静岡県との県境、山梨県南部町の山間に位置する佐野川温泉。東京からこだまで1時間ちょっとの新富士駅まで行き、身延線の起点駅の富士駅へ移動。そこから45分の十島駅へ。
駅からは送迎車で5分ちょっとの佐野川温泉旅館。秘湯感漂う一軒宿で、真夏に行きたいぬる湯リストの一湯。ぬる湯というか、31度の冷泉。
開湯は1974年(昭和49年)。「硫黄のような匂いがする水が川に流れている」のを発見、土地を購入して宿を始めたのがきっかけだそう。硫黄泉が岩間から湧く佐野川沿いの湯治場。
2005年3月にリニューアルし、今まで混浴だった湯船を男女別にしたそう。部屋も小綺麗。
8時半から19時半まで日帰り入浴が出来て、駐車場には車がぎっしりでげっそり。日帰り料金は1時間650円、半日休憩(4時間)1200円、1日休憩が1600円。ぬる湯ゆえに長時間入浴が前提の料金表。半日休憩の人が多いみたい。
宿泊者の入浴時間は22時までで、朝は6時半から。宿泊者だけの貴重な時間をゆったり楽しも。
チェックインは13時からできる。有り難い。一息ついてまずは調査がてら。といっても2時間くらい入ってたけども。
脱衣所の入り口。スリッパが散乱してる。女湯でこれほど整ってないスリッパ久々に見たかも。客層が想像できてしまい、心配‥。
脱衣所のドアを開けた瞬間、かなり硫黄臭が匂う。わくわく。清潔な脱衣所。無料の鍵付きロッカーが並んでる。ドライヤーが2つあるだけで、アメニティーは一切ない。潔くていいな。
壁に沿った洗い場にはシャワーが6つ。固形石鹸とボディーソープとリンスインシャンプー。
内湯にはふたつの湯船。大きさはほとんど変わらない、かなり広め。源泉湯船ばかりが混むのかと思いきや、どちらにもバランスよく人が入ってた。
向かって右が加温湯船。
左が源泉湯船。
薄緑がかって見える透明のお湯。どちらも循環なしのかけ流し。
湯船の奥の縁からオーバーフローしている。
たくさんの人が湯船を出入りしている時間帯は、湯が縁より低いことも多く、そんな時は常連さんらしき人が湯の上部を手でざばぁーっと排出口に送って流してた。
まずは源泉湯船へ。こういう時、加温に入っちゃうともう源泉に行けなくなるので。
湯温は31.8度。冷たいけど、すぐに身体がぽかぽかしてきて、バリアを張ったみたいに自分の周りだけぽわぁ〜っと暖かい気持ちになる。いつまでも浸かっていられるので、体の芯から温まる。
湯口まわりはたくさんの細かい気泡で白く濁ってるように見える。ものすごい泡付きで、身体がすぐに泡だらけになる。
少し湯口から離れてお湯を観察すると、小さな白い湯の花と小さな泡がたくさん舞ってる。色はやっぱり薄緑がかって見える。
ふわふわあわあわ浴感。肌をさするとつるりとし、身体をちょっと動かすと、わしゃわしゃっと泡が込み上げてきて弾ける。pH 9.9もあるのにアルカリ泉のぬるぬる感はほとんどない。
右の加温湯船の湯温は42度。10度も高いので、最初かなり熱く感じるけど、身体の表面が冷たくなっているので、加温湯船にも長く入っていられる。
源泉に比べればかなり少ないけど、少し泡付きもある。ほんの少しだけアルカリ感があり、ふわぬる浴感。
床はぬるぬるで滑りやすい。緑の湯の花なのか藻なのかがかなり付いてる。
浴室は天井だけが木で出来ていて、結構高い。
露天風呂も内湯と同じで、源泉そのままと加温の、ふたつの湯船。
今まで混浴の大露天風呂だった湯船が、2005年から仕切られて男女別になったという、高い壁がこれか。これの向こう側が男湯の露天風呂。
奥が源泉かけ流し、手前が加温湯船。
湯船の手前側はぐるりと足場のシートが敷いてあり、源泉湯口まで行けるし、手すりのあるところ以外からも、湯船に入ることができる。
手すりの手前にあるこの穴が排湯口。
源泉かけ流しの湯船は32.3度。真夏の真昼間だからだと思うけど、内湯より暖かい。湯口の周りには常連さんと思しき十数人のおばさんお婆さんが循環してる。
湯口から離れたところにちょこんと入ってたけど、それでもしっかり泡付きあった。でも、陽に当たるのも、虫が浮いてるのも嫌なので、すぐに内湯へ退散。
湯口占領民が必ずいて、露天風呂源泉口には、何本ものペットボトルに延々と源泉を汲み続けている太ったおばさん。それを脱衣所に運び終えた後は、内湯の源泉口で微動だにせず瞑想。
あぁー。気兼ねなく源泉を味わいたい!と、朝一の宿泊者特権。
露天風呂の湯口に近づくとすんごい泡付きに驚く。内湯よりはるかにすごい。どちらも飲泉できる源泉そのものなのに、みんながこちら側のをペットボトルに入れてるのが分かった。源泉に限りなく近いんだろうな。
ごくごく飲める硫黄泉。香ばしさは少なめ。
ただ、冷たい。昨日の日中とは打って変わって、内湯よりはるかに冷たい。途中で入ってきたおばさんたちも「夜と朝は冷た過ぎだわ〜」と。でも、泡泡すごい。
露天風呂の向こう側に見えてるのが脱衣所。どちらからも丸見えだけど、窓の下部には目隠しシールの心づかい。
加温湯船は36.5度。泡付きは少し。水中昆虫、多分ゲンゴロウさんが勢いよく泳いできて、小さな虫の死骸も浮いているし無理だった。
こちらの加温源泉口にも、別の太ったおばさんが半分寝ているような状態で、身体の様々な部位を打たせ湯してた。譲る気ゼロ。
さて、夕食も済ませ、源泉を心置きなく堪能しに、19時半前に食い気味に浴室へ。脱衣所にはまだ人いたけど、独泉。昼間の人だかりが幻のように静かな浴室。源泉湯船の湯口の前で好きなだけ源泉と戯れる。極楽。
サイダーの中にいるかのようなしゅわしゅわ。あぁ、極楽。
遊離二酸化炭素が1ミリも含まれていないのにこの泡。新鮮なぬる湯ってすごい。
普通の温泉は、地下深くで源泉と一緒に溶けていた気体成分が湧出口で一瞬に気化するけど、ぬる湯の場合は気体成分を飽和した状態の湯船を作り出すことができる。
全国で三本の指に入ると誰が言っちゃうのも分かる。
飲泉できる単純硫黄泉で、糖尿病や痛風、皮膚病などに効果がある。ぬるいし、飲めるしで、長湯しても湯上がりにあまり水分を欲しないほど。汗もかかない。
pH9.9と強アルカリ性。石けんが不要と言われるほどクレンジング効果が高く、肌の油分や汚れがおちる。
また、硫黄泉も同じく肌の古い角質を軟化、溶解し、皮脂分泌を抑制するので、どちらの泉質も入浴後に保湿が必要。
それがはっきり感覚として分かるのが、顔に化粧水を塗った瞬間。肌がつるんつるん過ぎて油分を微塵も感じない。
さらに、源泉と加温湯を交互に入れば、お肌の引き締め効果もある美肌の湯。
裏の池では虹鱒を養殖してるとか。夜ごはんには美味しい鮎が出た。
朝8時半には多くの日帰り客が押し寄せてた。9時半に宿を出発する頃には、駐車場にたくさんの車。地元の方、常連さんにものすごく支持されてる温泉。
真夏に最高。ぬる湯をじっくり堪能するためにも、宿泊すべし。
佐野川温泉 佐野川温泉旅館
★★★★★
単純硫黄温泉
30.9度
pH 9.9
180.5ℓ/分
男女別内湯(源泉1加温1)露天風呂(源泉1加温1)
加水加温循環消毒なし
2019.8.3 宿泊
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