島根県の邑智郡美郷町の湯抱温泉。美郷町は昨年訪れたあの千原温泉 千原湯谷湯治場(島根) – 温泉手帖♨︎がある町、隣町の三瓶町には同じく昨年やっと行けた小屋原温泉 熊谷旅館(島根) – 温泉手帖♨︎があり、どちらも30分圏内。
この三瓶山の西南麓に湧く湯抱(ゆがかえ)温泉も、ずっと来たかった温泉。ゆをかかえる、と書いて地元では「ゆがかい」温泉と呼ばれているそう。
万葉の詩人 柿本人麻呂の終焉の地とされる鴨山は、ここ湯抱から望む鴨山だとされている。
桜が開花したばかり。咲いたら綺麗だろうな。
静かでのんびりできる、時が止まっているかのような湯治場。
出雲空港からはレンタカーで1時間20分ほど。
大山隠岐国立公園内、三次街道(石見銀山街道)沿い、江の川支流の尻無川と湯抱川に望む鄙びた温泉地。
ちょっと前まで温泉施設が3軒あったけど、日の出旅館が平成28年で閉館したらしく、神湯なかだと中村旅館の2軒になってた。旅館ごとにそれぞれ自家源泉を持っている。
中村旅館は大正5年創業の老舗旅館。ずっと来たかったのに来られなかった理由は、湯船がひとつだけで、1日1組しか泊まれないから、なかなか予約が取れなかった。
泉質は含弱放射能-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。泉質名は違うけど、千原温泉のとかなり似てる。
13,248mgも溶存物質がある濃い温泉。温泉水1kg中に13gもの温泉成分が含まれてる。人間の体液の9gよりも成分が濃いため、浸透圧により細胞膜を通して体内に浸透していくらしい。
泊まっている2階の部屋から階段を降りたところに浴室があり、レトロなドアを押し開けて入る。
脱衣所は薄暗いけど清潔。棚には脱衣籠が4つか6つあった。
扉を開けるとこれ。もうこれ、わくわくがとまらないやつ。
浴室の手前の左手にシャワーが2つ。シャンプーにリンス、ボディソープもある。
はいきた!
すごい!凄すぎる析出物。長年蓄積された成分で、千枚田のようになってる。
このマットがないと痛いし、足場が危なくて湯船に到達できない。
湯船から直接湯を汲んでかけ湯をするとかは、膝がつけなくて出来そうもないので、シャワーがあるのがとても有難い。
カルシウムがものすごく多いからだ、とどこかで見たけど、実際には363mgしかカルシウムイオンはないのにこうなるんだーと、温泉成分の不思議。
カチカチに固まってる。
湯船の大きさは、2人だとゆったり。3人はちょっとやだなぁと思うくらい。
ちょうど出入りする部分の縁は石みたいな灰色のつるつるだけど、そこ以外の縁はこんな状態。
何がどうなってか分からないけど、左手前側の縁に穴が開いていて湯が溜まり
湯の花が沈んでる。析出物と同じ、濃いクリーム色。
湯船の奥には蓋がある部分がある。
源泉は30.6度とぬるめなので、薪で沸かしてくれる。その熱く沸かされた湯が出てくるところ。
湯船の中も柵がある。
柵に付いてる析出物がまたすごい。
お湯に浸かった頃合いで、女将が声をかけてくれる。湯加減はどうですかと。
ぬる湯好きなので39度くらいでお願いはしてあるけど、なんせ薪。
ちょっと熱いので源泉を足してもらう。
勢いよく冷たい源泉が。めちゃくちゃ気持ちいい。しゅわしゅわ。
以前は源泉を好きなだけ出す事ができたみたいだけど、今は女将にお願いして出してもらうしくみ。
あまりにも入れ過ぎてぬるくしちゃうと、今度は薪でお湯沸かして、って話になるだろうから勝手に出せないようにしたのかな。
源泉を出してもらうと湯船から勢いよくかけ流されていき、あっという間に排水口辺りに湯が溜まってしまう。
ちょうどいい湯加減で止めてもらうのだけど、その間寒い中、女将を外で待たせておくのが申し訳ない。窓越しに湯加減のやりとり。
ただ、ちょうどいい具合だと思って源泉を止めてもらっても、薪で沸かしてるからか、熱い部分のお湯が根強くて、時間を追うごとにじわじわと熱さが戻ってきて熱くなった。
窓全開で外気を入れても熱くて、湯船の縁に避難しては浸かりの繰り返し。
とは言っても、湯温は41度くらい。1時間半くらいでやっと40度割れに。最初からこれくらいだと良かったなぁと少し残念だったけど、次回に活かすべし。
チェックインが16時。到着して一息ついて入らせてもらい、夕食後と朝食前の全部で3回。だんだん源泉ストップのタイミングも分かり、湯の沸かし具合もぬるめにしてくれて、3回目は39度割れで極楽だった。
38度ちょいでもじんわり顔から汗が出てくるほど、濃くて効いてくるお湯。
湯底にはざらっと湯の花が溜まってるけど、つるつる。この湯船の縁みたいなつるつるなのかな。底は見えない、薄黄緑色に白濁した濁り湯。少し泡付きもある。
ふくらはぎを擦り合わせるとつるつるの肌触り。重曹泉のクレンジング効果に、潤いのメタケイ酸が181mgも含まれてる。
肌を手のひらでなぞると、肌の凹凸を全く感じないようなしっとりつるすべ。
湯からあがって乾いた肌はねっとりとする。塩化物泉なので保湿効果があり湯冷めしにくい。
湯面には白っぽいカルシウムらしい膜が浮かび、かすかにざらりとする。しょっぱくて甘みがある出汁味。
主に女将が対応してくれたけど、ご主人も息子さんも、みなさんとっても丁寧で素敵なご家族。1日1組のために丁寧に薪でお湯を沸かし、丁寧な食事を準備してくれ、なんだか頭が下がる思いだった。
湯抱温泉 中村旅館
★★★★★
含弱放射能-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
30.6度
内湯1
加水循環消毒なし 加温あり
2020.3.20 宿泊
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