小屋原温泉 熊谷旅館(島根)

ちょうど一年前、去年の7月15日に宿泊予定だった小屋原温泉。西日本豪雨でここ島根県の三瓶町でも土砂崩れ。

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さっき通ってきたけど、やっと補強工事が始まったらしい。目的地のほんのすぐそば。

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「宿へ行く道が塞がれてしまったので来てもらえません」とキャンセルの連絡を受けた、あれから1年。

再度予約の電話をした際「今年は何事もなく来られるといいですね。ははははは」と笑われた。いやいや、笑いごとではないので!

ここ小屋原温泉 熊谷旅館の予約は電話のみ。部屋数5室、だけど3組しかとらない。山に囲まれた静かな秘湯の一軒宿。

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三瓶山の北西山麓に200年前(寛永年間)から湧き続けている名湯。真横を三瓶川の支流が流れ、部屋でも湯船でもどこにいても川のせせらぎが聞こえてくる。静かな静かなところ。

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最寄りの駅は山陰本線の大田市駅で、駅からは車で25分、出雲空港からは1時間。ただ、ナビで示されている県道286号(小屋原の北側)は、地元の人も通らないというエグい道らしく、三瓶山高原道路を通り南側から廻ったりと安全っぽい道を選択しながら辿り着いた。

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あぁ、もう、ほんとに嬉しい。やっと来れたよ、小屋原温泉。念願の小屋原温泉。ここには大浴場はなく、貸切風呂が4つある。そう。宿泊すれば、4つのお風呂を3組で入れる。

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板張りの廊下の右側に貸切の内湯が4つ並んでる。脱衣所も湯船もそれぞれ微妙に違う。空いていれば内から鍵をかけて貸切で入るしくみ。

まずは一番手前から。脱衣所から2段、石段を下りたところに湯船。カランは一つあるけどシャワーはない。

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湯気抜きのある高い天井の木造の浴室。

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二酸化炭素を多く含むので、気分が悪くなったらすぐに窓を開けて〜って貼り紙もあった。上の小さな窓は常に開けてある。

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金気臭が漂う。鉄分で赤茶色に染まり、析出物こってりの湯船に、緑の床、鄙び具合がたまらない。温泉好きにはたまらない狂喜の湯船だ。

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この湯船が4つの中で一番大きい。といっても、家族で大人ふたり入るくらい。でも、長湯するし、ひとりで入りたい。ひとりでじっくり堪能したい。

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少し濁ってるんだと思っていたけど、無色透明。全く濁ってなかった。湯の表面にはうっすら油が浮いている。

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千枚田のような湯船の縁の角っこ。もはや元が何か分からなくなってるけど、石造り。

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数年前まで、一番奥の湯船だけが木枠で他の3つがコンクリート造だったのだけど、現在はすべてがコンクリート。もはやコンクリートに見えないけれど。

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湯口に顔を近づけると、若干の硫化水素臭がするけど、金気臭にかき消されてほとんど分からない。口に含むと炭酸が弾ける。

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体を洗ったり、時間を確認しに行ったり、ちょっと湯から上がりまた戻ってくるたび、結構な勢いで湯が溜まっていて、ざばぁーっと洗い場に溢れ排湯溝も追いつかない。湯船の縁だけじゃなく、洗い場の析出物の凄さも納得。

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この一番手前と2つ目の浴室の間に源泉があるそうで、手前2つの湯船が一番泡付きが多い。

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隣の2つ目の浴室へ。

あぁ。あぁ‥。去年の秋に訪れた白骨温泉白骨温泉 白船荘 新宅旅館(長野) – 温泉手帖♨︎の貸切風呂こなしの浴室と湯船がツボだったけど、これもやばい。可愛すぎる。堪らない光景に胸が高鳴る。うっわぁ〜。かわいい。

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ここが一番小さな湯船。小さいけどちょうどいい具合にまっすぐ足を伸ばせる。2人入れないことはないけど、それは嫌だ。でも、他の2組とも夫婦で入ってたな。ひえ〜。窮屈だろうな。うわわわわ。

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湯船の周りに排水のための深めの溝が彫ってあり、オーバーフローしたお湯が洗い場へ流れにくくなってる。

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もう、何で出来てる湯船か一見分からない。侵食を繰り返して、今はこの姿。

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お湯に浸からなくても、この量のお湯が流れ続けてる。

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10年前の分析書では毎分30ℓの湯量が自噴、自然湧出している。4つの小さな湯船で分けるなら充分な湯量か。

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右手前の溝が甘くてこちら側は好きに溢れて流れてる。小さい湯船なので入った瞬間三方から大量の湯が溢れ、一度あがってもすぐに満杯になり、また溢れ出す。

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湯船の縁の析出物もすごい。はぁ。味がありすぎる。

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ここの洗い場には千枚田のような析出物は少なく、元の模様が残ってる。

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どの浴室にも湯船に蛇口が付いていて、冬場の寒い時期には加温湯をセルフで足すことが出来る。もちろんこの時期には必要ない。

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湯口のそばの析出物。

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さて、この源泉は日本屈指の炭酸泉。

かつては、二酸化炭素が3100mgも含まれていて、泉質名も含二酸化炭素-ナトリウム・マグネシウム-塩化物・炭酸水素塩泉だった源泉。現在の最新の分析書では780mgで二酸化炭素泉とはうたえないナトリウム-塩化物泉だけど、それでも屈指の炭酸泉に違いない。

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湯に入るとすぐに全身にびっしり泡が付く。あっという間に身体に付く泡は、じっとしていると小さな泡同士がくっついていきすぐに大きい泡になる。そうなると、身体を揺らさなくても泡が離れて湯面で弾ける。体を動かした時に弾ける泡は、湯面に近づけた顔にぱちぱちとしぶきを感じるほど。

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全身がふわふわと泡にくすぐられる感じが至福。気持ち良すぎて1時間くらいあっという間に過ぎる。ほんとに強烈な泡付き。

長湯の長湯温泉 大丸旅館 ラムネ温泉(大分) – 温泉手帖♨︎よりすごい。寒すぎる32度とそれほど泡付きを得られない内湯の41度に比べたら、小屋原温泉の37.8度の超絶適温のぬる湯がいいに決まってる。

37.9度の適温の八甲田の八甲田温泉 ぬぐだまりの里 秘湯 八甲田温泉(青森) – 温泉手帖♨︎。泡付きはいい勝負だけど、酸性で長湯が好まれないので、中性の小屋原温泉の圧勝。

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湯口から落ちてくるお湯に直接手を当てると、見る見るうちに泡で覆われていく。

身体に付着する炭酸ガスは、体内に吸収されると血管が拡張し血流を活発にする。

37.5度ほどでぬるいのに、じんわり汗が出始めて、そのうち身体がぽかぽかに。最初に手足が温かくなってきて、血流が良くなっていくのがはっきり分かる。40度くらいの湯に浸かってるような感覚に。

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ぬるいのにぽかぽかで、蕩けるような時間が分からなくなるような気持ち良さ。

静寂の中、強い雨が降っているようなザァーっという川の音に、ちゃぽちゃぽと静かに湯口から注がれる源泉の音。一番近くに聞こえるのは炭酸が湯面ではじけるぱちぱちという音。

この湯船は源泉に近く、かつ湯船が小さいので、一番新鮮で泡付きがすごい。とはいえ、4つとも泡付きはしっかりあり、どれも源泉から近いことに間違いない。

名残惜しいけど、手前から3つ目の湯船に移動。うまく鍵が閉まらなくて、外にスリッパを置いて入った。2回目に入った時しばらくチャレンジ。ドアを持ち上げながら閉めると閉まりました。

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全室、棚だけの脱衣場で、ドライヤーなし。ドライヤーは貸してもらえるけど一つしかないみたいで、借りた人が返さない限り借りられない。この日は若い女の子が夕食後からチェックアウトまで借りっぱ。

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3つ目の浴室もまた全然違う味わいが。この洗い場の模様は‥。

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湯船に沿って排湯の溝がないので、浸かると浴室全体にオーバーフロー。溢れた湯は床に広がりながら浴室右隅の排湯口に向かっていく。だからか洗い場の析出物がすごい。

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絶えず湯が溢れ出ているのは奥の面から。このオレンジの床は湯の花が溜まり、ぬるぬる滑る。

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石造りってのがなんとなく分かる湯船に浴室。

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これだけの析出物を作る濃い成分の湯なのに、無色透明の湯。よっぽど新鮮でかけ流されてるからだろうな。湯の流れが緩やかな部分の緑は藻もあるのかも。

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湯底にはざらりとした砂のような細かい赤茶色の湯の花が沈んでいて、身体を動かすと舞い上がる。

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朝一の湯の花がすごくて、入ってすぐお腹の上がくすぐったくて、泡かなと思って見ると、赤茶色の大きめの湯の花がお腹に積もってた。

タオルで体を拭くたびにタオルが茶色になっていく。それでかどうか分からないけど、宿にバスタオルはない。ので、あらかじめ宅急便でバスタオルもフェイスタオルも送っておいた。何度もお風呂行くから絶対にバスタオル必要。

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奥の二つの湯船は泡付きが少ないとか湯量が少ないとか、いろんなネット情報あるけど、それ程遜色ない湯量だし、それなりに泡付きもある。

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カランの腐食がすごい。維持していくの大変だろうな。一泊二食で9000円くらいだと思う。こんなすごいモノがあるんだからもっと高くてもいいのにな。

固形石鹸とリンスインシャンプーは備え付け。

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カランの下に洗面器を置いて、溜めながら洗い流してたけど、数回で面倒になり、這いつくばってカランの下に頭を入れて直接流した。

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3つ目の浴室もなかなかいいなぁ。

最後に一番奥の浴室。数年前までここだけ木枠の湯船だったけど、木の縁が痩せて湯が漏れ、溜まらなくなったため新しくコンクリートでリフォームされた浴室。

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おぉ。こう見るとすごい。他の浴室の洗い場も最初はこんなだったってこと⁈

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湯が流れ出ていく部分はすでに赤茶色に染まってる。これから洗い場部分もどんどん侵食されていくんだろうなぁ。楽しみ。成長見守りたい。

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4つの湯船、湯温も微妙に違うと耳にしてたけど、この日はほとんど変わらなかった。大体全部37.5度前後。泡付きは、手前の2つ、特に2つ目がすごいけど、奥の2つもしっかり泡付きある。

泡を払うつるつるした手触りが気持ちよくて、何度も何度も肌から泡を払い落とす。泡がなくなった肌はじっとりとした肌触りできゅっきゅと軋むような浴感。金気やカルシウム成分のせいか。

湯から出ると塩化物泉らしく、ねっとりじっとり。しばらくすると、つるすべ肌になってる。

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つい最近更新された温泉分析書。保健所の測り間違えで湯温が変。女将さんに聞いたら、抗議したけどお金出して再度申請するしかないらしく、泣き寝入りだと。なので、文末の湯温等は10年前のものにした。

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今は飲泉許可とってないそうだけど、昔は当然飲泉してた。

鉄臭がするけど、えぐみはあまりない。出汁味、塩気は意外にも少なくて飲みにくくない。こういう泉質の温泉、飲めない程のも多いけど、飲める。とにかく炭酸味。炭酸が弾ける。

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こんなにいいお湯だけど22時半までしか入れない。朝は6時半から。夜に清掃するみたい。大変だろうな。というか、女将さん以外の人を見かけなくて、とにかく女将さんがめちゃくちゃ働いてる。

9時から19時まで、1時間500円で日帰り入浴できる。「9時までに入っておかないと日帰りのお客さん来るよ」と教えてもらって慌てて入ってると、9時ちょうどに空いてた2つの浴室に日帰り客。ふぅ〜、危なかった。宿泊してるのに朝食後に温泉入れなかったらショック過ぎる。

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帰りは、一旦南下してから三瓶ダム方面へ進み、56号経由で284号に入り北上して出雲方面へ。このルートだと安心な道で、1時間で出雲空港に行ける。空港から1時間でこの極楽湯。むふふふ。また来よう。

 

小屋原温泉 熊谷旅館
★★★★★
ナトリウム-塩化物泉
37.8度
pH 6.0
30.8ℓ/分
貸切内風呂4
加水加温循環消毒なし
2019.7.14 宿泊

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