本州最北端の村、青森県風間浦村の下風呂温泉。下北半島最北端にある大間温泉(大間町)、桑畑温泉(風間浦村)に次ぐ、本州で3番目に北に位置する温泉。
室町時代からの歴史を持ち、凍傷に効能があるとして知られてた温泉。 古くはニシン漁師の湯治場として栄え、現在はイカ漁の行われる漁港として温泉街が成立してる。
下風呂温泉には、海から山の斜面の100m以内に“大湯”と“新湯”、海辺に湧く“浜湯”の源泉がある。それぞれ泉質が異なり、すべて源泉かけ流し。
大湯と新湯は公衆浴場やいくつかの宿で、浜湯の海辺地1号はホテルニュー下風呂と下風呂観光ホテル三浦屋(大湯との混合泉?)で、海辺地2号は下風呂温泉 つる屋さつき荘(青森) – 温泉手帖♨︎で入ることができる。
遊めぐりマップの一番左下の海峡の宿 長谷旅館(閉館中)の跡地にオープンした下風呂温泉 海峡の湯では、3つのうち大湯と新湯の2つの源泉に入ることができる。
村で古くから親しまれてきた共同浴場の「大湯」と「新湯」が2020年11月30日に閉館し、その翌日にオープンしたのがこの村営の海峡の湯。
営業時間は7時から20時半まで。11月~3月は朝8時から。入浴料は450円だけど、村民は150円で入れる。70歳以上の村民は100円で、小学生は50円と、細かく値段設定されてる。住民に優しい設定でいいと思う。
ものすごい多くの地元の人たちで賑わっていたので、脱衣所や湯船の写真は下北ナビ、青森県町村会などのHPより拝借。
新しく清潔な脱衣所。地元の人たちが毎日のように利用してるみたいで、みんなそれぞれがささっと掃除してから帰ってた。
椅子には、身体を真っ赤にし、汗だくのおばあちゃんが裸で休んでる。湯温が非常に高い下風呂温泉。
ゆったり広々した洗い場は、壁際に12個のシャワー。ほぼ大体が全部埋まってた。
その奥に、3つの湯船がある。
日本三大美林の一つ、青森ひばを使ったこだわりの空間。湯船やサウナだけでなく、壁や名札、風呂桶や椅子など至るところに村特産の青森ひばが使われている。
香木とも呼ばれる爽やかで心地よい香りには、リラックス効果がある。むわっと香る硫黄の匂いが印象的で、あまりひばを堪能してないけど。
手前にある湯船は熱湯。緑がかって見えるけど、透明感もある薄い濁り湯。
湯船の温度が47度もあるけど、入ってる人いた。そして加水蛇口さえひねってない。恐るべし熱湯。源泉は大湯らしい。
公衆浴場というより、目の前に海が見えるお洒落で綺麗な浴室。
窓の外は津軽海峡。天気の良い日は海の向こうに北海道を望むことができるそう。夕方には夕日、夜には漁船の漁火を眺めながら湯につかれる。
ただ残念ながら、つかれるというほど入れない。熱くて。熱すぎて。窓の外など眺められない。
昔から万病に効く温泉として、多くの人々を癒してきた歴史ある名湯の大湯と新湯。閉鎖した共同浴場の源泉をそのままこちらに引いてきてる。
奥の窓際に2つ並ぶ湯船の左側が新湯。右側が大湯。
左の新湯は、意外なほど透明な湯。白いしっかりした塊の湯の花が舞ってる。
加水蛇口があるけど、新参者の観光客がひねることなどできる雰囲気はない。
縁に座ることしかできず、端っこの方の湯温を測ると43.5度。湯口の温度など測りに行けない。
新湯は1号から4号泉までの4本の混合泉みたいで、自然湧出で源泉温度は78.8度。大湯より温度が高い。
含硫黄-ナトリウム-塩化物泉で、塩気があり体の芯まで暖まる北国にもってこいのお湯。切り傷や火傷、慢性皮膚炎に効く。メタホウ酸が378mgも含まれてるから殺菌作用が相当強い。
pH 7.4の中性。ふわりとした湯感触で、しっとりした肌触り。天然の保湿成分メタケイ酸も128mgと多く含んでる。
大湯はいかにも硫黄泉といった薄く白濁した濁り湯。手前の熱湯と同じ源泉みたいだけど、棲み分けが分からない。
加水蛇口のそばの温度が44度。肌にぴりっと痛く、意外にもふわっとした浴感。
湯口には、‘熱ければこれで湯を止めて’と竹筒があったけど、そんなこと出来るわけない。水も出せない。
湯口のお湯をさっとすくったけど熱過ぎて、塩気があり、酸っぱいくらいしか分からなかった。硫黄っぽさより、樟脳の匂いがするタイプ。源泉温度は56.5度。
大湯も自噴泉で、pH 2.17の酸性-ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉。大湯は1号泉と2号泉があるのだけど、この湯船は多分1号泉。かなりの酸性度。ぴりっとするはずだ。
新湯の半分以下の含有量だけど、メタホウ酸が185mgと豊富で、保湿成分のメタケイ酸も170mg。
何より遊離二酸化炭素が584mgと驚くほど多い。ふわっとした浴感はここからきてるのかな。なんとか冷ましてお湯を楽しめるように入れれば、すごい興味深い泉質なのに。
右奥の別室のようなスペースにサウナとさらに湯船が2つ。右は水風呂で、左側は井上靖ゆかりの湯とある。
井上靖ゆかりの湯は透明な大湯2号泉。この源泉はここでしか入れない。
ここ海峡の湯は、井上靖が小説『海峡』の取材で訪れた際に宿泊した長谷旅館の跡地に建てられ、その旅館で使用していた源泉を利用してる。それが大湯2号泉。
こちらもまた湯温は44.5度と熱く入れなかったのだけど、源泉温泉58.7度で自然湧出してるpH 2.31の酸性・含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉。
1号泉と同じく、メタホウ酸とメタケイ酸が多く、遊離二酸化炭素も487mgと、ほぼ同じ成分。
熱い熱い温泉なので、真冬に雪が積もるような寒さの中で入るのがいいのかも。それでも熱すぎて入れないか。
井上靖は下風呂温泉郷で『海峡』の終局を執筆。いさり火の見える温泉として紹介したことがきっかけで、全国的に有名な温泉地になったのだそう。
“ああ、湯が滲みて来る。本州の、北の果ての海っぱたで、雪降り積る温泉旅館の浴槽に沈んで、俺はいま硫黄の匂いを嗅いでいる。”
下風呂温泉 海峡の湯
★★
[大湯1号泉]
酸性-ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
56.5度
pH 2.17
[新湯]
含硫黄-ナトリウム-塩化物泉
78.8度
pH 7.4
14ℓ/分
[大湯2号泉]
酸性・含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
58.7度
pH 2.31
男女別各 大湯湯船3 新湯湯船1
加水あり 加温循環消毒なし
2021.8.8 日帰り入浴
コメント