飛鳥時代に開湯された歴史の長い田沢温泉。湯治に訪れた山姥が、大江山の鬼退治で活躍する坂田金時を産んだという伝説があり、“子宝の湯”として有名な温泉。
上田駅から西へ30分ほど青木村の田沢温泉。近くの温泉地との地理関係は、10分ほど南下したところに沓掛温泉 満山荘(長野)-温泉手帖♨︎。さらに10km南下すると鹿教湯温泉 つるや旅館(長野)-温泉手帖♨︎。鹿教湯温泉は上田市だけど。
明治元年創業、島崎藤村ゆかりの宿ますや旅館。元は江戸時代以前から続く庄屋で、白壁の土蔵と明治時代に建てられた高楼の4棟の木造建築は、国の登録有形文化財。新館でも大正元年築。
島崎藤村も逗留し、随筆「千曲川のスケッチ」に“升屋というは眺望の好い温泉宿だ。湯川の流れる音が聞える楼上で‥”とますや旅館に関する記述がある。
本館から繋がるこの廊下の先に大浴場がある。
古い館内図を見つけた。大浴場は新館の2階みたい。
雰囲気のある廊下を歩いてく。
これがきっと図の中の宴会場沿いの廊下。
で、新館最奥の大浴場に到着。新館といっても大正元年築なので、110年以上前の建物。
手前が男湯、奥が女湯。入れ替えはなく、利用時間は夜の22時までと少し短めで残念。朝は日の出から10時まで。
脱衣所はこの右手に棚があり、脱衣籠がいくつも置いてある。
洗面台には洗顔フォームやクリームなど乱雑に大量に置いてあるけど、あり過ぎてこれってものがなく、結局自分の手持ちのものを使う。
奥が全面ガラス張りの明るい浴室。内風呂と露天風呂がひとつずつ。洗い場にはシャワーが5つ。こちらもトリートメントが多種並んでた。
普段から桶も椅子も使わないので、どうでもいいのだけど。夕方も朝もこんな状況だったので、これが定置で、使ったらこんなふうに戻すルールなのかも。
毎日完全換水し清掃しているので、塩素消毒もなしの源泉かけ流し。
湯口は飲泉もできる。湯温は37.5度。
源泉は、田沢温泉2号泉と3号泉の混合泉で、源泉温度は40度。共有源泉を50m引き湯してる。平成13年時点では、毎分115ℓの湯量。
アルカリ性単純硫黄泉。硫黄型の硫黄泉なので、ほんのりグリーンがかってるような気もする無色透明。心地いい硫化水素臭。
引き湯で湯温も下がるから、湯船は36.5度ちょっと。翌朝はもう少しぬるかった。10月から5月までは加温するのだそう。
加温なしのぬる湯が最高。しかもpH 9.6のアルカリ性でつるつるの肌触り。
露天風呂もあり、こちらも湯船から溢れるかけ流し。
排湯口が湯の花で白くなってる。
湯口は2つあり湯温が微妙に違ってた。この長い竹は36.5度。これはおそらく内風呂経由。
奥の石の間のは37.5度弱。
36度ほどのぬる湯で真夏に最高。朝はさらにぬるいけど、ぬる湯好きにはたまらないのでは。
大浴場も大満足だけど、家族風呂が良かった。
空いていたら自由に入れる家族風呂。時間は短くて夜21時まで。翌朝はぬるいですと張り紙に書いてある。ぬるくてよければ入っていいとのこと。
帳場横の引き戸を開け、階下へ。昔からの一番古い1号源泉だと説明された家族風呂。2つあり、入り口の札を“お入り戴けます”から
“入浴中です”に裏返し、中から鍵をかけて利用する。
右側が一番ぬるい湯船で、“ぬる湯ファンの方、または水風呂感覚でお入りください”と注意書きがある。よっぽどぬるいのかな。
脱衣所の突き当たりの棚から、元は大浴場だったのかなとも思える。
タイル張りのレトロな浴室。二面が窓なので、閉まっていても明るさがある。シャワーはなく、カランがあり、シャンプーなども置いてある。
小さめの湯船で、2人で入れるけど、1人で入りたいサイズ。
水色のタイルが可愛い。縁は深緑とピンクの二層のタイル。なんでお洒落な。
縁から湯が溢れていくピンクのタイルを見て声をあげそうになる。
きゃー。結晶みたいに湯の花が溜まってる。
湯船に足を踏み入れるとぬるりと滑る。ぬるぬるの湯底。
そして舞い上がる湯の花。
大きいものも。透明なゼラチンみたいな湯の花が大量に、底や縁だけでなく側面にも付いていて、どこに当たってもぬるぬると滑る。
こちらのパイプから注がれているのは田沢温泉1号泉で、源泉温度は34.6度。湯口で36.5度ちょいだったので、もしかしたら混合泉が少し混ざってるのかもしれない。
この一番ぬるい湯船は36度ちょっとだった。夜は少し寒く感じるかなくらいのぬる湯加減。日中はちょうどいい。
湯の花が大量なのは、湯量が絞ってあり、勢いよく湯が外に溢れ出ないからなのかも。
というのも、もうひとつの左側の家族風呂はこんなに湯の花なかった。
この勢いで湯が注がれてる。‥順序よく脱衣所から。
2番目にぬるい湯船という隣の家族風呂。こちらの脱衣所の方が広い。今思えば、かつては、隣り合う男湯と女湯だったのかな。
浴室も広々。湯船も大きく、2人でもゆったり余裕なサイズ。あ、2人というより、大浴場でもあるサイズ。深めなのも心地よくて、身体全部が湯と一体化してる感覚が強い。
周りに強く漂うわけじゃないけど、しっかり香る硫黄臭。香ばしくて美味しいいくらでも飲める方の硫黄泉。
ざばざばの湯口は37度で、湯船は36.5度。お湯と自分の境目が曖昧になるぬる湯。ざばざばどぽどぽ激しめに投入される湯音が響く、惜しみないかけ流し。
じっとりとさらさらの間みたいな肌触り。肌の古い角質を溶かしてくれるアルカリ泉で、メラニンの生成を抑制してくれる硫黄泉の美肌の湯。そんなことどうでもよくなるような極楽ぬる湯。
田沢温泉 ますや旅館
★★★★★
[田沢温泉1号泉]
アルカリ性単純硫黄温泉
34.6度
[田沢温泉2号泉と3号泉の混合泉]
アルカリ性単純硫黄温泉
40.0度
pH 9.4
545ℓ/分(掘削自噴)
加温加水循環消毒なし
内風呂(男1 女1)露天風呂(男1 女1)家族風呂2
2024.8 宿泊
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