特急あずさで新宿から2時間の茅野駅が最寄駅。駅からは車で30分ちょっとの八ヶ岳連邦の北西麓に位置する奥蓼科温泉。
麓から順に、明治温泉、渋・辰野館、渋御殿湯の3軒の宿がある。
江戸時代以前より利用されている湯治場で、湯みち街道(県道191号線)沿いには多くの湯みち観音が残されてる。
明治温泉より約4km奥にある渋温泉までの観音像33体と、明治温泉までの観音像33体の計66体。 渋温泉のものは江戸時代(天保年間)に、明治温泉のものは明治中頃に作られたもの。
おしどり隠しの滝を間近に望む秘湯の一軒宿、山の宿 明治温泉は、明治21年創業、134年の歴史がある。
実はそれ以前の江戸時代の中頃から、近郊の農家の湯治場として細々と営まれてきた宿で、他の2つの宿とは異なり、代々続く家族経営ではなく、町の人が管理してきた経緯がある。かつて、“みしゃかの湯”と呼ばれていた湯治場。
建物も古い秘湯の宿。トイレも洗面所も共用。夏休みで満室なのもあったかもしれないけど、ドアを開け閉めする音や話し声、廊下を歩く音など、気になる人は無理かもしれない。
帳場の先の階段を降りると“温泉冷えてます‼︎”の看板。
とびきり暑い日に来たくて今日を選んだけど、あいにくの台風で涼しい。駅からの車内もクーラー要らずなほど。もともと避暑地でもあるのかも。
大浴場は朝の9時まで一晩中入ることができ、男女入れ替えはなし。
9時から掃除が入り、11時から15時までが日帰り入浴の時間。
畳敷の脱衣所。籠が間引いて置いてあり、上段には鍵付きロッカーも。
夕食後は混み合っていて、出直すほど。現在10室での営業とのこと。今夜はよほど温泉好きが集中したのかな。
ちょっと髪の毛とか気になった。女性率が高かったのか。宿の人で女性を全く見かけなかったので、そのあたりも影響してるのかも。
広々した浴室は、赤茶けた床に、独特のペンキのような金属のような匂い。鉄の匂いかな。
湯船は3つで、2つの内風呂と開け放されたガラス戸の向こうに半露天風呂が1つ。
洗い場は5つあるけど、シャワーがついてるのは4つ。赤の蛇口と青の蛇口を自分で調節するやつ、久しぶり。シャンプーもボディソープも揃ってる。
窓際にある大きな内風呂が、3つのうち最も暖かい「展望大浴場」。
源泉を循環濾過してるので、ほぼ透明。源泉も少量ながら補充されてるのだそう。
夕方の湯温は38.5度。湯口からは45.5度のお湯が出てた。
湯温測っただけで、ここには浸からず。
でも、加温循環してる湯船を維持するの大変だろうに、3つも湯船あって、一晩中入らせてくれるなんて、温泉好きに優しいお宿。
もう一つの内風呂は、この打たせ湯式に湯が注がれている「冷泉打たせ湯」。ごごごごぉじゅうっという、いかにも泡を持った音を発してる。
2ヶ所の打たせ湯があるのだけど、湯量はまちまち。
源泉そのものの湯船。
源泉温度は24度ほど。真夏だからか、湯船の温度は28度くらい、翌朝は32度近くあった。
思ったより温かさがあり、躊躇なく入れる。冷鉱泉の中でも、ひーっとなる冷たさで入るのに勇気いるやつではない。
でも、手前が一段段差になってるので、そこに腰掛けて半身浴。
648mgも遊離二酸化炭素を含んでるけど、それほど泡付きはない。手で受けると泡は付いてるけど、上から勢いよく落ちてくるから、炭酸なのか空気なのか分からない。
温度がぎりぎり25度なくて、てか、真夏に調査すればぎりぎりいきそうだけど。けど、温度が足りても単純温泉とされてしまうのも微妙。
泉質名がつかず、温泉法第2条に規定する温泉(メタケイ酸、メタホウ酸、遊離二酸化炭素)となってる。
少し酸っぱくて、鉄の匂いはほんのり。いかにも含鉄泉っぽいんだけど、鉄イオンは3.5mgでそれほどでもなく、爪の間もさほど黒くならない。
源泉は15mほどの距離の滝の上部から自然湧出している自家源泉。
かつては、縁からかけ流されていたのか、赤茶色の析出物が残ってる。いまは、おそらく湯船の中から排出されてるのでは。
というのも、女湯の浴室はめちゃくちゃ暗くてあまり見えない。夜の間も灯りはこの脱衣所から照らしてるスポットライト一つだけ。
湯船の中のここから抜けてるのか分からないけど、半露天風呂の湯船の側面から、直接冷たい源泉が流入してきてるみたいだから、源泉湯船から繋がってるのかなと推測。
酸性のせいか、肌にちょびっとしみる。pHは3.6の弱酸性。ざわざわな肌触り。湯上がりの肌はねっとり。
鉄分も炭酸も血行促進に効果があるので、身体の芯から暖まり、湯冷めもしにくい。もちろん交互浴すれば、さらに効果があがる。
奥にある半露天風呂は「解放式露天風呂」と名付けられている。
窓を開けると、すぐ脇を流れる渓流を一望できる。私は新緑がすきだけど、紅葉もすごそう。
少し覗けば、おしどり隠しの滝。
でも、窓を開けたら、上がる時に閉めるように注意書きがある。虫や小動物が侵入するからって。夜は特に蛾が張り付いてるし、開ける勇気なし。
しかも、夜もこのあってないような、いやないと困るのだけど、この心許ない灯りだけしかないので、極力リスクを避けて入浴したい。ので、窓は閉めたまま。
黄土色に見えるお湯がたっぷり。縁から溢れ出てる。
溢れるお湯で足元が暖かい。頑張って排湯してる排湯口。
絶えず湯がかけ流されている端っこの部分の側面は、
茶褐色の鱗のような析出物がびっしり。
角の方に湯の花が溜まっていて、足を踏み入れると、もわっと舞い上がる。オレンジ色に見えるけど、透明感がある。
湯口から注がれているのは、加温循環してる45.5度のお湯。段差の側面からは冷たい源泉も投入されていて、湯船の温度は夕方は36.5度と夏に超気持ちいいぬる湯。夜はもう少し暖かく、38度超えに感じた。
翌朝の湯温は38度ちょいで夕方より暖かかった。細やかに源泉の調整をされてるみたい。
加温のために循環してるそうだけど、源泉も投入されていて、ざばざばかけ流し。塩素消毒もなく、つまりは加温かけ流しなのでは?というほどの湯使い。ぬる湯加減が気持ちよくて、ここで長湯。
鉄の匂いはほんとにわずか。軋みはなく、じっとり肌に馴染むような肌触り。保湿成分のメタケイ酸を140mgも含む。皮膚の弱いところがちりりとするけど、弱酸性で殺菌力もある。
明治温泉の名前の由来は“明らかに治る湯”。
奥蓼科温泉郷 山の宿 明治温泉
★★★
温泉法第2条に規定する温泉(メタケイ酸、メタホウ酸、遊離二酸化炭素)
23.6度
pH 3.6
75.1ℓ/分(自噴)
男女各 内風呂2(加温1源泉1)半露天風呂1(加温)
加水加温循環消毒なし ※加温湯船は加温循環あり
2022.8.13 宿泊
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