山口市の湯田温泉。県庁所在地に湧く温泉は珍しく、山形、山梨、鳥取、愛媛と山口だけらしい。ん?もっとありそうだけど。市街地に近接してって意味なのかしら。
新幹線の新山口駅から車で15分と好立地だけど、新幹線で山口って東京から5時間以上かかる。飛行機で山口宇部空港までは1時間半。空港からは車で40分ほど。飛行機の方がいいかな。
湯田温泉には30軒ほどの温泉宿があり、中には坂本竜馬や高杉晋作など幕末の維新の志士達が集っていた老舗宿も残ってる。
一方で、2年前にかんぽの宿が閉業し、去年から今春にかけてプラザホテル寿、翠山荘も閉業してる。
温泉街の中心から少し離れ、山に囲まれ静かに佇む山水園は、昭和天皇が2回も訪れた宿。
大正期に別荘として建てられ、昭和11年に増築し旅館として営業を始めた。建物は国の登録有形文化財で、庭園も登録記念物。
一瞬、松田屋ホテルとどっちに泊まるか比べたけど、山水園の“数千坪の敷地にわずか14部屋”と、“3本の自家源泉を持っていること”に勝るものはない。
多くの宿はいくつかの源泉を混合した『湯田温泉ミックス泉』を使用しているけど、山水園には自家源泉がある。
部屋の目の前が庭園。直接庭に降りることもできる。くつろぎすぎてると庭師さんと目が合った時にバツが悪い。
温泉付きの部屋が3部屋あり、ここは源泉かけ流しの内風呂付きの楓の間。バスタオルもフェイスタオルもたくさん用意してあって嬉しい。
大きな円形の湯船。これが大浴場でも全く驚かないほどの大きさ。なみなみと湯が注がれてる。
浴室も庭に面していて、庭の緑が窓に映ってる。ほんのり硫黄の匂いが漂う。
木造りの立派な天井。きちんとした湯小屋そのもの。部屋風呂とは思えない。
ざばざばと湯船から溢れたお湯がかけ流されている。3本の自家源泉は合わせて毎分700ℓとかなり豊富な湯量。
タイルの湯船、あまり好きじゃないけど、これだけざばざばかけ流しだったら、気持ちよくて全然嫌じゃない。むしろ清潔感がある。
チェックイン直後に湯温を測ってみたら45度超え。これはやばいと思ったけど、なんと!蛇口が2つ!
“熱い温泉”と“温い温泉”って!そんな最高な蛇口見たことないよ。贅沢な!最高じゃん。
とりあえず熱い温泉を止めて、1時間半ほど大浴場や外湯を巡って戻ってくると、36度割れの適温のぬる湯になってた。
ぬるい源泉は21度。これだけ出して触るとかなりの冷たさ。1号泉が源泉温度31度なので“温い温泉”は多分1号泉。無味無臭で、硫黄の香りはしない。pH 8.8のアルカリ性単純温泉で、溶存物質の総量も少なく薄めの成分。浴感はつるりとしてる。
何がいいって、こんなに湯船が大きいのに、湯量がすごいので、すぐに温度調節ができる。
ぬるくなっても、熱くなっても、逆の源泉をどばっと入れたらすぐに適温に出来る。
でも、お湯と遊んでるうちに、“熱い温泉”の方が硫黄が香って心地いいことに気付き、できるだけこっち多めのブレンドに。よっぽど熱過ぎって時以外はこちらの湯量を絞って調節。
熱い源泉は57度。ふんわり硫黄が香る。3号泉が71度で、2号泉が52度。混合泉なのか、2号泉なのかは分からない。
湯底には薄茶色の塊や糸状の湯の花が漂っていて、白い湯の花も少し舞ってる。
最高な部屋風呂だけど、衝撃の事実が!熱い温泉が24時で止まるとな。朝5時半まで。
我が家が温泉付きの客室を選んでいるのは、長湯できるぬる湯を求めていて、旦那さんが夜中や早朝にお風呂に入る人だから。そしてお風呂で読書するから。
24時から5時半って、彼のお風呂のゴールデンタイム。これはショックだった。ちょっと熱めにして24時を迎え、どうにかやり過ごしたみたいだけど。
この源泉は酸化を防ぐ還元力が強い。つまり、体の酸化をくい止める若返りの湯。その酸化還元電位(ORP)がマイナス251mVだそう。ORPを公表してる宿、稀にある。もちろん還元力が強いところが公表してる。榊原温泉 まろき湯の宿 湯元 榊原館(三重) – 温泉手帖♨︎がマイナス225mVで、最近入った小野川温泉 河鹿荘(山形) – 温泉手帖♨︎がマイナス290mVだった。
測り方とか色々賛否両論あるみたいだけど、加温も加水も消毒もない源泉かけ流しが基本。それがぬるめの適温なら、なおさら最高です。
部屋の出入り口の前に家族風呂がある。貸切風呂だと思うけど、説明されず。部屋にある人にはスルーなのかな。
この扉めちゃくちゃ可愛い。我が家のドアにしたいよ。
ちょっとお邪魔してみると、タオルが備え付いてる脱衣室。
庭に面したガラス戸に緑が眩しい。
家庭用サイズのタイルの湯船。お湯は溜められてるけど、注がれてないので、入る前に調整するっぽい。綺麗な水色のタイル。
大浴場は2階の端っこにあり、古い建物の奥に急に白いエリアが現れる。
利用時間は夜は23時半まで、朝は6時から9時半まで。
手前が女湯で「弥生の湯」。看板の字は安倍晋太郎。奥が男湯で「仁寿の湯」。こっちは岸信介だそう。三代に渡ってこの宿を訪れてる。
ずらりと並ぶ脱衣籠。今どきめずらしくはあるけど、日帰り入浴してないし、14室しかないのでわざわざ間引く必要もない。一回も誰とも会わなかったので、むしろ籠2つ使い。
バスタオルもフェイスタオルも備え付いてる。ドライヤーはひとつだけ。宿の源泉で作った化粧水と乳液もある。
浴室はこじんまりしたサイズで、湯船も大きくはない。
入ってすぐの左手に、カランが3つ。内2つにシャワー。
L字型に配置された湯船は長細いのと、小さな正方形の2つ。
レトロな正方形の縁のあるガラス戸越しに、庭の緑が間近に見える。ちょうど高台になってるのか、2階に上がってきたはずだけど、また庭師さんに遭遇する。こちらが立って覗かなければ、下は曇りガラスなので大丈夫。
湯船の温度は41.3度。熱くなくてほっとする。普通にいい温度。ぬる湯好きとしては熱いけど、世の中的には適温。翌朝は40度割れの私的にも適温だった。
決して大きくない湯船だけど、ひとりで入るなら超広い、快適湯船。部屋のお風呂と同じで、タイルなのに、清潔でざばざばかけ流しだから、気持ちいい。
すっぽりお湯につかったとき、縁から溢れるお湯がたまらない。
すごく透明感が強い。湯船のサイズと湯量の多さ、湯使いの成せる技なのか。しかも、髪の毛1本さえない。自分ちのお風呂みたいな清潔さ。めちゃくちゃ気持ちいい。
粉雪みたいな白い湯の花と、時々薄茶色の糸状の湯の花が、勢いよく投入されるお湯の流れに巻き込まれて舞ってる。
泡付きがあり、ふわぬるの肌触り。気持ちよくて肌をさすり続けてしまう。ふわりと硫黄臭がするのも心地よくていくらでも入っていられる。
小さな正方形の湯船は、本当に小さい。
縁を超えて湯が注がれるだけなので、湯温は40.5度。
泡風呂ボタンなるものが。
入ってないけど、押してみる。
おぉ。すごい威力。
泡がおさまってから見てみると、白い湯の花がたくさん舞ってた。
なぜか入る気がしなかったこの湯船。湯底が金気っぽかったからか、あまりに小さいからか。ここしかぬる湯がなければそれでも入るしかなかったけど。
湯口から投入されてる源泉は、だいたい38.5度から55度までを行ったり来たりしてる。かなり短いスパンであっという間に、行ったり来たり。湯量も一定ではない。すごい調節に感動する。
そしてさらに感動なのが、秘密兵器の冷泉ボタン。これ押しちゃうと、ものすごい勢いでものすごい量の冷泉がどばどば出てくる。
冷泉の湯温は23.5度。3回投入すると湯口の周りはあっという間に39度くらいのぬる湯に。1号泉万歳。極楽すぎる。でも、独泉だから出来ることでもある。独泉万歳。
湯上がりの肌はねっとり。時間経つとしっとり。
山水園は日帰り入浴を受け付けてないので、宿泊者はこんなにもゆったり好きにお湯を楽しめる。
庭の向こうに“外湯”という呼称の「翠山の湯」が隣接してあり、そちらは日帰り入浴できる。宿泊者は入浴券をもらえるので無料。
湯田温泉の由来は古く、正治2年(1200年)にその名が記されているけど、歴史はもっと古くて、室町時代に傷ついた白狐が山水園西側の権現山のお寺の池に浸かり、傷を治していたのが温泉発見の“白狐伝説”として言い伝えられている。
鳥居を横目にちょっとした坂を登ると翠山の湯がある。
入り口に飲泉所ならぬ取泉所。200円で4ℓの温泉が出る。
3号泉はここの真下の玄関前にある源泉。アルカリ性単純温泉でpH 9.2。溶存物質が675mgと1号泉より成分も濃いめ。
昭和54年に掘削した3本目の源泉で、71.2度の高温泉。岸元首相が“仁寿の湯”と命名してる。
山口県下で高温泉(42度以上)は湯田温泉だけだと、パンフに書いてあったけど、川棚温泉 小天狗さんろじ(山口) – 温泉手帖♨︎が43.6度だったけどな。
翠山の湯の営業時間は10時から22時まで。
ロビーに飲泉所があり、紙コップも置いてある。これは31.5度の1号泉。無味無臭。
手前が女湯で奥が男湯。廊下から見えてるタンクは何だろ。3本の源泉を混合するところかな。
フェイスタオルとバスタオルも貸してくれる。渡されたロッカーの鍵で、決められたロッカーを使用。脱衣所の中に自販機もある。
浴室に入ると右側に打たせ湯(女湯のみ)、バイブラ湯、ジェットバスがある。どれも入らず。
正面に長細い大きめの内風呂。左手にシャワーが6つ。しっかり仕切りのあるタイプ。
シャワーもカランも温泉なので、リンスや石鹸が落ちていないようなぬるぬる感がある。ほんのり硫黄臭もあり、シャワーで顔を流すのがとてつも無く心地よく贅沢な気分。
左奥にはサウナと水風呂。水風呂も源泉100%だそう。それは最高だろうな。サウナも水風呂も入らないのだけど。
広い内風呂の湯温は41度。うまく調整されてる。湯口は44.8度だったけど、一瞬測っただけ。もしかしたら、山水園の内風呂みたくぬる湯から熱湯までを行ったり来たりしていたのかもしれない。混合泉でぴたりと44.8度なのかもしれない。いまさらだけど気になるな。
細かい白い湯の花がたくさん舞ってる。泡付きがあり、ふわりとした肌触り。つるつる浴感が気持ちいい。硫黄の匂いはほんの少し。
露天風呂は丸い湯船。深さにこだわって作っていて、男湯の方が少し深いらしい。
露天風呂の方がぬるぬる感が強い気がした。少し大きめなボンボン状の白い湯の花が結構たくさん。湯温は41度弱。湯口の温度は43.8度だった。
タオル付きで1600円と高めの値段設定だからか、それほど混んでなかった。お金出して循環湯に入る意味ないと思う。源泉かけ流しの本当の温泉に入りたいなら、決して高くない。
湯田温泉 名勝 山水園
★★★★★
アルカリ性単純温泉
46.7度
pH 9.2
内風呂(男1 女1 貸切)外湯
加水加温循環消毒なし
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