泥湯温泉 奥山旅館(秋田)

栗駒国定公園の秋田側、宮城県境の神室山地の山あいに湧く泥湯温泉。山奥のわずかに開けた小盆地に佇む秘湯。

谷間にある古くからの素朴な湯治場で、明治創業の小椋旅館と奥山旅館の2軒の宿が残るだけ。

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同じ栗駒国定公園の宮城側の新湯温泉 くりこま荘(宮城) – 温泉手帖♨︎に1ヶ月ちょっと前に泊まったけど、同じ国定公園なの⁈随分遠い!と思い調べてみたら、栗駒山のほか、小安峡や神室山、鳴子峡まで含まれてる広大な山岳国定公園だった。

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宿から20分足らずの小安峡で紅葉狩り。

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泥湯温泉は、秋田新幹線こまちで大曲駅まで3時間20分。それって岡山と同じくらい遠い。そこから奥羽本線で湯沢まで40分。ここまでで実家に帰れる遠さ。さらに湯沢駅からレンタカーで45分ほど。

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奥山旅館は1912年(明治45年/大正元年)創業で100年を超える老舗温泉旅館。2016年に火事で全焼、2019年4月に再オープンを果たした宿。待っていました。

秋田県の古民家の古材を再利用した造りで、黒壁が新しいのに古さを感じさせる。秘湯を守る会。

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玄関の目の前には立入禁止の看板。かつて硫化水素ガス中毒で死亡事故も起きているので、自分も含めお客側も注意に余念がないと思う。

開湯は1200年前の平安初期。泥水のような濁り湯から温泉名が泥湯に。江戸時代には安楽泉の別名でも呼ばれる湯治場となり、1680年に湯宿が開設されたそう。

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道路を挟んで宿の向かいに建つ小屋は大露天風呂の入り口。外から湯船が見えないように塀で囲まれてる。

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宿と同じく黒で統一された湯小屋。ドアを開けて入ると段差があり、左右に男女分かれる。

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夕方来た時には暗くて、ここに男性の外履きが脱いであったので自分も脱いだけど、ここを裸足ってどうよ?と半信半疑でつま先歩き。脱衣所へのドアをもう一つ開けてみると、やはり靴脱ぎ場があったよ、ここは土足だと思う。

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簡易だけど、ゆったりした脱衣所。トイレもある。

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脱衣所から、露天風呂側の引き戸を開けると、目の前は大自然。白い山肌や小地獄が望め、開放感いっぱいの露天風呂。

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実は夕方来た時は怖くて入れなかった。裸になったので、とりあえず足だけでもと入ってみたけど、雨は降ってるは真っ暗だわ、池のように広いわ、ぬる湯だからそれもなんか怖くて、一瞬で退散した。ほらこれ。

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元々は巨大な混浴の大露天風呂だったものを、板塀で男女別に分けたそうだけど、仕切ってもかなりの広さ。

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訪れた2日前に‘大露天風呂の源泉が雪の影響で埋もれてしまったので、本日より大露天風呂は冬季閉鎖’とHPに掲載されてたけど、この日は利用できた。冬は雪の影響で利用できない場合があるみたい。

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ほんの一部にだけ屋根がある。

広すぎてどこに湯がかけ流されているかよく分からなかったけど、全体的に周りから溢れてるような感じ。消毒も加温もなしのかけ流し。

広い露天風呂が苦手なのであまり探検もできず。こんなに広い湯船になみなみと湯が溢れてる、すごい湧出量なんだろうな。自然湧出なので、湧出量は不明。

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泥湯温泉には複数の自噴源泉が存在していて、その泉質は単純硫黄泉、単純温泉、硫化塩泉などばらばら。

奥山旅館は3つの異なる源泉を利用してる。

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この男女別の大露天風呂は新湯源泉。泉質はpH3.8の弱酸性の単純温泉。薄い濁り湯だけど単純泉なんだ。

底は砂利敷き。

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個人的に砂利も苦手。野趣溢れ過ぎてて。歩くとぶわっと湯の花が舞い、湯が濁る。

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よくみると大小様々な白い湯の花がたくさん。黒や茶色も。

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源泉温度は88度と高温で、気温により加水してる。この季節はどうなんだろ。

手前の入り口付近は37度とかなりのぬるさ。奥の方が少し暖かいけど、それでも38度ほど。湯口がどうやら男湯側にあるみたいで、奥の男湯との境が1番暖かかった。

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つるつるの湯感触。至るところから硫化水素の匂いがしてるから分かりにくいけど、このお湯は無臭のような気がした。

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宿泊棟の隣に、別棟の湯小屋がある。右手が女湯で左の宿泊棟側が男湯。男女入れ替えはなく、夜中じゅう入ることができる。

玄関を出て外からも行けるし、

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一階の帳場向かいの扉を出て、外履きに替え、階段を降りたところが男湯。

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女湯は奥にあるので、どうしても一瞬雨に濡れる。

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脱衣所はぴかぴかの木の床で綺麗なロッカー。秘湯とは思えない清潔な室内。アメニティはなくてドライヤーのみ。

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木造りの風情ある内風呂。風情あるけど綺麗で清潔。

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シャワーもついていて、リンスまであった。しかも、あの秘湯の熊笹シャンプーじゃなくて良さげなやつ。

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内風呂の先には女性専用の露天風呂。屋外ではあるけど、屋根があるので半露天のような感じ。

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高い天井。やっぱり木造りの湯小屋いいな。

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内風呂はしっかり濁り湯。天狗の湯という源泉。

昔、病に苦しむ乙女が温泉に浸かりたくても、透明な湯に恥ずかしくて浸かれないでいたところ、天狗が現れ白く濁った湯に変えてくれた。乙女は喜んで湯に浸かり病が治ったと伝えられている。

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このお湯がきっとその天狗の湯。

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足を湯船に踏み入れると白い湯の花が舞い上がる。硫黄の匂いというより、埃っぽい土っぽい匂いがする。

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大小様々な白い湯の花がたくさん。

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縁にも積もっていて、指で絵が描ける。

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手前側の縁から湯が溢れかけ流されていく。

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あぁ、素敵な析出物。こんなになるの、どんな泉質なのかと思ったら、びっくりするほど成分が薄かった。

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溶存物質が200mgに満たない、単純硫黄温泉。

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天然の保湿成分メタケイ酸が62mg。pH3.7の弱酸性。お肌には優しい。

72度と熱い源泉なので加水だけしてかけ流し。10年前の天狗の湯の分析書も貼ってあった。

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泉質はpH2.48の酸性-鉄(Ⅱ)-硫酸塩泉。硫酸イオンが今の5倍くらい含まれてる。随分変動するんだな。今のものも6年前のだから、また変わってるのかも。でも天狗の時から今まで泥のような濁り湯であることは変わらない。

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湯口からは47度くらいに加水された源泉が投入されてる。酸っぱい。湯船の温度は夕方は41.5度くらい。朝は42度だった。

湯の中で肌をさすると、きゅうっと手が吸い付くような肌触りで、じっとりとした浴感。

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湯船の底の端っこにはふわもわの泥がたくさん溜まってる。

泥湯という名称は湯の色が濁っているところに由来しているそうだけど、この溜まった泥のような湯の花というか温泉泥が由来じゃないのかね。すんごいたくさんの泥だった。

男女別の内風呂ともう一つ、この天狗の湯の源泉が注がれているのが混浴露天風呂。

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内風呂の先にある女性専用露天風呂の扉から外に出て、簀子の廊下を進むとまた扉がある。

この高いところに屋根がついてる湯小屋が、混浴の露天風呂。

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暗いのでどのくらい露天なのか分からないけど、とりあえず屋根がある安心感。

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2つの湯船が少し段差をつけて配置されてる。どちらも長方形の木の湯船でなんとも風情がある。

下側の湯船には絞られた量の源泉が注がれていて、湯温は41度くらい。

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上の湯船は、年季の入った木をくり抜いた湯口から湯が投入されてる。

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湯船の温度は46度くらいとかなり熱い。

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内風呂と同じ源泉なので、わざわざ入ることないので、バスタオル巻きで雰囲気だけ味わい、誰にも会わないうちにそそくさと退散。

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混浴露天風呂に行くためにスルーして行った女性専用露天風呂へ戻る。綺麗にブルーがかった乳白色のお湯。

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暗い中だとこんな感じ、灰色の白濁湯。朝と夕方でこんなにも違う。

ここが3本目の源泉、川の湯が注がれている湯船。

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もう見るからに硫黄泉で、硫化水素臭が漂ってる。

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入り口の部分から外に湯が溢れてる。

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湯口は1番奥にあり、70度超えの熱い湯が注がれてる。うっかり味見しようと手を出してしまい、熱くて味見どころじゃなくなった。源泉は77度あり、加水のかけ流し。もしかしたら寒い時期は加水してないのかな。

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湯船の温度は44度くらい。離れた場所でも42.5度から43度くらいと熱め。夜は外気が冷えて寒く、朝はごーごー冷たい風が吹いていたので、なんとか入っていられたけど。

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白い湯の花が大量に舞ってる。湯船の底は小さな砂利のような感触でざらりとするところも。屋根はあるけど葉っぱが入ってきてる。

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岩にはいかにも硫黄泉な白い析出物がしっかり。

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川の湯源泉は3本の中では1番水素イオン濃度が高いpH5.8の中性に近い弱酸性。

湯感触はねっとりじっとり。きゅうきゅうと手が肌に馴染むような肌触り。成分も1番濃い。もう少しぬるめに調節してくれたらいいのにな。

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唯一、内風呂がついてる部屋‘こしあぶら’をめっちゃ前から予約した。部屋にはエアコン、冷蔵庫、テレビはない。

部屋の窓からの眺め。

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部屋のお風呂にしては、とても大きな檜風呂。寒いから窓を開けてないけど、開けたら半露天風呂みたいだったのかも。目の前が川だったし、眺めいいのかも。

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灰色の微白濁で、入ると白い湯の花が舞う。男女別内風呂と混浴露天風呂と同じ天狗の湯。

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加水された源泉のかけ流し。

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36度ちょいのかなりのぬるさ。ぬる湯好きなので許せる範囲ではあるけど、夜中は寒いはず。

チェックイン時に湯温調整するので言ってくださいと言われてたので、夕食時に伝えたけど、ちょっと難しいかもとの返答。もしかして湯守さん帰っちゃったのかしら。

結局、夜中じゅう36度ちょいのまま。朝ごはんの後に37度超えになってたから、朝調整してくれたのかな。

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内風呂ほどじゃないけど、隅の方に泥が溜まってた。

帰る頃には爪が灰色になってて、洗っても落ちない。身体に残る硫黄の匂いはほんのり、ほんとにほんのりだった。

 

泥湯温泉 奥山旅館
★★★★
[天狗の湯源泉]
弱酸性単純硫黄温泉
71.9度
pH 3.7
[川の湯源泉]
弱酸性単純硫黄温泉(硫化水素型)
77.4度
pH 5.8
[新湯源泉]
単純温泉
88.3度
pH 3.8
内風呂(男1 女1)露天風呂(男1 女2 混浴2)
加水あり 加温循環消毒なし
2020.11.7 宿泊

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