日景温泉は、世界遺産 白神山地の北東の端、青森と秋田県境の静寂な森に佇む一軒宿。明治26年の開湯以来およそ125年『日景の湯は皮膚に効く』と評されてきた秘湯。
なかなか遠いところで、最寄りの陣場駅は、新幹線だと3時間半で新青森まで行き、奥羽本線で1時間ちょっと南下してくる。それか、4時間弱かけて秋田まで行き奥羽本線で2時間‥。めっちゃ遠い。
でも飛行機なら、羽田から1時間ちょいの大館能代空港。そこから車で35分というアクセスの良さ。
元秘湯を守る会。2014年の夏に閉館後、大館市の老舗料亭 割烹きらくにより、2017年秋に復活した白神矢立 湯源郷の宿。
大浴場の他に貸切風呂が2箇所、それぞれ2つずつある。昭和初期に建てられた古くて大きくて立派な建物で、お風呂探しで迷子になる。
まず、大浴場のぬぐだまる湯っこは男女別で、内風呂と露天風呂がある。あ、名前がそれぞれ付いてるから、余計に混乱するのかも。
男女入れ替えはなく、夜は23時まで、朝は5時半から9時まで。
アメニティなどはない、シンプルな脱衣所。洗面台はあり、ドライヤーはひとつ。
秘湯に来たって感じの湯小屋。湯気でもやっとした広い浴室に白濁湯。硫黄の香りが立ち込めていて、わくわくする。
高い天井に立派な梁。
ヒバ造りの湯船は2つあり、小さい方は寝湯。
シャワーは8個か9個。
夕食時やラウンジでは結構人に出くわしたけど、大浴場はほとんど独泉だった。脱衣所で誰かとかぶることも、湯船に2人で浸かることも一度もなかった。
なんでこんないいお湯なのに、混まないのか不思議なほど。なので、シャワーの数は十分過ぎるくらい。
この内風呂のお湯が、その効能の高さから『三日一廻りの霊泉』と呼ばれてきた日景の湯。皮膚の傷や病に効く、肌にやさしく浸透する薬湯。
泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物泉。1号泉と3号泉の混合泉で、源泉の温度が38.4度なので加温してのかけ流し。43度くらいの湯が投入されている。
湯面で泡が弾けてる。注意深く観察すれば、ほんの少し肌にも泡付きが見られる。176mg、遊離二酸化炭素を含んでるからかな。
湯船の温度は41度ちょっと。朝は41度割れ。酸っぱくて苦い硫黄泉。塩気はほんの少し。
かなり濃い塩化物泉だけど、pH6.3の中性なので肌に優しい。天然の保湿成分のメタケイ酸が145mgも含まれている。硫黄は古い角質を溶かしたり、皮脂分泌を抑制するので、皮膚に効くというのも納得。
白い細かい湯の花がたくさん舞って、白く濁ってる。さらつるの肌触り。湯底は湯の花でざらりとする。
寝湯には湯口はなく、大きな湯船から縁を越えて流れ込んでくるお湯なので、ぬるめ。40度ほど。朝は全体的に低く、40度割れてた。
2つとも湯船の奥側の縁から、湯が溢れ出てどんどんかけ流されているので、
床に湯の花が溜まっていて、歩くとぬるりとして滑る。
足形が付くほど。
奥の縁からだけでなく、横の縁に開けられた穴からも排湯されている。
真っ白な湯の花や析出物。あまり塩化物泉感がない。
寝湯の深さは20cmほどで、ものすごい浅い。
入って右手に露天風呂の出入口。
内風呂と露天風呂の源泉は異なる。露天風呂の源泉は2号泉と掲示してある。部屋にあるinformationには2号泉と3号泉の混合泉だと書いてあるのだけど。
含硫黄・二酸化炭素-ナトリウム-塩化物泉。こんなところで、二酸化炭素泉に出会うとは。予期せぬ出会い。1298mgも遊離二酸化炭素を含んでる!
あの長湯温泉のラムネ温泉館で1380mg。とはいえ、いつも思うけどあれは湯温32度だからな。37.9度と適温の八甲田温泉 ぬぐだまりの里 秘湯 八甲田温泉(青森) – 温泉手帖♨︎のラムネの湯で958mgの方がよっぽどすごい。
で、この2号泉は52.8度と熱い源泉なので、残念ながら加水しての利用。
内風呂の混合泉と全く同じpH6.3の中性。
こちらの湯口から51度の源泉が出てたので、おそらく源泉かけ流し。
で、逆側から水が投入されてた。
真ん中あたりの湯温が40.5度くらい。内風呂よりもはるかにしょっぱい。塩化物イオンが1万mg超え。すんごい濃い。内風呂の3倍。
溶存物質の総量も内風呂が6955mgで、かなり濃いお湯だけど、露天風呂の源泉2号は2万超え。温泉水1kg中に20gもの温泉成分が含まれている。人間の体液の9gよりも成分が濃いと、浸透圧により細胞膜を通して体内に浸透していくらしい。
湯船の岩は白い析出物が付いていて、硫黄泉という感じ。
湯の花もいかにもな白いのがたくさん舞ってる。
雨や雪のために笠がある。
この露天風呂と同じ2号源泉なのが、貸切露天風呂のあんべいい湯っこと、うるげる湯っこ。
館内の案内板を頼りに貸切露天風呂の出入口へ。ここで外履きに履き替える。
ちょうど屋根を付ける工事中。
目の前にあるのがあんべいい湯っこ。ラウンジのボードで予約し、時間になったら直接行って木札を裏返してから入り、中から鍵をかけて利用。
しっかり室内なので、半露天風呂。
湯口からぼっこぼっこと音を立てて湯が注がれてる。
二酸化炭素を含んでるから、こんな音なのかな。51度の熱い源泉が出てる。
止めないように注意書きのある水のパイプ。
加水されていても43度と熱いので、勢いよく水を足す。ちょっと足すとあっという間に40度くらいになる。
もともとは2本の源泉があり、新たに2本の源泉を掘削。それが2号泉と4号泉で、この湯船に2号泉が使われている。
外気が1度くらいなので、屋根があっても相当冷たい。数日前の雪が残っているのを眺めながら、冷たい外気を顔に浴びて浸かる。
硫黄というより樟脳の匂いと、焦げた貝というか、焦げた塩のような匂い。
するりとした肌触りだけど、少し重曹泉も感じる。塩化物泉の塩のコーティング効果が前面に出るけど、炭酸水素イオンも1000mg超えの美肌の湯。天然の保湿成分メタケイ酸も110mg含まれてる。
じっとりし粒子も感じる湯感触。しょっぱくて、目にしみる。
消毒、洗浄作用があるメタホウ酸を113mgも含んでいるので、火傷や傷の治りが早くなる、やっぱり皮膚の湯。
湯底の端っこには砂利が溜まってる。縁にはこってりと析出物。
どうやら、木の縁みたい。
ここから湯がかけ流されていく。やばい、すご過ぎる析出物。芸術的。カルシウムイオンが1000mg超えてるからかな。
カルシウムは鎮静作用があるので、肌荒れやかゆみの軽減にも効果がある。
湯上がりの肌は硫黄泉らしい、するんするん。
隣にあるもう一つの貸切の展望露天風呂はうるげる湯っこ。右手の通路の先に。
木札を使用中にして、中へ。
こちらは大きな露天風呂。緑がかった白濁湯。
隣の貸切風呂とは同じ源泉だけど、開放感が違う。
端っこの部分は屋根付きなので、雨でもなんとか大丈夫。でも、朝露?夜中の雨?で屋根からの水滴がすごくて、脱衣籠は全滅、服を脱ぎ着してると、ぽたぽたと上から冷たい水がおちてきて、ひえっ!となる。
奥のパイプから勢いよく湯が投入されてる。50度超えの熱い源泉なので、両端から水を出してる。
湯船は42.5度前後。水を足せばすぐに周りだけはぬるくなる。
このうるげる湯っこが2号源泉に最も近い。湯口からは新鮮で透明な硫黄泉が注がれている。
湯口近くの湯を手ですくうと少し泡を含んでいるけど、湯船の中では肌に泡付きはほとんどない。熱い源泉だと泡付きは難しいか。1000mg超えの遊離二酸化炭素、残念だな。まぁ、湯に含まれていることに変わりはないけど。
顔がすぐに熱くなる。多分、炭酸の効果。
縁や湯船の側面には、硫黄泉らしい白い析出物に緑の温泉藻かな。湯底はざらざら。
ひとりで広々かけ流しを堪能。
大浴場の内風呂と同じだと思って入らなかったもうひとつの貸切風呂、めんけ湯っこ。北あっちと南こっちの2つ。
部屋のすぐそばにあり、23時以降、朝の5時までは空いてたらフリーで入れる。けど、女性専用。
この貸切風呂の源泉は、大浴場の内風呂と同じ1号泉と3号泉の混合泉。なんか気になって、湯温測ってみたら40度とぬるめの適温。
帰りに宿の人に確認してみたら、1号泉と3号泉の混合泉ではなく、1号泉だけだと!
1号泉は41度の含硫黄-ナトリウム-塩化物泉。冬季は若干の加温をしてるけど、加水も加温もせずそのままかけ流しでいける源泉。ここ入んなきゃだめじゃん、という湯船だった。
夜に思い立ってたら、入ったのになぁと残念。
3号泉と混ぜてない分、内風呂よりもそれぞれの成分が少しずつ濃くて、総量も8780mgと2割以上高濃度。保湿成分メタケイ酸も172mgと多く含まれてる。
何よりも、冬場以外は加温なしのかけ流し。今も40度とぬるめの適温。うぅー、悔しい。入りたかった。
さらにもう一本の源泉。3部屋ある特別室だけで味わえる4号泉。この部屋に泊まらずにはいられない。
床も湯船も青森ヒバ。窓を開けると半露天風呂だけど、普通に人が通りそうなところなので、開けずに。
湯船の木は赤茶色にコーティングされてる。4号泉は含鉄泉。
もったいないほどのかけ流し。
湯口からは44度くらいの湯が注がれている。源泉の温度は33度なので加温してる。
湯口もオレンジに染まってる。
甘い源泉で、しっかり鉄の匂い。
含鉄泉は体を芯から暖める。効果抜群で夜も足がぽかぽかだった。
湯船の湯温は42.5度。水で埋めて40度くらいに。こんなに熱く加温しなきゃいいのに。でも朝は43度の湯が注がれていて、加水することなく40度と超適温だった。
泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉で、pH5.8の弱酸性。
すごい泡付きで、ふわふわの湯感触。加温してても、こんなに二酸化炭素が含まれてるの?と驚くほどの、あわあわのふわふわ。気持ちいい!
湯面からぱちぱちと弾けるのが見える。544mgも遊離二酸化炭素が含まれてる。部屋風呂でこんな泡付きはなかなかない。
顔や頭から汗が出てくる。鉄と炭酸効果かな。ぽかぽか過ぎて長く入っていられないほど。
4本もの源泉を持ち、湯船が点在し、源泉の混合もあり、ちょっと分かりにくいけど整理すると。
1号泉は貸切風呂のめんけ湯っこで冬季以外かけ流し。41度の含硫黄-ナトリウム-塩化物泉。
2号泉は大浴場の露天風呂と、貸切露天風呂のあんべいい湯っことうるげる湯っこの3ヶ所で、含硫黄・二酸化炭素-ナトリウム-塩化物泉。1298mgも遊離二酸化炭素を含んでる。52度なので加水あり。
大浴場の内風呂は1号泉と3号泉の混合泉で、含硫黄-ナトリウム-塩化物泉。38度なので加温あり。
で、特別室の4号泉はナトリウム・カルシウム-塩化物泉で加温あり。
これ、頭に入れた上で、もう一回それぞれを堪能したいな。
日景温泉 白神矢立 湯源郷の宿 日景温泉
★★★★★
[1号泉]
含硫黄-ナトリウム-塩化物泉
41.3度
pH 6.4
加温加水循環消毒なし ※冬季は加温あり
[2号泉]
含硫黄・二酸化炭素-ナトリウム-塩化物泉
52.8度
pH 6.3
加水あり 加温循環消毒なし
[1、3号混合泉]
含硫黄-ナトリウム-塩化物泉
38.4度
pH 6.3
加温あり 加水循環消毒なし
[4号泉]
ナトリウム・カルシウム-塩化物泉
33.3度
pH 5.8
70ℓ/分
加温あり 加水循環消毒なし
露天風呂付き大浴場(男1 女1)貸切風呂4
2020.12.5 宿泊
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