仙仁温泉 花仙庵 岩の湯(長野)

信濃の静けさとぬくもりに満たされた山里の一軒宿 花仙庵。

 

『あゆみ入りてふるさとの小さき庵につきぬ』

 

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自然豊かな菅平高原の麓、鮮やかな青紅葉の中にたたずむ花仙庵 仙仁温泉 岩の湯。現社長の先代が、日帰り入浴施設だった岩の湯を引き継ぎ、昭和34年に温泉旅館として創業。

 

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長野駅から長野電鉄で約30分の蔵の町 須坂。須坂駅からタクシーで15分のところに湧く仙仁温泉。

 

「仙仁(せに)」とは地名で、駐車場から宿までをつなぐ橋の下を流れているのが仙仁川。深山幽谷に響く川のせせらぎに耳を傾け、ふるさとのように安らげる宿。日本秘湯を守る会。

 

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この宿あまりの人気で予約が取れない。常連さんの要望で値上げをしたらしいけど、結局11ヶ月先まで予約が取れない。11ヶ月前の毎月1日朝8時が予約開始。今日の予約は、去年の7月1日の朝8時から何百回も電話をかけ続けてやっと取れたもの。

 

年間を通して稼働率95%とも98%とも言われている驚異的な温泉旅館。

 

駐車場に入った瞬間に走って現れた若い従業員の方を見て、あぁそういうことかと納得した。

 

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楽しみながら働いていると言う従業員たちは、全員が地元採用。彼らの楽しさが伝わってくる。個々の振る舞いや気遣いやおもてなしから。

 

しかもこの人気宿、お盆やクリスマスイブ、年末年始などは休業。従業員が十分休めて元気に働けないと、お客様満足に繋がらないという社長のポリシーによるものだそう。
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仙仁温泉は平安時代末期に山伏によって発見された温泉で、武田信玄上杉謙信隠し湯川中島にも近いことから、川中島の合戦以降に武田信玄隠し湯になったとされている。

 

自然湧出している洞窟風呂は昔からあったようで、鉱山を開発していたら湯が沸いたのではないかとのこと。実際、仙仁川の上流には鉱山があり、鉄分を含む水が流れてくるため川底が赤茶けている。

 

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大浴場は玄関ロビーを抜けて進んだ1番奥に。涼しい風が通る緑が鮮やかな通路。湯上がりにはよく冷えた甘いミニトマト
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飲泉場に休憩所。

 

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館内の至る所にベンチやソファやハンモックがあり、自由にのんびりとひと休みできる場がある。
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大浴場は男女別で入れ替えはなし。14時のチェックインから翌朝11時まで一晩中入ることができる。

 

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滝のある大洞窟風呂「仙人の湯」は男女別の内湯から入る。
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洞窟風呂の出入口横に湯浴み着が積んである。混浴だけど、男女ともに湯浴み着で入浴。
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ショートパンツを履いて、さらに巻くタイプの湯浴み着を着る二枚重ね。

 

洞窟風呂はゆっくり保養するためのもの、子どもを泳がせたり、写真撮影しないようにとの注意書きがあるので、携帯は持たずに洞窟風呂へ。

 

洞窟は16m奥に進んだところで二股に分かれていて、右側は滝があったりかなり奥深くハードらしいけど、冒険はせずに左側の突き当たった空間で静かに瞑想。

 

すごい広い洞窟風呂なのに誰もいない。しばらく独泉。これは写真撮ってもいいんじゃない?ってことで、一旦脱衣所に戻り‥。

 

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洞窟内は所々、柱で補強されてる。元々あった洞窟を、歩きやすくするために天井を高くしたり、横の岩肌を滑らかにしたりと、手を加えているそう。
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源泉温度は34.4度と低温だけど、洞窟内が蒸し風呂状態なので快適に長湯できる。緩めの温泉ミストが立ち込めている感じ。

 

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加温した温泉も加えられていて、湯温は35.6度。室温は(湯温計で)34.5度だった。つまり、寒くてもおかしくない湯温だけど、湯に浸かっていない部分が暖かい。

 

ただ、ものすごく広い洞窟。場所によって湯温も深さも全く違う。

 

最奥まで到達すると、源泉が流れ出ている場所を見つけられると何かで見たけど、至る所から湯が出ていてそれが加温されているのか、源泉そのものなのか分からなかった。でも、大体が34、5度くらいのぬる湯。

 

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ここからも湯が出ていて、白い湯の花が岩にこびりついている。湯口に顔を近づけると、ほのかに硫化水素臭。気持ちよくて、この湯口にずっと張り付いてた。
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底には、かなり小さな玉砂利が敷き詰められていて、歩くと程よい刺激。
2時間くらい入ってたけど、内30分くらい子連れの大家族が2、3組一気に入ってきた時間があった。もう大騒ぎ。子どもよりも大人が、子どもを喜ばせようとして大はしゃぎで探検したり、「ほら泳いでごらん!」とか。いやいや、プールじゃないから、レジャーランドじゃないから。

 

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洞窟風呂は自然湧出。内湯と露天風呂はボーリング泉。ボーリングで掘削はしてるけど、自噴泉。どちらもぬるめなので、加温源泉を加えたり、源泉を加温してのかけ流し。
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男女別の大浴場に戻り、湯浴み着を脱いで使用済み湯浴み着ボックスへ。大浴場には内湯と露天風呂がある。

 

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泉質は単純温泉で誰にでも優しいお湯。じっとりとした硫酸塩泉のような浴感。雰囲気のいい浴室。
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浅い場所には枕木があり、寝湯ができるようになってる。

 

湯温は42度。洞窟風呂がぬるいので、その前後に体を温めるのにちょうどいい温度にしてある。
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内湯の窓からの眺め、山の斜面そのもの。露天風呂が見える。
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この宿、いろんなところに感動したけど、大きく感動したひとつがここ。

 

内湯から露天風呂に向かう外の階段へ、湯船から溢れた湯が流れていくようになってる。露天風呂の石段も同じく。

 

寒い時期は暖かいだろうし、寒くなくても気持ちいいし、湯船につける足が清潔だし、思わずおぉ!と声をあげそうになった。

 

露天風呂と内湯の間にはタオルまで置いてある。

 

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露天風呂は緑の林の中に。

 

内湯と露天風呂の源泉は深度86mのボーリング泉で、源泉温度が33.8度なので加温してかけ流し。消毒や循環はなし。f:id:ayumu27:20190619233318j:image

 

露天風呂の湯温は40度前後で、各湯船の湯温調節が絶妙。清々しい空気の中、のんびりと長湯できる。
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湯船は中央部分が深めで、立っておへそ下くらいの深さ。周りは程よい岩に座っていられる。
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貸切風呂があるからか、入浴時間が長いからか、両方だな、大浴場は空いてるので、気兼ねなくゆっくり入れる。

 

たまに人に会っても、会う人みんな「何度も来られてますか?最高にいい宿ですね」と控えめに話しかけられ、予約が取れない話と最高の宿だという話。本当にすごい宿だな。
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早朝の露天風呂も爽やかだった。

 

脱衣所にはバスタオルとフェイスタオルが備え付けられていて、何度も温泉に入るのに気持ちいい。

 

湯治宿で、なんっかいも温泉に入るのに、バスタオル1枚でやり過ごしたり、下手したらフェイスタオルしかないところもあるので、有り難い。

 

大浴場の他に貸切風呂が4つあり、それぞれに内湯と露天風呂がある。雰囲気があまりに素敵な貸切風呂なので、洞窟風呂よりも印象に残ってしまうかもしれない。

 

使用中の場合は、入り口のランプが点灯してる。空いていれば中から鍵をかけて入るタイプ。予約制ではないので、めんどくさくない。

 

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一番奥の高台にある貸切風呂は「夢想の湯」。覗いた時、楽園かと思った。
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ここが1番広い貸切風呂かな。
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広い内湯。湯船も広いし、スペースが贅沢で広々。
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緑に向かって露天風呂。
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貸切風呂にも、バスタオル、フェイスタオルが備え付けられている。
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トイレにシャワーブースに洗面台。住めるレベルの広さ。うちより広いんじゃないかと。
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化粧水と乳液もそれぞれの浴場に置いてある。
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広々楽園の「夢想の湯」の手前の左側にあるのが「野守の湯」。
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階段を降りたところに脱衣所とトイレ。こちらも広め。
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さらに階段を降りたスペースに内湯。山の斜面を利用した庭のような、いや。眺めは林。
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しっとりした落ち着いた雰囲気の貸切風呂。浅い部分があり、座ったり、寝湯が出来たりと考えられた湯船。
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湯口には析出物。カルシウムイオンが多いのかな。
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森の木々を眺めながらのんびりできる。
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貸切風呂の湯は、33.6度pH 8.4のボーリング泉。湯口に近づいてみても硫化水素臭はしなかった。

 

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加温だけしていて、消毒も循環もないかけ流し。

 

カルシウム-硫酸塩泉のようなじっとり肌に馴染むような浴感。

 

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この貸切風呂の途中にある休憩室。お水やルイボスティーを飲める。
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ドアを開放していたら心地よい風が吹き抜けていくし、閉まってたら温室みたい。天窓から光が差し込む。
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館内や部屋にあるソファ。ヨーロッパで買い付けているらしいソファが素敵すぎる。
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あ、これ、非常口。
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実際に浸かったのは1番手前にある「風姿の湯」。3つの中では1番こじんまり。脱衣所や洗面スペースも狭め。といっても、これくらいの大きさの大浴場の宿もある。

 

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内湯の横にシャワー。

 

屋根に天窓があるので光が差しこんでくる。すべてのドアや窓が開いた状態だと露天風呂のような感覚。
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湯温は42度。ジャグジーがついてる。常々、温泉にジャグジー要らないだろうと思っているけど、ついスイッチを押してしまった。数分で自動で止まる。あっても悪くない。
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この露天風呂の雰囲気はなんだろう。ただただ秀逸。

 

内湯では感じられなかった緑の匂いがする。
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露天風呂の湯船は二つあり、一つは寝湯。39度くらいのぬる湯。大きい湯船は40度弱。

 

緑の匂いと、吹き抜ける風。何度も言うけど、これが一晩中好きな時に自由に貸切で入れる。

 

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もうひとつの貸切風呂は家族風呂という名称で、他の3つの下の階にあり、趣きも違う。

 

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これだけ多彩な浴室、湯船がチェックインの14時から翌朝の11時まで入り放題。チェックアウトは12時で、大浴場も貸切風呂も11時から清掃。

 

毎分700ℓを超える豊富な湯量があってこその、贅沢なかけ流し。

 

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部屋からの眺め。客室は全部で18室。3つの宿泊棟に別れていてグレードが異なる。今回泊まった仙寿亭は一番リーズナブルで、大浴場と貸切風呂に最も近い部屋。ホームページがないので、詳細が分からず予約したけど、この部屋で正解。この部屋で充分。

 

食事も素晴らしい。朝ごはんもお野菜たっぷり。三千坪の農場を所有しているので、野菜を作ったり管理する人もいる。敷地内にある遊歩道や庭木の手入れはもちろん。館内のあちこちに活けられている花々の数は200か所以上。お花を生け直している方にも出くわす。

 

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はじめに戻るけど、チェックインの時にお抹茶と頂いた杏のお茶菓子も秀逸だった。

 

 

仙仁温泉 花仙庵 岩の湯

★★★★★

単純泉

33.8度 34.4度 33.6度

pH 8.2  8.0  8.4

265ℓ/分 275 175

男女別大浴場(内湯2露天風呂2洞窟風呂1)露天風呂付き貸切風呂4

加温あり 加水循環消毒なし

2019.6.15 宿泊

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