岩手と秋田の県境、秋田駒ケ岳の南麓、標高850mに位置する国見温泉。秋田新幹線の雫石駅か田沢湖駅、どちらからでも車で30分。
十和田八幡平国立公園の最南端で駒ヶ岳の五合目にあたり、駒ヶ岳登山道、国見温泉コースの登山口がある。
ムーミン谷の紅葉を見に行って、へろへろになって山を降りてきて、赤い屋根が見えるとほっとする。早く温泉に。
国見温泉の開湯は江戸時代末期。文化文政時代古くは南部の殿様の隠し湯と言われ、道なき道をかごに乗り湯治に来たことから始まる。
南部藩没落とともに現在の当主(6代目)石塚さんの先祖が譲り受け、今の国見温泉石塚旅館に。創業200年以上、秘湯を守る会の宿。
石塚旅館の営業期間は5月中旬から11月初旬まで。
駐車場からすでに硫黄の香り。というか、山の上から赤い屋根が見える辺りからすでに硫黄が香ってる。うーん、山の秘湯に来たって感じで、期待が高まる。
大浴場は2ヶ所あり、小浴場と薬師の湯。どちらも一晩中いつでも入ることができる。
玄関の正面にあるのが小浴場で、露天風呂付き。
階段を数段降りたところに、男女別の浴室入り口があり
右手前に混浴露天風呂出入口がある。
男湯からは、この出入口を使わず、内湯から直接行けるみたいなので、女性が行く時に使う通路。
簡素な小屋が脱衣スペース。ちゃんと棚があり、かつ巨石が湯船からの目隠しになってる。
目隠し石の向こうに、鮮やかな黄緑色。
長細い白い湯船に黄緑のお湯。
大きめの湯船だけど、混浴って思うとそんなに広くもない。
手をつけてみると、それほど熱くはなかった。
源泉は49度。外気がいい感じに冷えてきてるので、41度前後に。
湯浴み着や濡れたバスタオルで歩かないように、との張り紙を何処かで見た気がするので、着用オッケーみたい。
でも、女湯に露天風呂があるので、わざわざ混浴に入らなくていいや。
露天風呂からの帰り道にある、廃湯が流れている緑の川。
室内に戻り、女湯へ。
棚の中に脱衣籠はなくて、使うなら自分でとって棚に置く。
脱衣所から一段下がったところに、こじんまりした雰囲気のある内風呂。
左右に1つずつシャワーがあった気がする。
湯船から溢れる湯で、棚田のような析出物が出来てる。真っ白ではなく、緑がかってたり、紫っぽかったり。
湯船の中に段差があるのだけど幅が細くて、足の縦幅に足りなそうなので、横向きに足を入れる。
そっと足を降ろすと、溜まっていた白い湯の花がぶわっと舞い上がる。
と、悠長に観察していられないほどに熱い。湯口まで行きたいけどやめたいほど熱い。
小さい湯船に源泉がどばどば注がれているので45度近くあり、速攻引き上げたけど、浸かってた部分が赤くなった。
お湯がかけ流されていく道は真っ白。トムとジェリーみたいな穴に向かって、流れ出ていく。
ここを跨いで、露天風呂へ。虫除けなのか、寒さ避けなのか、透明のシートが暖簾のようにかかってる。
内風呂に比べると広い。透明感のある黄緑色。隅の方に白い湯の花が溜まっているのが見える。
山の景色が見えるわけじゃないけど、十分な露天風呂。誰にも合わずゆっくり独泉。
こちらの湯温は42度弱。
昔から胃腸に良いとされている飲泉ができる温泉。驚きの不味さと書いてあったけど、全然大丈夫。苦いけどそれほどでもない。すっぱくないので意外と飲める。
内風呂と露天風呂との間の窓。硫化水素ガスの発生が多いので、浴室にこもらないようにかな。
総硫黄の含有量は全国でも一桁に入るみたい。硫黄の香りがそこら中に充満してるのだけど、お湯を近くで嗅ぐと、樟脳のような匂い。自分的には樟脳がしっくりくる表現なんだけど、世の中的にはアブラ臭というのかもしれない。
この湯船が一番澄んでたかも。湯船の壁に付いている白い析出物がよく見える。
露天風呂、ぬるめで良かったけど、こちらの小浴場はこの最初の一回だけ。足しげく通ったのは、もう一つの大浴場 薬師の湯。
玄関前の廊下を左に進み、数段の階段を上がった右手ある。
木造りで落ち着くゆったりとした脱衣所。アメニティなどはない。ドライヤーは帳場前の貸し出しを持って来て使用することができる。
脱衣所から浴室への引き戸は曇りガラスなので、開けた途端に黄緑色が飛び込んでくる。
あまりの光景に思わず、ため息のような声が漏れてしまう。
鄙びた素敵な湯小屋に広い湯船に黄緑色のたっぷりのお湯。
シャワーが5つ、リンスインシャンプーとボディーソープもある。自家発電なので、シャワーのお湯は夜9時までで、朝は6時頃から。
天井は高く、男湯と女湯の境が少し空いている。
かなり広い湯船。クラス全員入れる広さ。
でも24時間入れるし、2つ大浴場あるしで、ほとんど誰ともかち合わず独泉。
湯口からは49度超えの源泉そのものが流れ出ているので、直に手ですくおうとするとあちちっとなる。
この周りは42.5度くらいで、離れたら42度ちょい。42度なのに体感温度はそれほど熱くない。
しかも、硫化水素ガスを出すためにも窓が開いているので、常に冷たい外気が入ってくる。よく暖まってからでないと、体を洗うのが嫌なほど寒かったので、これくらいの湯温でちょうど心地よく入れる。
湯口の下の析出物が立派。
離れた場所の岩にもしっかり付いて真っ白。
成分の濃さがうかがえる。湯面には白い湯の花が大量に浮き、湯の中にも舞ってる。
黄緑色に白色。見てるだけでも飽きない。
お尻をつけて座ると顎がぎりぎりで、背筋を伸ばして湯面の匂いを思いっきり吸う。
つるっつるの肌触り。泉質が含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉なので、重曹泉の効能がある。不要な皮脂を乳化し除去してくれるので、つるっつるに。
同じ緑色の熊の湯温泉 熊の湯ホテル(長野) – 温泉手帖♨︎は、含硫黄-カルシウム・ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉。
成分比べてみたら、似てなくはない。比率はさておき、同じような成分ではある。でも、国見温泉の炭酸水素イオンの2507mgは突出してる。だから、こんなにつるんつるんなのかな。
炭酸水素イオンが多かった記憶のある石鎚山温泉 京屋旅館 別館 歓喜庵(愛媛) – 温泉手帖♨︎が6178mg、花山温泉 薬師の湯(和歌山) – 温泉手帖♨︎が3301mgとあるけど、どちらも16度、25度と温かい源泉ではなく加温することになる。
硫黄泉もメラニンの生成を抑制、除去し、古い角質を溶かす美肌効果がある。
美肌の湯の5つの要素のうち4つを含んでる。硫黄、炭酸水素塩は言うまでもなく大量に含み、硫酸イオンも220mgとしっかり入っていて、保湿効果のメタケイ酸も63mg含む。
pH7.5以上だと弱アルカリ性で5つの要素コンプリートだけど、7.0の中性。
こんなにつるんつるんなのだから、充分。
溢れるお湯は湯口の反対側からかけ流されていて、こちらにもしっかり。
この湯の花、まだ固まっているわけじゃないみたい。
指で触ると簡単にほろほろとこそげる。
翌朝は、ぱりぱりの湯の花がたくさん湯面に浮かんでた。
手ですくうとパラフィンみたくしっかりした厚さで、肌に付く。指の火傷、よくならないかなとそこに膜を作ってみる。
湯桶やタオル、どれも綺麗な黄緑色で統一されてる。鄙びた秘湯とは思えないほど、快適に過ごせる宿。
服にこれでもかと硫黄の匂いが付き、何日も硫黄に包まれて過ごす。
国見温泉 石塚旅館
★★★★★
含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉
49.0度
pH 7.0
209ℓ/分
内風呂(男2 女2)露天風呂(混浴1 女1)
加水加温循環消毒なし
2020.9.26 宿泊
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