1300年前の奈良時代の開湯とされ、鶴による発見伝説のあるいわき湯本温泉。古来の地名は佐波古で、その後“三箱の御湯”と呼ばれていた温泉地。
3つある共同浴場のうち1つは、さはこの湯。
平安時代には湯本という地名が用いられ、道後温泉、有馬温泉と共に「日本三古泉」として名が知られたそう。それは延喜式神名帳の記述に基づくもので、よく目にする所謂「日本三古湯」は、日本書紀や風土記に基づく道後温泉、有馬温泉、白浜温泉。
創業300有余年。 江戸末期には諸大名の宿場の本陣だった松柏館は、湯本駅から歩いて5分ほどの全22室の宿。古滝屋と並ぶ老舗旅館。
そういえば数年前に古滝屋に日帰り入浴したことがあるのを忘れてた。
男性用の浴衣が老舗旅館っぽくていい。かわいいな。その宿だけのデザインってほんと素敵。
大浴場は4階にあり、朝の9時まで一晩中入ることができる。男女入れ替えはなし。
脱衣籠は間引き利用、洗面台は仕切りの向こうに1つ、手前に2つ。それぞれドライヤーがあり、化粧水なども置いてある。
男女とも内風呂のみ。潔くていい。
奥にL字型の湯船、手前のL字型が洗い場。謎に観葉植物。個人的には底から土がしみ出たりしてるのは、衛生的に好ましくない。
窓も一部開いてるみたいだし、高い天井に天窓があり、どこからともなく外の空気が入ってきてる。
勝手に東北の硫黄泉って思って来ると、拍子抜けする湯の色。
ほぼ無色透明だけど、少し緑がかった若草色のようにも見える。夕方の暗い時間は、貝汁みたいな薄濁りに見えた。
加温も加水もないかけ流し。利用者が少ない深夜に塩素を投入し消毒はあり。
洗い場側に滔々と溢れ出ていて、足元が暖かくて気持ちいいけど、滑りやすいので気をつけて歩く。シャワーは壁際に7つ。
湯船の端の壁に、打たせ湯か湯口かあったのかな、という竹。周りの壁も垣根みたいに竹。
湯口からは52.5度の源泉。地下50mから汲み上げる毎分5tもの湧出量を誇る源泉の温度は58度。湯船は42度。なんとか気持ちよく入れたけど、翌朝は43度越えの激熱だった。
当たり前に昔は自然湧出だったけど、明治時代の石炭採掘で泉脈が破壊され、大正8年に地表への湧出が止まってしまったのだそう。炭鉱側との協議により温泉が復活したのはなんと昭和17年のこと。その間の旅館ってどうなってたんだろう。
pH 8.0の含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉。硫黄の匂いが立ち込めるというのではなく、手ですくって嗅いでも少し樟脳のような香りがあるだけ。
配湯のパイプから漏れた源泉で、1年間で出来た析出物が展示してある。
ねっとりじっとりした肌触りで、硫黄泉っていうより塩化物泉って感じ。
多くの部屋のお風呂に温泉が供給されてる。これはすごい。
普通の小さめのお風呂なのでがっかりはするけど、シャワーも付いててカランからは源泉が出る。
蛇口を捻ると、お風呂から匂いが飛び出して部屋まで硫黄が香る。大浴場と全然違うものすごいたまご臭。
湯口の源泉は完全に熱くなるまで少し時間がかかる。しばらくして54.5度に。勢いよく湯を出して溜めたら湯船は49度。夕食後に40.5度と超好みの温度になったところで堪能。
黒い湯の花がちらほら。触ると溶けるやつ。時間が経って参加してほんのり若草色に。
じっとり肌触りの前にふわつる感がある。顔を蛇口の源泉で直接洗うとつるつるで気持ちよくて、やめられない。ほんのり塩味の香ばしい硫黄泉。
部屋風呂は狭いけど気持ち良かった。匂いも温度も。ただ、ドアの下部が横格子みたいになっていて、シャワーの湯がそこから外に出る。あと、湯船から湯が溢れると、隙間からドアの向こうに流れ出ていくので、たっぷり溜めて入りたいけどほどほどにして溢れさせないように気をつけないといけない。
いわき湯本温泉 松柏館
★★★
含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
58.3度
pH 8.0
5270ℓ/分
内風呂(男1女1)
加温加水循環なし 消毒あり
2023.1 宿泊
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