南アルプスの秘湯といわれる奈良田温泉は、1300年も前の奈良時代に女帝の孝謙天皇が行幸したとの伝説が残る隠れ谷にある。
前日宿泊した石和温泉からは甲府駅まで中央本線で7分。甲府駅から特急ワイドビューふじかわに乗り45分程で下部温泉駅に着く。下部温泉は、信玄のかくし湯という31度の足元湧出泉がある下部温泉 古湯坊 源泉舘(山梨) – 温泉手帖♨︎を訪れたことがある。
今回はこの下部温泉駅から早川町乗合バスに乗り、70分かけて奈良田温泉へ向かう。
山梨県早川町最北、南アルプスの麓に位置する奈良田という集落は、従来から秘境とされ永い年月隔絶されていたため、独特の方言や風習が残っている。
宿の玄関に飾ってある『オホンダレ』。カツの木の枝に顔を彫り、頭の上に団子や木を削った花を飾ったオホンダレは、男女一対で魔除けの意味があり、小正月に玄関に飾る風習があるそう。
近くの天神様の祠には、“お裁縫が上手くなりますように”と願いが込められた『ミミンコ』が飾られている。
湯治に訪れた孝謙天皇(奈良王)にまつわる七不思議の伝説があり、八幡社に願掛けしたら温泉が湧いたとも言われている。
奈良田湖畔に佇む一軒宿、日本秘湯を守る会会員の白根館。日本源泉湯宿を守る会の会長の宿でもある。
創業は昭和37年。このダムの湖底に沈んだ村にあった宿で、昭和60年に新たに源泉を開削し現在地に移転した。
宿の看板が見えた瞬間から硫黄の匂いが漂ってくる。
13時からチェックインできる嬉しいサービス。14時から15時半までは日帰り入浴も受け付けているので、早めにチェックインし、14時までにひとっ風呂浴びるのがベストなんだろうな。
玄関脇の扉から温泉へ行く。屋根があり、スリッパのまま。
男女別の総檜の内風呂と、男女入れ替え制の石造りと木造りの露天風呂がある。
右手に木造りの露天風呂が単独で在る。夕食までは女性用。
左側には通路が伸び、男女別の総檜の内風呂があり、手前の内風呂に露天風呂が付いてる。今はそちらが男性用。
突き当たりには飲泉所。飲泉所の手前にはヤマメとイワナが飼われている。
まずは、一番奥の内風呂。木で作られた清潔な脱衣所。
木に描かれた温泉の説明。分析書もちゃんとあるけど、陽が当たって反射してるので、また別なところで。
源泉は47.8度。毎分75ℓ湧いているうち、この湯船には毎分18ℓ投入されてる。
湯気がすごい。硫黄の香りに、え?大丈夫?と一瞬思うようなアンモニアのような匂いもたまにする。むせ返るような温泉臭。
湯船はふたつに仕切られていて、異なる湯温に浸かることができる。ぬる湯好きには有り難い、いい仕組み。
湯口のある熱い方は42度。
仕切りの向こうは40.7度。いいねー。とにかく41度は切っててほしい。助かる。
浴室の床もぬるぬる滑るけど、湯船に一歩踏み込んだこの段差の部分が危ない。気をつけないと、湯船の中もぬるぬる。
仕切り板や湯船の縁が白く析出してる。硫黄泉特有の白。
ざーざーとかけ流されてく。床が暖かくて気持ちいい。
こちらの縁の全面からお湯が溢れていく。気持ちいいけど、ぬるぬるなので注意。
湯船は底も全て檜作り。湯船も呼吸していて湯が馴染む感じがすき。ぬるぬるなのもまた楽しい。
窓から奈良田湖が見えるけど、西陽が眩しくて。少し日が当たらない時間に入りたい。
独立して右手にあった露天風呂へ。暖簾の向こうはすごい硫黄の香り。
屋根はあるけど吹き抜けの小屋のような脱衣所でさっと浴衣を脱ぎ、緑がかったサファイアブルーの湯を味わう。
41度ちょっと。ぬるめだし、涼しいし、ぬるぬるだし、極楽。
つるすべぬるぬるのなんともいえないとろりとした湯感触。今日は緑色だけど、天候によって湯の色が透明、緑色、白濁と変化するので、源泉名は“七不思議の湯”。
泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物泉で、pH 9.1もあるアルカリ泉。アルカリの硫黄泉は美肌効果も高まり、湯感触もいいので大好き。きしきしする酸性の硫黄泉より、ぬるぬるのアルカリ性の硫黄泉の方が比較にならないくらい良い。
夕食後に入れ替わったもう一方の内風呂。こちらからも奈良田湖が見渡せる。今はこちら側にほとんど水がなかったけど、水があったら綺麗だろうな。
湯船はもう一方と同じでふたつに仕切られている。
湯口のそばは43度。勢いよく出てる。毎分15ℓが配分されていて、湯船の温度は42度台。仕切りの向こうは41度前後。
ぬるい方の湯船の底には大きめの黒い湯の花がたくさん。ほわほわと漂ってる。ぬるりとした真っ黒な湯の花で、触ると細かく溶けていく。
この浴場は露天風呂付きで、脱衣所から露天風呂に行くしくみ。
石段の先に奈良田湖を見渡せる石造りの露天風呂。
今朝は雪がちらついてるけど、半分は屋根がある。
湯温は40.2度から41.3度くらい。この宿の中で一番ぬるく、気持ちよく長湯できる。肌をさするとぬるぬるが心地良すぎて、出るタイミングを見失う。
下には大きめの砂利、いや、石。出入り口の大きい石はぬるりと滑る。
緑がかった透明なとろりとしたお湯。毎分17ℓ配湯されていて、ここからかけ流されている。
猟師である宿のご主人がしとめた山肉料理が名物。昨夜の夜ごはんは牡丹鍋。虹鱒の燻製もめずらしかった。
過去一のぬるぬる湯。最高に気持ちよかった。
歩いて5分の町営の日帰り温泉 奈良田温泉 町営 奈良田の里温泉 女帝の湯(山梨) – 温泉手帖♨︎も、さらにぬる湯のぬるぬる湯で泡付きもあって、極上の湯。小さな山里なのにランチ難民にもならないし、奈良田温泉万歳。
奈良田温泉 白根館
★★★★★
含硫黄-ナトリウム-塩化物泉
47.8度
pH 9.1
75ℓ/分
内湯2 露天風呂2
加水加温循環消毒なし
2019.2.10 宿泊
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