鹿児島空港から高速使えば1時間。日本三大砂丘の一つ、吹上浜の近くに湧く温泉。
吹上温泉の開湯は400年前。湯ノ浦川沿いにある素朴な雰囲気の温泉地で、明治初期には西郷隆盛が訪れ、斎藤茂吉などの文人も親しんだ湯治場。
吹上温泉には5つの温泉施設がある。みどり荘は少し奥まった閑静な湖畔に佇む、自然に囲まれた全8室の宿。斎藤茂吉も宿泊し歌を残してる。秘湯を守る会。
車を降りると、ほんのり硫黄の匂いが漂ってくる。
昭和7年創業で、入口の正門は歴史ある武家屋敷の門を移築したもの。
みどり池をぐるりと周る遊歩道があり、池の周りに離れや浴室が点在している。ほんとに緑色の池。
雨上がりの散歩道は黄緑色の樹々が綺麗だったけど、蜘蛛の巣にかかるし、虫除けにタオルを被って歩く。
手前にある宿泊棟を抜けると、食事処があり、道標に従い右下に降りると大浴場がある。
大浴場の両側がそれぞれ男女別の出入り口になっていて、手前側が女湯、反対側が男湯。それぞれ隣に家族風呂の入り口もある。
大浴場の上は展望休憩処みたいになっていて、昔の大きな分析書が掲示してある。
大浴場を越えるとすぐに男湯の露天風呂が見えてくる。
池の方へ少し降りた場所に湯船がある。右上の暖簾のある小屋が脱衣所。
薄い緑色の湯船。底の石の色なのか、お湯の色なのかは分からない。結構、大きめで5、6人だと苦じゃないくらい。とはいえ、誰もいないので貸切状態。
みどり池が目前。
左手前に小さなかけ湯。もちろんシャワーやカランはないので、こちらで。36度くらいのぬるい源泉だったそうで、
この湯船を作ってくれ!と言ってた。おっしゃる通り。露天風呂のお湯は熱すぎて入っていられなかったみたい。
女湯の露天風呂は1番遠く、池の向かい側まで歩く。吹上観音を越えると左手にある。安全のため、夜は22時まで。大浴場や男性の露天風呂は23時まで。朝は6時から。
吹上観音は戦没者を慰霊するために建てられたもの。知覧と万世基地の若い特攻隊員が、この宿で出撃前の数日を過ごしたそう。
高い塀に囲まれた入り口。池の向こう側から見えないようになってる。あ、散歩道を歩く人からも。
男性の露天風呂と同じくらいのサイズかな。石切風呂で、こちらは底が縞模様になってる。
林の斜面を背後にして脱衣所の小屋が建つ。
上部も下部も密閉性のない小屋。
足元は簀子にバスマット。小屋だけど、野外感がかなり強く、蚊取り線香なども準備してある。林に囲まれてるので、虫が気になる。
遊歩道側は高い塀に囲まれ、反対側は林の斜面。
せっかくみどり池の周りを歩いてやってきたけど、みどり池は全く見えない。ぽつんと露天風呂。
脱衣所の分析書に“飲用許可なし”と大きく書いてあったけど、柄杓が置いてある。こういうの、嫌いじゃない。
頂きます。あ、柄杓は使わないので、あちちっと手で。しっかり硫黄の香る、香ばしい硫黄泉。
湯口にはグレーの湯の花が溜まってる。温度は54.3度と熱い。
加水も何もしない源泉かけ流し。
湯温はかなり熱くて44度超えてた。頑張って入り、湯船の底の方を測ると42度ちょっと。
混ぜれば少しぬるくなるとはいえ、42度を割るわけないので諦める。
湯に浸かっている足を擦り合わせると、ぬるぬる感があり気持ちいいけど、熱くてしゃがめない。
早々にあがったけど、深さが膝上なので、膝上10センチくらいの部分の肌が真っ赤になってた。
露天風呂の源泉は、敷地内の地下70mから自噴する自家源泉。59.6度の単純硫黄泉で、pH 9.0のアルカリ泉。自家源泉が2本あるみたいだけど、1本だけを注いでるのか混合泉かは分からない。
湯船の外側からじっと観察したけど、湯の花は見当たらなかった。
カランやシャワーはないのだけど、シャンプーやボディーソープはある。こちらの小さなかけ湯で洗うってこと。
男湯はこちらがぬる湯だったけど、女湯は本湯船と同じ熱い源泉だったような気がする。
とにかく熱くて入れないのと、虫が気になるのとで、そそくさと退散。せっかくの自家源泉。その後何度ももう一度行ってみようかなと思ったけど、やっぱり熱いままだったら入れないし、虫怖いし、遠いし‥。
大浴場は近いので、利用しやすい。源泉かけ流しなのだから、一晩中入れたらいいのに、夜23時までは結構きつい。
湯小屋は、違う時代に紛れたかのような趣きがある。天井も素敵な木造り。
大きな引き戸を開けると、むわっと硫黄の匂い。
みどり池に面した浴室だけど、目隠しの黒いフィルムが貼ってあるので、あまり景観は良くない。
窓際に長細くとても大きな湯船がひとつ。薄い黒みがかった湯色。
振り返ると、脱衣所側がなんとも素敵。
シャワーはないけど、両脇にカランがいくつかある。秘湯を守る会の熊笹シャンプーとボディソープ。
カランから出るのは36度のぬるい源泉。ぬっるぬるの湯感触。てっきり町の共同源泉かと思っていたら、自家源泉を冷ましたものらしい。だったら、このくらいのぬる湯の湯船を作ってほしい!超気持ちいいだろうな。
大きな湯船には2つ湯口がある。左奥に1つと、右寄りの真ん中の柱の部分にもう1つ。
石で囲まれた湯口。
黄色と白の析出物がまぶれついてる。
覗いてみると、湯口は2つのパイプなんだけど、右側だけしか出てない。湯温は56.3度。
露天風呂の湯口と同じくらいの温度。べったり付いてるグレーっぽい湯の花も同じような見た目。露天風呂と同じ自家源泉が注がれてるのかな。
すぐ真横の縁に排湯の溝があり、湯がかけ流されている。反対側の端っこにもある。
湯温は42度と熱め。上部が特に熱くて、もう少し混ざればマシになるかもだけど、あまりに大きな湯船で、ひとりで湯揉みする元気がない。もっと人が入ってくれたら、自然と混ざるのだろうけど、誰にも会わない。
もうひとつの湯口には柄杓がある。使わずに手で飲んでみると、香ばしい硫黄泉だけど、ちょっと苦みがある。
やっぱり右側のパイプからだけ湯が出ていて、48度ちょい。奥の湯口よりぬるめ。
ぬるりとした湯の花がこびり付いてる。
内風呂は自家源泉と町の共同源泉との混合とのこと。
大浴場と貸切風呂に掲示してある分析書は、源泉温度が36.4度の吹上21号。露天風呂のは23号。どちらもpH 9.0の単純硫黄泉だけど温度だけ違う。
これが町の共同源泉だと思い込んでたけど、2本とも自家源泉なのかも。
男女露天風呂は熱い23号、男湯の露天風呂のかけ湯は21号のぬる湯。カランも自家源泉で21号、なのかな。
そしたら共同源泉を混ぜる必要なさそうだから、はっきり分からないけど。
自家源泉と共同源泉が混ざると、黒と白の湯の花のにごり湯になる。自家源泉だけの透明な露天風呂と、このにごり湯の内風呂、2つが楽しめるというのがこの宿の強み。
季節や外気温によって各源泉のブレンドを調整してる。夏は黒湯、冬は白湯になりがちだそう。
湯は黒みがかって見える。桶に入れてみると、ほんのり墨色。湯船自体が成分で黒く色付いていて、湯底は場所によってぬめりがある。
アルカリ泉は古い角質を落とす効果があるので、“石鹸いらずの美肌湯”とアピールしてる。硫黄泉はメラニンの生成を防ぎ、シミやくすみに効くので、美肌の湯。
湯上がりの肌はねっとりというよりべったり。翌朝の肌はするすべ。
隣にある家族風呂は、空いていれば中から鍵をかけて入れる。
こちらには目隠しフィルムが貼ってなくて、みどり池が綺麗に見える。
湯色は大浴場と同じような透明な墨色。
湯口も同じタイプ。
湯船の温度は外から測ると43.5度で激熱だったけど、もしかしてと入ってみると、やっぱり底がぬるい。39度ちょい。混ぜればなんとか入れるくらいに。
縁に溜まっていた白い湯の花が、湯膜のように浮いて、流れ出ていく。
なかなか熱めのお湯に苦悩。熱すぎて、湯を堪能できない。湯守のオーナーが熱湯好きなのかな。
結局カランから出てくるぬる湯が1番気持ちよかった。その硫黄泉で洗った髪の毛からずっと漂う硫黄の匂い。
翌朝、雨上がりの青空で、みどり池にリフレクション。
吹上温泉 湖畔の宿 みどり荘
★★★
[吹上23号]
単純硫黄泉
59.6度
pH 9.0
[吹上21号]
単純硫黄泉
36.4度
pH 9.0
内湯(男1女1)露天風呂(男1女1)貸切風呂(男1女1)
加水加温循環消毒なし
2021.7.3 宿泊
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