静岡駅から北へ向かうこと、ひたすら70分。初めて足を踏み入れた奥静の地。安倍川に沿って北へ北へ。1時間ちょっとって、それほど長く遠い道のりではないのに、なんだかすごく遠い。
新幹線の静岡駅から45kmしか離れてないのに、ここは安倍川の最上流域で、北は安倍峠を越えて山梨県に至る南アルプスの麓。
静岡の奥座敷、安倍川源流の標高約1,000mに位置する梅ヶ島温泉。1700年も前の古墳時代の応神天皇(3〜4世紀)にその存在が知られていたという湯治場で、戦国時代には武田信玄の隠し湯のひとつとされ、江戸時代には徳川家康をはじめとする江戸幕府に大事にされ、万病に効くと高く評価されてきた歴史がある。
温泉旅館が8軒、温泉民宿が2軒、温泉浴場を併設した飲食店が1軒の静かな温泉街。こんな安倍奥の秘境に温泉街が残ってるってすごい。
国民保養温泉地に指定されている梅ヶ島温泉郷には、4つの温泉地があり、それぞれ歴史や源泉が異なる。
北から梅ヶ島温泉、梅ヶ島新田温泉、梅ヶ島コンヤ温泉、梅ヶ島金山温泉。
ちょうどイベント期間みたいで、くじ引きができ、ハズレだけど梅ヶ島温泉郷の入浴剤セットがもらえた。
梅ヶ島温泉で唯一の源泉かけ流しの宿、安倍川沿いに佇む、清香旅館。
宿の川向こう、赤い橋を渡った辺りの山一帯に源泉があり、12本が管理されていて、湧出量は毎分165ℓ。
2階に大浴場がある。といっても、少し階段を降りたところなので、半2階みたいな位置なのかな。
手前が女湯。男女の入れ替えはなし。利用時間は夜10時までと短く、朝は6時から。それでも、チェックインが13時からという有り難い措置があるので、できるだけ早く到着したいとこ。
脱衣所には9つの棚。洗面台がひとつ。ここにドライヤーなどはなく、隣にあるトイレ兼パウダールームに置いてある。化粧水などのアメニティもこちらに。
脱衣所に戻って、いざ、浴室へ。大浴場といっても、男女とも内風呂のみで、
こじんまりした浴室に湯船が2つ。こじんまりだけど、ゆったりした作りで、とても清潔。
小さな湯船が源泉湯船。足を伸ばして2人サイズ。でも3人でも可能。奥の少し大きめの方が加温湯船。
左手の壁際にシャワーが2つ。シャンプーなどもある。
大きい湯船の縁から洗い場側に、かなりの湯量が溢れ出てる。
湯口の反対側からも。
ペンギンみたいな湯口から、どばどばと激しい音を立てながら、40.5度弱の加温源泉が投入されていて、湯船はちょうど40度。
加温湯船には、源泉湯船から溢れた源泉も流れ込むしくみ。
加温といえど、一般的にはぬるめ。こちらを40度におさえてるところがすごい。
とにかく楽しみにしていたのがこちらの源泉湯船。源泉そのままのかけ流し。
ざぶんと入ると、大きな湯船側だけじゃなく、縁からも湯が溢れる。縁はうっすら白く析出してる。硫黄かな。
窓のサッシの部分も硫黄泉っぽい析出物。こんなに無色透明な源泉だけど、離れたところまでこんなふうに。空気中にもたくさん温泉成分が漂ってるってことか。
対岸の源泉は38.6度。宿に引き湯するとさらに温度が下がるので、この日の湯口は37.5度。
湯船は36度前後と真夏の適温。夕方は36度ちょいで、翌朝はぎりぎり36度割れ。お布団かけて寝るくらい涼しかったので、夜の間に湯温も少し下がるのかな。とにかく絶妙なぬる湯。
ほぼ体温と同じで、お湯と身体の境目が分からなくなる。じっと目を閉じてると、掌や身体の触れ合ってる部分が、じゅわっと暖かくなるのが分かる。
ほどよい硫黄の香り、というか、美味しそうなゆで卵の匂いがし、甘みのある香ばしい硫黄泉。
泉質の単純硫黄泉は、余分な皮脂を取り除く美肌の湯。メラニンも落としてくれるので美白効果も。
pH 9.4のアルカリ性は、皮膚の不要な角質を溶かしてくれるぬるぬるの美肌の湯。
ぬるりとしたぬるぬるのお湯で、ふわふわのぬるつべな肌触り。泡付きはないのにふわふわ。湯上がりはもっちりしっとり肌に。
誰も来ないので、出るのがもったいなくて、八甲田温泉のラムネの湯を思い出す。
静かに注がれる源泉のそばでじっとしてると、加温源泉の激しいどばどばが目に入り、あっちのお湯もめっちゃ新鮮に見えてくる。
夜、部屋にいると川の流れの音がすごくて、それと同じ激しい渓流が間近にあるみたいなどばどば。でも、自分のいるところは、緩やかな流れでそれがまた心地いい。
虻の心配もないし清潔だし、内風呂最高。
白のような灰色っぽい塊や紐状の湯の花がふわふわ舞ってる。手にとると半透明なとろりとしたゼリー状で、ぐにゅっと触るうちに溶けていく。
翌朝は昨日より湯の花が多く、ふぁさっと身体に触れるのが分かるほど。
全6室。温泉好きな人ばかり重なるときは、やっぱりすごくぬる湯争奪みたいになるみたいだけど、幸運なことにほとんど独泉。そして、ぬる湯に入る人全然いなかった。
一度、後から入ってきた人がいたのでぬる湯に入るよねと思い、気を利かせて脱衣所にあがると、ぬる湯に入った形跡なくすぐに後を追うように出てくるので、それならばとぬる湯へ再度戻ってまた独泉。誰も入ってないなんて、もったいなくて。
こんなにいい温泉を今まで知らなかったのかと驚くほど。日本の温泉底知れず。アルカリの硫黄泉でぬる湯のかけ流し、まだ知らないところあるのかな。でもこれ以上どうやって見つけたらいいんだろう‥。
梅ヶ島温泉 清香旅館
★★★★★
単純硫黄温泉
38.6度
pH 9.4
男女別内風呂(源泉1 加温1)
加温加水循環消毒なし ※加温湯船は加温循環あり
2022.8.6 宿泊
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