天城山に囲まれた豊かな自然が残る吉奈川沿いの山里、吉奈温泉は伊豆最古の温泉と言われている古湯で、発見は奈良時代724年に善名寺を建立した行基。開湯1300年余り。
戦国時代には今川義元一族が子孫繁栄のため、子宝の湯として通ってたとか。
東京から新幹線で50分の三島駅から、伊豆箱根鉄道で40分弱の修善寺駅。そこからはタクシーで15分ほど。
吉奈川沿いにさか屋と東府やリゾートの2軒が向かい合うように建っている。
御宿さか屋の玄関脇にある源泉は、第一源泉 大湯と記されてる。吉奈温泉には大湯、花沢、煤垣の3本の源泉があり合わせて毎分425ℓの湧出量がある。
昔は各旅館が源泉を所有していたけど、現在は3本の源泉を吉奈温泉事業共同組合が管理している。
それぞれ違う場所で湧出する3つの源泉から旧共同湯と御宿さか屋を中心に円を描くように配湯管を廻らし、湯温の異なる源泉を混合して温度調整を図るという全国でも珍しい方法らしい。
創業500余年の御宿さか屋は、家康の側室お万の方が、湯治の際に造り酒屋であった「さか屋」を寄り処とし、ここで後の紀伊家と水戸家の初代を授かったという歴史ある宿。
玄関ロビーから部屋や温泉に行くには吉奈川の上にかかる城下橋を渡って行く。
イラストにあるように幾つかの場所に6つの湯船が点在していて分かりづらい。そしてそれを誰も説明してくれないので、とりあえず探検がてら貸切露天風呂を探しに行くことに。
養気楼の5階端っこに見つけた。5階まで行くと張り紙がしてあるので、辿り着ける。
辿り着けたけど、掃除の方が廊下の真ん中を歩いてきて、もちろん挨拶もなくこちらが避けるという、なんだかカオスな道中。
手前にあるのが、はなの湯。
空いていれば、中から鍵をかけて入る方式。空いてるかどうかはスリッパで判別。
スリッパを脱いで入ったのだけど、ここの板場もスリッパで歩きたい感じ。
足を踏み入れたこの時点で、右上にあった年季の入った蜘蛛の巣に頭が当たって、心が折れ気味。
自然に囲まれてるから虫は仕方ない。
檜の湯船。洗い場はないので、到着後最初の入浴は避けるようにと注意書きがあった。もちろん入りません。
湯温がなんと45度近くある。どうやって入るのかしら。
いそいそと奥にある、もう1つの酒樽の湯へ。
元は造り酒屋だった宿なので、酒樽をモチーフにした露天風呂。
あ、なんか雰囲気いい。
脱衣にはこの安定感のないざるが一つ。
屋根が全くないので開放感があり、緑の樹々が間近。夜中じゅういつでも入れるから、星も綺麗に見えそう。
でもこちらも45度オーバー。湯温計壊れてるのかと疑うほど熱い。前の人が出て行ってすぐに測ったのだけど、よくこれで入れてたなぁ。
酒樽の湯の下に、夏季限定というプールが見える。
さて、到着後最初の入浴は避けるようにと注意書きがある貸切露天風呂だけど、では最初の入浴はどこで?
大浴場は分かりにくいんだけど、3ヶ所ある。男女入れ替え制で、23時半から24時半までが入れ替えのため入れない。朝は10時まで一晩中入ることができる。
まず、4階にあるお万さん風呂という大浴場。オリオン座風呂という露天風呂もここにある。
お万さんは徳川家康の側室。子宝祈願で滞在し2児を授かったことから、吉奈温泉が全国的に有名になり、江戸時代には24軒もの宿が並んでいたそう。今は2軒。
広い浴室。手前の丸い部分は意味不明。酒樽に関係あるのかな。お湯の行き来はない。
檜と伊豆石の大浴場と書いてあるけど
湯船は鮮やかな青いタイル。
床材が伊豆石なのね。味のある石。
伊豆石の上を湯がかけ流されていく。
檜は湯船の縁に。
全面がガラス張りで、緑の樹々が鮮やか。
湯船は二つあり、真ん中に湯口のようなところがある。
49度くらいのあっついお湯がここから出てきてる。さか屋のお風呂はすべて源泉かけ流しで、加温や加水はもちろん、塩素消毒もない。
湯船の湯温は手前が42.5度くらいで、奥の湯船が42度ちょい。
古くから続いている温泉は、奇跡的に適温で湧いてたから調節しなくてよくて、残り続けてるイメージがある。だからぬる湯が多い。
吉奈温泉もそうだったらしいのだけど、後から65.5度の高温泉を得て3本の源泉の混合泉にしてるので熱い。
“3本の源泉を注入量により調整しているから、加温加水をせず成分も失わない温泉の提供を可能にした”ってHPに記載されてたけど、熱すぎる。
湯温だけ測りにきてみたら熱いし、時間が合わずに結局この大浴場には入らず。
というのも、大浴場の貸切というのがあったみたいで、説明など一切されてないのだけど。こちらの大浴場は20時半から23時半までだけが女性時間だったらしい。つまり本来の時間、15時から20時半までが利用できない。
入り口に貸切の木札があり、そこに部屋番号と時間が書いてある付箋が貼ってある。私が見たのは17時から17時半までという付箋。なので、その時間以外は自由なのかと解釈し、入って湯温だけ測った。
大浴場貸切事件は置いといて、右奥の出入り口から露天風呂へ。
オリオン座風呂という露天風呂。
内湯と同じ青いタイルの湯底。半分は屋根があるので、雨でも大丈夫。
42度ちょいの湯温。25代目館主が湯守として毎日換水、管理してるそう。内湯もう少しぬるくしたらいいのに。
さて、貸切露天風呂は洗い場がないので、到着後最初の入浴は避けなければいけません。大浴場は、説明なくて分かりませんでしたが、どうやら貸切で使えない。
えー。せっかく温泉きたのに、夕食前に温泉入れない、てか、いつになったら入れるのかも分からないって、カオスじゃね。
さか屋の客室は5タイプあり、全て内風呂付きの和室。3タイプは露天風呂付き。あ、部屋で入れってこと。
泊まった遠州流庭園に建つ昭和28年築の館山荘は、露天風呂はないけど総檜の内風呂があるタイプ。
大女将にチェックインの時に「うちが1番大切にしてる部屋なのよ」と言われた。
1番大切ってどういう大切か分からないけど、窓からの眺めがコレってどうにかしといた方がいいような気がします。
内風呂は総檜。着いた時にはお湯は溜まってなくて、自分で入れる。
めちゃんこ湯量が少なくて、溜まるのにすんごい時間がかかる。
タイマーが置いてあるのは、きっと時間がかかり過ぎてみんな忘れちゃうんではないかと。
そして謎にサニタリーバッグ‥。こわい。
そしてシャンプーや石鹸などはない。
ここで、とりあえずシャワーだけ浴びて貸切露天風呂へ向かうか(それって向こうでかけ湯するのと違いある?)、お湯が溜まるのをしばらく待って入るかの2択。待ったとしても石鹸とかはない。
翌朝分かったことだけど、2階の大浴場は21時から、他の大浴場は20時半からしか使えなかった。
この謎の大浴場貸切事件、とにかく何の説明もない。
部屋に案内してくれたおじいさんが、貸切の木札を持っていて、木札に『3F 601 6:00〜6:30』と付箋が貼ってあった。で、特に部屋のお風呂の説明もなく、貸切の説明もなく出て行く時「これ3階にかけとくから」と一言。
いやいや、ちょっと待って。何それ、3階って何?「3階にある大浴場をその時間貸切ってこと?」と聞くと「そう」と一言。
で、もしかしたら、他の人たちもみんな大浴場を貸切してて、大浴場使えないの⁈と事態が少し見えたのです。
部屋の内風呂は窓が大きく開閉できて、目の前には庭の緑。
温泉は熱いのが出てくるので、冷ますか水で埋めるしかない。夕飯までにとりあえず入りたい旦那さんは、水を入れたみたい。私は湯船の縁と窓の間に、でっかいゴキブリを見かけて凍りつき、心が完全に折れたのでここには入らなかった。シャンプーとかないし。ゴキブリは秘密。私よりも苦手なので、知らない方がいい。
では、気を確かに持って、3ヶ所に4つある大浴場のうち、2階にある白藤の湯という露天風呂へ。
21時から23時半まで男湯で、夜中から朝10時までが女湯だったところ。
露天風呂だけど屋根あり。つげの木の湯船。湯底も木で、気持ちよさそう。1番好みの湯船だ。入ればよかったとも思うけど、自然に囲まれた露天風呂の虫が苦手なので、折れてる心を立ち直らせることできなくて、足を踏み入れなかった。
樹齢200年の白藤が頭上に見事な白雲を作るそう。それは屋根の向こう側にあるのかしら。
最後の大浴場は3階にある太郎さん風呂。
50年に渡り岡本太郎の常宿だったので、デザイン設計してくれたとか。
20時半から23時半まで男湯で、夜中から朝10時までが女湯だったところ。
そして、3階6:00〜6:30という謎の付箋はここのこと。6時半から部屋でご飯なんですけどね‥。
入って左手に棚があり脱衣籠が4つくらい、右手を進んだところに浴室入口と洗面スペースがある。
脱衣籠が汚くて、コロナで消毒徹底の時代に、どんだけ掃除に甘いんだろう‥。古いからとか関係ない。清潔感がない。そういえば、探検中に3人の掃除の人っぽい方に会ったけど、誰も挨拶しない。我が物顔で廊下の真ん中歩いてたよな。
籠は使えず、洗面スペースで着替える。でも流しの周りには蟻が歩いてる。
太郎さん風呂。秘湯ロマンで見たやつ。湯船のフォルムは女性が座ったお尻の跡なんだって。
湯船は2つで、両方とも中は水色のタイル。
シャワーは二面に5つ。ヘッドの下辺りからホースがかなり汚くて、持つのが嫌だった。秘湯とかでシャワーないところもあるけど、有る無しではなく清潔かどうかの話だから、比較に及ばない。
この椅子も岡本太郎が作った、世界一座りづらい椅子だったっけな。流石なデザイン。絶対座らんわ。
こちらの湯船に湯口があるので、こちらが熱めで下の湯船がぬるめかと思うのは甘くて。
湯口からの湯量は少ないので、誰かが湯船に入らなければ大して向こうに流れていかない。下のは、湯船の中から湯が投入されてるみたい。
こちらの湯温は42度前後。
下の湯船は43.5度くらいとかなりの熱さ。
さんざん子宝の湯ってアピールしてるけど、ぬる湯が女性の身体を暖めるのにちょうどいいからのはず。ゆっくり長めに入り温浴効果を高めて自律神経を整えるのでは?熱すぎじゃね。こんなに熱くするなら、子宝の湯って言わなきゃいい。
湯船の縁が可愛いタイル。
無色透明無臭だけど、ほんの少し土の匂いのするアルカリ泉。
ぬるぬるってほどじゃないけど、なめらかな湯感触。この湯船しか入ってないけど、どぼんと入ると、大きめの泡が肌に付く。
折れてた心がちょっとだけ癒される。
湯船から見る窓が汚くて、秘湯ロマンのロケの時はもっと綺麗に掃除してたのかなぁと、ぼんやり思った。
古いから仕方ないって考えなのかもしれないけど、もっと古くてもぴっかぴかの宿たくさんある。
あと、右奥のドアが半開きで立入禁止になってるのも、もうちょっとどうにかした方がいいよね。防犯もだけど、虫も入るし。
消毒ありの温泉でさえついつい味見してしまうのだけど、宿の中歩き周り、いくつもの浴室見た上でこの竹筒の中のホース見たら、どうしても舐めてみる気になれなかった。循環、消毒なしのかけ流しなのに!
何度も心が折れまくって、目の前の東府やリゾートだったかぁと悔しくて、なんでこっちにしなかったんだっけと思って再度調べてみた。
見れば見るほど羨ましかったけど、大浴場が加温あり加水ありでかけ流しじゃないみたい。唯一、和室に付いてる半露天風呂だけがかけ流しっぽい。あぁ、それならさか屋を選ぶわな、と納得。
でも、温泉にこだわってるさか屋だけど、どこにも温泉分析書が掲示されてない。白藤の湯という露天風呂だけ脱衣所を見なかったので、もしかしたらそこには貼ってあったかもしれないけど。
吉奈温泉 御宿さか屋
★★★
アルカリ性単純温泉
45.3度 47.0度 65.5度
pH 7.6
合計425ℓ/分
内湯2 露天風呂2 貸切露天風呂2
加温加水循環消毒なし
コメント