箱根湯本温泉 萬翠楼 福住(神奈川)

“晩の泊まりは箱根か三島ただし湯本の福住か”と、江戸時代のかごかき唄に歌われた箱根屈指の老舗宿、萬翠楼 福住。

初代当主がこの地に宿を開いたのは約400年前の寛永2年。宿の命名は木戸孝允によるもので、福沢諭吉や伊藤博文など多くの政治家や文人墨客が逗留してる。部屋の掛け軸が昔の総理大臣の書だった。それより何より、徳川慶喜が泊まった宿は初めて。慶喜の直筆の掛け軸が飾ってる部屋もあるとか。

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箱根湯本駅から歩いて7分足らず。早川沿いに建つ宿は、湯場滝通りの橋からは樹々に隠れぎみだけど、昭和棟の部屋からはしっかり川も橋も見える。

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現在の旅館の輪郭ができたのは明治12年。築140年ほどになる、擬洋風建築の萬翠楼と金泉楼は旅館第一号の国指定重要文化財。残念ながら、橋を渡って向かいまで見に来たけど、外観は屋根しか見えない。

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玄関は昭和棟。

それにしても、箱根湯本は超近い。新幹線で30分ちょっとの小田原駅から箱根登山線で15分。45分の熱海とそんなに変わらない。衝撃的なほど近かった。駅からもふらりと歩けるし。

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大浴場は一階にあり、一晩中入ることができる。ふたつの浴室は広さが全く違うとのことで、19時と朝の8時半の2回も男女入れ替えがある。

出入り口には美味しい箱根の湧き水。

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まずは右側の小さい方の浴室。脱衣籠の数で利用者を制限していて、5つに間引いてある。

部屋は全部で15室。萬翠楼と金泉楼を擁する明治棟と昭和棟があり、金泉楼と昭和棟の各部屋には温泉の檜風呂が付いてるので、大浴場が混雑することはなさそう。

利用時間も一晩中ずっとだし、誰とも一度も浴室でかぶらなかった。

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タイルがクラッシックな浴室。天井も高く広々した造り。小さいなんて言われても、そうは思えないほどゆったりした造り。入れ替えなくてもいんじゃない?と思うほど。

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左側に内風呂の湯船、右奥にシャワーが3つ。突き当たりのガラス戸の向こうには露天風呂。

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振り返って脱衣所の出入り口。可愛い!レトロなガラス戸がすごく可愛い。

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内風呂は「扇の湯」という湯船。うん、扇の形。真ん中に湯口らしき装飾物があるけど、湯は出てない。

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右下の湯の中にあるこのパイプから、直接湯船に注がれてる。湯口を測ると45.5度。実際はもう少し熱いのかも。

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湯船の温度は38.6度と絶妙なぬる湯。ん〜、いい。タイルがつるつるで、お尻がつるんと滑る。タイルだけど清潔で気持ちのいい湯船。

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源泉温度が39.8度なので、加温してのかけ流し。pH 8.9のアルカリ性単純温泉。無味無臭、塩素消毒もないかけ流しで、透明度が高く、つるつるの湯感触が心地いい。肌をさすると、つるつるきゅっきゅの肌触り。ぬる湯ゆえにお湯に包まれる感覚が鮮明で、真綿のようだと形容されるのも分かる。

縁の切り込み部分からは滔々と湯が溢れ出ていて、かなりの量が注がれてる。

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奥にも切り込みがあり、露天風呂の出入り口に向かって、湯が床を流れていく。出入りの際に足元が暖かいし、清潔だし、すごくいい。仙仁温泉 花仙庵 岩の湯(長野) – 温泉手帖♨︎とかそうだけど、こういう細かい気遣いみたいなの出来るのってほんとすごい。

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ガラス戸を開けると、真新しい木の板が敷いてあり、ベンチもある。

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湯船の大きさは4、5人サイズだけど、3人入ってたら遠慮する感じ。

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葦簀で上も囲ってあり、野ざらしの露天ではない。虫除けにもなるし、陽も防げていい。

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檜の湯船。

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湯口からは46度の加温源泉が注がれ

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縁からざばざばとかけ流されてる。

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湯温は42度ちょっとあり、残念ながら熱いので、お湯を堪能することはできず、そそくさとぬる湯の内風呂へ戻る。檜の湯船すきなので残念。

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2つの大浴場はこの壁で仕切られていて、上は抜けてる。

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もう、こっちの浴室で充分なのだけど、夜から翌朝まではあちらの浴室が女湯になる。

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同じように5人制限だけど、誰にも会わない。

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お。全然違う。想像以上の広さ。

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内風呂は「一円の湯」。大きなまんまるの湯船。

一面が全面ガラス戸になっていて、露天風呂や緑が見える。天窓もあり、とにかく明るい浴室。同じ天井なのだけど、すごく高く広く感じる。

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シャワーは奥の壁際に4つと、脱衣所側の隅に1つ。

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このタイル張りめちゃくちゃ可愛い。

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縁からはどばどばと湯が溢れかけ流され、洗い場に向かって流れていく。

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脱衣所入り口に向かってもこの排湯の流れ。いいなぁ。

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湯船は38.7度といい具合のぬる湯。左奥にある湯船の中の穴から40度の加温源泉が出てる。おそらく、扇の湯の湯口と同じ辺り。

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壁際の真ん中にももう一つ穴があり、ここからは37.7度のぬるめの湯が出てるように感じた。加温してない源泉そのものなのかな?

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福住は箱根湯本では超希少な自然湧出の自噴泉を保有してる。

箱根温泉の開湯は、湯本熊野神社下に湧く“惣湯”を発見した奈良時代(738年)。それから明治時代の中頃まで、なんとその惣湯源泉1本だけで支えられてきた温泉地。

明治25年、敷地内の湯坂山山麓の岩盤の割れ目から湧出してる温泉を、横に掘った横穴式の源泉を開発。これが福住の“湯本第3号源泉”。掘削自噴とも違う、横穴自然湧出泉。

湧出量は毎分160ℓ、少ないときでも毎分100ℓを超える湯が自然に湧いてる。惣湯は今では動力揚湯なので、自然湧出はあまりにも貴重。

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源泉は単独管理で、ここでしか入ることができない。宿の裏手に福住の別荘として明治期に建てられた平賀敬美術館があり、その敷地内に湧いているので、かつて10年ちょっとの間はそこで日帰り入浴できてたらしいけど、それも今は閉館して無い。

どばどばかけ流しなのに、湯口が中にあるから音がするわけでもない。静かに湯に身を任せていると、湯の流れがふわふわと身体を包む。たまらなく心地いい。

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露天風呂は41.5度とやっぱり熱い。

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でも排湯が間に合わないほどのかけ流しは気持ちいい。

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奥の左右にパイプがあり、それぞれから44度弱くらいの湯が注がれてる。

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部屋のお風呂は檜で

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かなり大きな湯船。

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自分で湯を張って使う。大浴場と同じで加温だけした源泉で、塩素消毒もなし。

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カランをひねると46度弱に加温された源泉が出る。当然、この勢いでお湯を溜めると湯船の温度は43度超え。

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湯を止めてから、1時間半ほどで41.5度。その後は冷ましたり、熱い湯を足したりしながら、好みのぬる湯で好きに入る。

100mちょっと引湯する間に湯温が下がるので、どうしても加温するしかないそう。残念だな。

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それでも、箱根湯本の貴重な自然湧出泉。食事も美味しかったし、またいつか来たいな。冬に来たら、葉っぱが落ちて明治の建物が見えるのかな。

 

箱根湯本温泉 萬翠楼 福住
★★★★
アルカリ性単純温泉
39.8度
pH 8.9
100〜160ℓ/分
内風呂2 露天風呂2
加温あり 加水循環消毒なし

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