を40分かけて温泉街に到達した時には56度ほどに。
この日の湯口の湯温は51.5度前後。
加水なしの源泉かけ流し。適温になるよう湯量を絞って調整されている。かつ湯口から直接ではなく竹筒にワンバウンドさせてから、湯船に注がれてる。
湯口の横には水道の蛇口があり、好みの温度に調節して入ってくださいとのこと。
大浴場が好みの湯温で入れるなんて最高。しかも、8室しかないし、一晩中入れるので、誰とも会わない。独泉なので気にせず調節させてもらう。
入ったときは42.7度だったので、水道水で少し埋める。
とはいえ、熱っ!と感じるのは最初だけで、酸性泉特有のちりちりする感じがあまりない。引き湯時に管の中で適度に湯もみされて、肌にやさしい柔らかな湯になるというのも納得。
湯口には灰色の湯の花が溜まり、析出物が付いてる。硫黄臭はほんのりきつくなく、土埃のような匂いがする。
ねっとりした肌触りで、もっちりきゅうっと肌に吸い付く。
天然の保湿成分メタケイ酸が137mgも含まれてる。家に帰った翌日も、肌のキメが整ってるような気がした。酸性泉は自分の肌に苦手なイメージだったけど、なぜか気に入ってしまった。
大浴場の向かいには休み処があり、お水だけじゃないサービス。お料理もかなり絶品だし、期待以上のお宿。作務衣も着心地良くて気に入った。
夕食後から朝食までの時間、女湯だった手前側の大浴場は、露天風呂付き。
こちらのシャワーは3つ。ゆったりした浴室。
もう一方と同じような造りだけど、湯船は気持ち小さいような気がする。気のせいかもしれないけど。
湯口からは53度の源泉が、すんごい絞った湯量で注がれてる。
味はレモン水。顔を洗うと目にしみる。でも気持ち良くてつい洗ってしまう。
泉質はpH2.5の単純酸性泉。酸性泉は劣化しにくいらしいので、引き湯してても新鮮な感じがするのかな。
殺菌効果が高く、皮膚病や切り傷などに効く。酸性成分がお肌の角質を溶かすことから、美容効果もある。湯上がりの肌はするするで、しばらく指先が指紋なくなったんじゃないかと思うようなするする。
湯口の周りには白い析出物。湯口の中には今日の湯の花がべったり。
湯底のタイルにもたっぷり湯の花が溜まってゆらゆらしてる。
足を入れるともわっと舞い上がりあっという間に濁り湯に。
44度超えてたので熱くて、水で埋める。すぐに適温になり、その適温がかなりずっと続く。
熱い湯の投入量が少ないのと、おそらく湯口の向かいに排湯口があることで、
湯温が保たれやすいのかと。
いい具合の湯温に静かにつかってると、夜の静寂に湯が注がれる音だけが響いて、なんとも心が鎮まる。
それほど長湯してるわけじゃないのに、指先がしわしわになる。
八甲田温泉 ぬぐだまりの里 秘湯 八甲田温泉(青森) – 温泉手帖♨︎のラムネ湯の時みたい。
浴室はガラス張りで、隣の露天風呂の湯船が真横に見える。
きっちり屋根が付いてるヒバの湯船。秘湯風情がある。
湯底には湯の花がたっぷり溜まってる。
夜にきた時、湯船の温度が46度超えで、つけてしまった足がやばい熱さだった。
翌朝仲居さんが教えてくれたのだけど、あれ以上湯量を絞ると湯が溜まらないらしく、調整が難しいらしい。
露天風呂にこだわりがないので、全然気にならない。
でも、熱すぎて誰も入らないのに、滔々とかけ流されてるのはもったいないな。
かなり豊富な湧出量だから出来るかけ流しではあるけど。
岳温泉では夏は週に1回、冬は2週間に1回の頻度でミルキーデイがある。その名の通り、源泉が牛乳のように白濁する日。
「湯花流し」という、湯樋に付着した湯花を流し落とすことで、普段は透明のお湯が温泉成分たっぷりの湯の花で真っ白になるそう。いいなぁ。ミルキーデイに来たいな。
岳温泉 花かんざし
★★★★
単純酸性温泉
56.7度
pH 2.5
1290ℓ/分(自然湧出)
内風呂(男1女1) 露天風呂1
加温加水循環消毒なし
2021.4.10 宿泊
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