奥津温泉 東和楼(岡山)

美作三湯の一つ奥津温泉は(他 湯原温泉と湯郷温泉)、岡山三大河川の吉井川流域、鏡野町に湧く温泉。

奥津橋のたもとで行われている足踏み洗濯は、かつて熊や狼を見張りながら川に湧き出る湯で洗濯していた名残。3月から12月中旬の日曜朝8時半から15分間、温泉街にや〜れやれそれ♪と音楽が流れ、実演が始まる。3回目の来訪にして初めて見られた。

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奥津温泉は岡山空港からは車で1時間半。県北の主要都市津山市からだと車で北へ40分ほど。津山城跡の鶴山公園で桜を見てから奥津へ向かう。

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江戸時代、津山藩主の森忠政がこの温泉を愛し、幾度となく湯治に訪れ、藩主の別荘も作られた温泉地。
忠政が浴室に鍵をかけて一般の入浴を禁じた「鍵湯」が、現在の奥津温泉 奥津荘(岡山) – 温泉手帖♨︎に残る。

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温泉旅館が建ち始めたのは大正時代からで、昭和に入ると与謝野晶子夫妻や版画家の棟方志功など多くの文化人が訪れている。奥津荘に棟方志功ゆかりの品があった。

今回泊まった宿は昭和3年創業の東和楼。創業時に建てられた3階建の木造建築は奥津最古。食事を頂いた大広間は屋久杉など高級な材で作られている。8〜10室程の和室の客室がある。

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温泉教授の松田忠徳が著書『日本百名湯』で奥津温泉の中で宿を選ぶなら東和楼、と記しているにも関わらず、過去2度とも奥津荘に宿泊。初めての足元湧出泉で温泉にどっぷりハマる原因にもなった奥津温泉。

実はこの東和楼も足元湧出の湯船がある。ただ、自噴の足元湧出泉は男湯だけ。相談すれば、鍵をかけて男湯に入っていいとのネット情報に、勝手に安心して訪れた。

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鶴山公園で満開の桜を見て、たっぷり城下町を散歩し、奥津湖を通過する頃には18時過ぎ。

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遅くに宿に到着した私たちを、女将が優しく迎えてくれた。

夕飯は好きな時間からでいいから、他のお客さんがご飯食べている間に、足元湧出の男湯に入っておいでと。ひゃっほう。

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2階の客室から階段を降りて

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おそらく1階部分であろう踊り場で、岩風呂へ続く道の電気を付ける。『スゥッチ』の文字と絵、味がある。

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そこから地下へ降りて

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白いトンネルを抜けて浴室へ向かう。突き当たりを左に曲がり、行き止まった先が

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おぉ、可愛い入り口。この絶妙な角度がいい。上の窓もレトロお洒落。

さぁ、男湯と女湯の間にあるスイッチで電気を付ける。

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脱衣所があって、ドアの向こうが天然岩風呂の浴室。窓から覗くと

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こんな感じ。ここからでも水面が盛り上がってぶくぶくなってるのが分かる。

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すごい湯量で、掃除のために湯を抜くと、温水が高く吹き出して管理が大変だそう。

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ドアを開けて入ると石段が一段。そこを降りるともう溢れ出ているお湯で足が暖かい。気持ちいい。

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純粋な湧出量は測定できないけど、こぼれた湯の注湯量を調べたら毎分105ℓだったそう。

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湯船の底にパイプがひとつ挿してあって、そこからすごい勢いでお湯が出てる。真賀温泉みたいなタイプ。

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40m掘削した湯壺底のパイプから自噴してる。右奥のいくつもの石が埋め込まれているエリアの手前の方に、グレーのパイプ。

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そこから湧き出る湯でこの部分の水面が盛り上がってる。
もとは河原で川底より低いところの、川床と繋がる花崗岩の割れ目から湧いているそう。無味無臭、無色透明だけどラムネ色に見える。

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湯温は41.7度前後。雪解け水の影響で、一年のうちで今が一番湯温が低いそう。そうなんだ、ラッキー。これ以上高いといやだ。

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身体が溶けるような気持ち良さ。

何度も何度もため息が出て、「あぁ気持ちいー」と何度も呟いてしまう。

単純なアルカリ泉なのに、なんだこれは。松田教授これですか。めちゃくちゃ気持ちいい。

すぐに身体に泡が付き、その泡が付いた肌をさするとぬるつるの肌触り。ベルベットのようとよく例えるけど、もっとつるんとしてる。そう、じゅん菜のような。はぁ、気持ちいい。

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湯船から溢れて洗い場から流れてきた湯がここから排出されてる。

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湯船の中のお湯も、この左側の穴から同じ排出口に流れ出ているみたい。

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洗い場は狭いし、この流しはお湯が出るのかしら?湯船からすくったけど、よほど気をつけないと、湯船に掛け湯が入ってしまう。

でもこの洗い場たまらなく素敵な佇まい。

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見れば見るほど絵画のようで、可愛らしく思えてくる。なんちゅー作りだ。

体は階段途中の家族湯でちゃんと洗えるので大丈夫。家族湯で洗ってからこの岩風呂に降りてくるのがベスト。

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湯船の中の階段は左手前に2段。深いところで、立つとおへその上までの深さ。

座って浸かるなら、この階段の下の段に2人。

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それからこの奥の岩が特等席。この特等席に1人座り、3人が限界かな。他に真ん中に立ち湯するなら、あと3人立って入れるくらいの広さ。狭いと聞いていたけど、それほど狭くもない。

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この壁の向こう側が女湯。上部の仕切りは窓でレトロ感たっぷり。

脱衣所から見た入り口の窓はこんな感じ。

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さて、女湯の偵察を、とドアを開けると、脱衣所は掃除道具で物置化してる。振り返り入口の扉を見てみると、立ち入り禁止のシール。

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気づかなかった!この後夕食時に旦那さんが女将の息子さんから聞いた話をウキウキで話してくれた。

なんと今は限定2組の営業だから、男湯か家族湯のどちらかに必ず入れるとのこと。そりゃウキウキだわ。来る途中の車の中で「お前が男湯に鍵かけて入ったら、俺たちはどうすりゃいいんだ!」と男客目線で憤っていたので。

というのも、ここからは全くウキウキの話ではないのだけど、去年の夏の倉敷の真備町を中心とした水害。あの時の災害で吉井川も氾濫、女湯の方はまだ復興できてないとのこと。なかなか業者が回って来てくれないらしい。

そういえば、あの直後に奥津荘に泊まったけど、地下にある湯船も脱衣所も水没したと聞いた。東和楼の浴室も同じように地下にある作り。

2組で一晩中好きな時に湯船を独占できる幸せと、宿の損害‥。手放しで喜べないけど、宿泊して温泉を堪能できる2組は本当に幸せ。

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階段途中にあった家族湯は、同じ源泉を上に引っ張ってる。

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洗い場も広くて、天然岩風呂を楽しむためにも必要な設備。湯温は下の岩風呂と変わらない41.7度前後。

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湯口は湯底にあり、こちらもものすごい泡付きがある。ぬるつるでつるんとする。湯上がりの肌はさらすべ。

あれ、いま気づいたけど、温泉分析書あったかな?お湯の気持ち良さとレトロ感に気を取られてすっかり忘れてた。ま、いっか。単純アルカリ泉なのになんでこんなに気持ちいいんだ!って話だし。

千原温泉 千原湯谷湯治場(島根) – 温泉手帖♨︎のような黄土色に濁ってガスがぷくぷく上がってくる足元湧出泉や、強烈な匂いの硫黄泉、泡がぷちぷち弾けるほどの二酸化炭素泉とか、これでもか!ってほどの温泉力を感じるお湯とは一線を画するアルカリ単純泉。

そんなアルカリ単純泉なのに、温泉力を感じるお湯だったのです。

ちなみにお部屋は二間を一部屋に改装した広々二間。出入り口のドアは、内側にネジ式の鍵は一応あるけど、閉めることもなく。

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外から鍵をかけるなら、南京錠。

部屋には秘湯につきもののカメムシ。旦那さんが顔周りに飛んできたカメムシに悲鳴をあげるので、5匹までは捕獲してあげた。その後、夜中に何匹かまた出たとか。

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女将さんが玄関先で手を振って「運転気をつけなさいね」とお見送りしてくれて、泣きそうになった。また必ず来よ。

 

奥津温泉 東和楼

★★★★★

アルカリ性単純泉

41.7度

pH 9.1

105ℓ/分

内湯(男1女1家族1)現在は貸切2

加水加温循環消毒なし

2019.4.6 宿泊

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