秘湯を守る会のスタンプがいっぱいになって再訪した大出館。
土曜日はだめとか、1室しかとらないから招待宿泊は満室とか、なかなか渋い対応の宿が多いけど、すごく気持ちよく迎えてくれた。有り難いお宿。感謝。
そして、やっぱりものすごい名湯だった。
大浴場は1階の奥にあり、手前から貸切風呂、混浴の御所の湯。その先に、
女の湯、一番奥が混浴の墨乃湯。
貸切風呂は空いていたら札を入浴中に裏返し、
中から鍵をかけ、40分を目処に入る。
滞在中ほぼずっと空いてなくて、さすがに4時なら空いてるだろうと、早朝チャレンジ。
広い脱衣所で脱衣籠もいくつかあり、スペースも広く、洗面台もあり、普通の大浴場と変わらない。
“閉めてください”と書いてある浴室とのドアは空いていて、こちらにも硫黄の匂いが充満してた。
カランは手前にひとつだけ。奥に大きな窓。右上が吹き抜けになっていて、おそらく隣の御所の湯と繋がってる。
ほんのり緑がかった灰色の濁り湯。中が見えないけど、手前側の短い辺に段差がある。
縁の溝からこんこんとかけ流されている。中に入ると縁全体から湯が溢れていく。
しばらく人が入ってなかったのか、隅っこに湯の花の膜ができてる。
結構な量の源泉が惜しみなく投入されている。湯口は47度超えで、湯船はちょうど41度。
おそらく、開けたら閉めるように注意書きのある大きな窓がフルオープンだったせいだと思うけど、熱すぎない適温でラッキー。けど、浴室も脱衣所も外のような寒さだった。ちゃんと閉めてからあがりました。
混浴の御所の湯は、内風呂が2つ。とはいえ、多少の湯の行き来がある湯船らしい。それに露天風呂が1つ。足を踏み入れなかったけど、結構女の人も入ってたみたい。
女の湯は内風呂と露天風呂が1つずつ。
洗面台があり、流しもあるけど、硫黄成分でこんなになってる。
浴室のドアのまわりの析出物のすごいこと。
開けると、ものすごい硫黄の匂いがむわっと流れ込んでくる。
正面の壁際に湯船があり、左のガラス戸が露天風呂の出入り口、右手に洗い場。以前は左手前にもひとつあり全部で3つだったけど、2つになってる。
シャワーはなくカランのみ。置いてあるのはボディソープだけで、シャンプーは売店で買える。
ゆったりした内風呂。今日は緑がかった乳白色。ミルキーな深緑?なんて表現するのがいいのだろう。前回は灰色だったので、緑色で嬉しい。
夕方はこの深緑だったけど、翌朝はミントグリーンの濁り湯だった。
湯面には白い湯膜ができ、湯の中にもたくさんの湯の花。
基本的には端っこのここから湯がかけ流されていて、
すごい、グレーがかった白色のもってりとした粘土を固めたみたいな析出物。
でも、人が浸かると、縁全体から湯が溢れ出るので、縁はこのような形相に。
湯底の端っこには砂利みたいな、湯の花の塊なのか析出物の欠片なのか、じゃりっとする。
以前は壁が侵食されてぼろぼろになっていて、換気扇の囲いも壊れてたけど、ぴかぴかの新しいのが付いていて、壁は木張りになってる。
あの鄙びた感じがたまらなかったけど、木は木で素敵。浴室が少し明るくなった気がする。
湯口もリニューアルされ、石を組んだものに。49度の源泉が石を伝いながら注がれてる。
注ぎ方と、湯船の広さや深さからか、湯温は41度割れ。多分40.5度くらいの時間帯もあったかと。超適温でほんとに気持ちよくて、何度も何度も入りに来た。
ふわりとしたお湯でふわぬるの肌触り。遊離二酸化炭素が543mgも含まれてるからかな。pH 6.6の中性とは思えない。肌にじっとりし、湯から出るとねっとり。
泉質は、含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。空気中には硫化水素臭が立ち込めてるけど、すくって嗅ぐと硫黄っちゃ硫黄だけど樟脳みたいな薬品みたいな苦そうな匂い。そして、ただただ苦い。
露天風呂の出入り口にも、ものすごい析出物が付いてる。え?析出物だよね‥。なんでここにこんなに付くんだろう。
石段を降りた先に露天風呂。この階段が凍るから気をつけないと。夜は怖いので出なかった。でも、一晩中入れる。
入り口側に溢れた湯がかけ流されてる。
湯船の中に、石の段差がひとつ。
屋根のある部分に洗い場もある。2つあるけど、ひとつは蛇口がない。前回も冬だったので、外で身体を洗うとか思いもよらない。
おぉ。いい眺め。前回の黄緑色とは全然違う色。
湯口で48.5度。屋外なので、内湯よりほんの少しぬるい。湯船の湯温は40度と結構なぬる湯。いくらでも入っていられる。めちゃくちゃ気持ちいい。
すごい泡をともなって、注がれてる源泉。
綺麗なミントグリーンのお湯の中に白い湯の花が大量に舞ってる。
顔を洗うと、かなり目にしみる。しばらく目がやばかった。煙をばっちり浴びてしまった時と同じような状態で、長い時間しばしばが続く。
混浴の墨乃湯の女性専用時間は、14時から15時までと、19時から20時半まで。
前者はチェックイン前で、日帰り入浴や連泊の人用じゃん、と思ったけど、そうだった、チェックイン13時からできる宿なんだった。絶対早く来るべき。
寒い脱衣所。足の裏も冷たくて、湯上がりもすぐ冷える。大急ぎで浴室へ。でもこの扉が硬めでなかなかきちんと閉まらない。
湯煙の充満した浴室。正面の高い位置の窓の向こうは女の湯。天井の一部が湯気抜きのため高くなってる。部屋から見えてたので、外から写真撮っておけばよかったな。
女の湯と同様に壁が木造りに変わっていて、雰囲気が随分違うけど、山の湯治場の湯小屋という雰囲気は相変わらず。
左手にカランが2つ。
湯船は2つで、左の黄緑色のが他の湯船と同じ源泉、御所の湯。
小さめの湯船だからなのか、源泉からの距離なのか、ここだけめっちゃ熱い。湯口は48.5度弱で、湯船は43度超え。
ざばざばかけ流し。投入量も多いのかな。
右手の墨色の湯船が墨乃湯。源泉名は五色の湯No.3。
pH 6.2の中性で、泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。
鉄分が多いからなのか、縁が鉄板みたいな色になってる。鉄以外に御所の湯には含まれてないのが、アルミニウムイオン。皮膚病に効能がある。
メタケイ酸の湯の花の珪華(シリカ)と鉄華で黒くなることがあるって何かで見た気がする。
同じ泉質名だなんて信じられないくらい違いがある。
53.5度超えの源泉が想像してたより、しっかりした湯量で投入されてた。こちらの源泉は、苦味というより少しの渋みがある。そして、目にはあまりしみない。
石を伝って湯船に流れ込むので、石に灰色の湯の花がべっとり付いてる。
湯口の周りは特にたくさんの大きな湯の花が舞っていて、
湯口の真下には、泥湯みたいな湯の花がもっさりわさわさ溜まってた。
こんな大きな湯の花も浮いてる。
触ると溶けてく。
換気扇も綺麗なものに。必ず窓も一部開いていて、しっかり換気できてる。
湯温は41度弱。すごいぬる湯で寒いだろうと覚悟して入ったので驚いた。残念な気持ちもあるけど、冷えた身体には適温。女性時間満喫して長湯する気満々だったので、それはちょっと残念。熱くて汗だくになった。
夜中や早朝は、かなりぬるくなってたそう。さすが自然湧出。外気にも影響されるだろうし。
粉っぽさはあるけど硫黄ではない。鉛のような匂い?潮のような匂い?うーん、とにかく硫黄ではない匂い。
じっとり肌に染み入るような肌触りで、湯から出た肌はじっとり。指先はするする。
まさに墨色。白、灰色、黒の大小様々な湯の花がたくさん舞ってる。
名湯だ。また来てよかった。名湯再確認。
身体についた硫黄の匂いが最強で、帰りのバスも、家に帰ってからもしばらく堪能できる。
奥塩原元湯温泉 大出館
★★★★★
[御所の湯]
含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
51.1度
pH 6.6
110.6ℓ/分(掘削自噴)
[五色の湯No.3]
含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
50.3度
pH 6.2
3.32ℓ/分(自然湧出)
混浴(内風呂4露天風呂1)女湯(内風呂1露天風呂1)貸切風呂1
加水加温循環消毒なし
2022.2.26 宿泊
♨︎ ♨︎ ♨︎ ♨︎ ♨︎
1200年の歴史がある塩原温泉郷。古くから塩原十一湯と呼ばれていて、東から西へ、大網、福渡、塩釜、塩の湯、畑下、門前、古町、中塩原、上塩原、新湯、元湯という湯本が点在。渓流沿いに60軒ほどの温泉宿があり、源泉数は150ヶ所以上。多様な泉質や成分の温泉が湧いている。
この温泉郷の一番奥にあるのが元湯。昔は元湯千軒といわれるほど栄えていたという、塩原最古の湯。
塩原温泉バスターミナルから送迎の車で約20分。今は、静かな山あいに3軒の旅館がひっそりと残っているだけ。宿の下を赤川の清流が流れ、辺りはナラやクヌギの原生林が生い繁ってる。
大出館は秘湯を守る会。古くから胃腸によく効く名湯といわれ、長期の湯治客も多い。泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。2本の源泉を持ち、湯船は8つ。
大出館といえば『墨の湯』。日本にひとつしかないと言われる鉄分たっぷりの黒いお湯。
普通、鉄分の多い温泉は赤茶色がほとんどなので、確かにめずらしい。黒というか濃い藍色。
湯口が硯のよう。
細かい濃い灰色の湯の花がたくさんで、黒い湯に見える。
匂いはそんなにきつくなく、鉄っぽさもない。
タオルが真っ黒になるみたいだけど、湯船に浸かっている縄も真っ黒。
しっとりした湯感触で、湯上がりの肌もしっとりが続く。肌のセラミドを整えコーティングするメタケイ素がたっぷり入ってる。
湯温は36.5度前後でかなりのぬる湯。底の方はさらにぬるい。
回らない換気扇のある換気口から雪が舞い入ってきて、内湯だけど浴室の気温は低い。
湯口の近くの湯面でやっと37度。この時期、あと1度高ければいいのにと思ったけど、それでも1時間じっくり浸かる。
ゆっくり眺めていると、壁の侵食が半端ない。温泉の成分があまりに強いので、ほとんどの金属はすぐに腐食してしまうそう。客室の電化製品の寿命も長くて1年とのこと。
湯の排出口。鉄板みたい。
墨の湯の源泉は五色の湯No.3。含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(硫化水素型)。それほど硫黄臭はしない。
もう1本の源泉 御所の湯と泉質名は同じだけど、墨の湯の方は鉄イオンとアルミニウムイオンを含んでる。飲泉すると胃腸だけでなく、貧血や婦人病などにも効く。消毒効果のあるメタホウ素もたくさん含まれてる。
墨の湯には湯船が2つ。左側にあるのは鹿の湯。
左:鹿の湯、右:墨の湯
墨の湯から見た浴室。カランは二ヶ所。温かい湯と水を混ぜて使う。ボディーソープだけ備え付け。シャンプーは売店で買える。
鹿の湯は、深緑の濁り湯。
こちらの侵食もすごい。白い析出物もある。
石油臭があり、苦くて飲めない。
白い湯の花が少し舞ってた。43度前後で熱い。こちらに先に入ると、墨の湯がさらに冷たく感じるので、最後の上がり湯に。
墨の湯は混浴だけど、14時から15時と、19時から20時半が女性専用時間。この時間にしっかり堪能する。
墨の湯の隣が女性専用の浴場。
女性専用の浴場には内湯と露天風呂がある。内湯は高尾の湯、露天風呂は子宝の湯。
源泉は御所の湯で『五色の湯』と呼んでいる。天候や季節により色が変化するお湯。晴れるとエメラルドグリーンや乳白色、雨が降ると灰色に変化するらしいけど、大雪の今日は‥。
まずは内湯。緑がかった灰色の濁り湯。
右の壁が墨の湯との境。墨の湯とは全く違う明るい浴室。40度くらいの絶妙な湯温でゆっくり入れる。朝は41〜42度だった。
硫黄らしい白く柔らかな湯の花が湯底の端の方に溜まってる。
湯船の縁は白く析出でコーティング。つるつるで痛くはない。
胃腸に効くお湯。少し苦いけど香ばしさもある。
やっぱり壁の侵食激しい。
回らないぼろぼろの換気扇がある換気口。
洗い場は3つ。もちろんシャワーないので、這いつくばってカランの下に頭突っ込んで洗った。
子宝の湯という女性用露天風呂。なんと露天風呂が黄緑色の濁り湯だった!HP見ても灰色っぽくて、こんな黄緑色だと思わなくて感動。
こんなに黄緑色な湯色初めて見た。
半分に屋根があるけど、風で雪が舞ってるので、顔は雪を浴びながら。
露天も内湯と同じ40度前後の湯温。
なめらかでつるりとした湯感触。とろみのある湯が暖かく感じるので、露天風呂も寒くない。
雪を眺めながら。
湯が掛け流されていくところに、黄緑がかった白い湯の花が溜まってる。もちろん湯船の底にも。
五色の湯の源泉は、浴槽ごとに浴用、飲用に特効があるとされてる。
この露天風呂は婦人病に効くと。だから子宝の湯。
もう一つの露天風呂、混浴の岩の湯は神経痛に効くそう。
こちらは湯温が熱かったらしい。
混浴の内湯は2つで、手前が糖尿病に効くという平家かくれの湯。
右の大きい方の湯船が御所の湯。胃腸に効くとされている。ぬる湯で長く入れるお湯だったそう。
もう一つ、貸切の湯船がある。
扉の札が『空いてます』だと、裏返しの『入浴中』にし中から鍵をかけて入れる。ここも24時間入れる。
どの湯船も夜中じゅう好きな時に入れる。それぞれの湯船の湯温や色に違いがあり、好みの湯に入れる。なんて贅沢な。
部屋が一階の大浴場の階だったので、気軽にお風呂に行けた。ドアを開けると硫黄の香りがぐわっとする。帰りのバスでは、自分から匂う硫黄にどっぷり。
塩原温泉 大出館
★★★★★
含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
50.3度(墨)、51.1度(五色)
pH 6.2、6.6
3.2ℓ/分、110.6ℓ
内湯6 露天風呂2
加水加温循環消毒なし
2018.12.29宿泊
コメント
読みやすく頭にすっと入ってくるブログに久しぶりに遭遇しました。温泉の好みも近いので参考にさせていただきます。
yousay239さま、
嬉しいコメントありがとうございます。
おススメ温泉ブログではなく、温泉記録ですが、何か参考になることがあれば幸いです。
温泉愛が凄く伝わってきたので記録以上の読み応えありますよ。ここに掲載されていた宿に4月5月行ってきます、今から楽しみです。ちなみにですが大井川鉄道利用しての寸又峡温泉はおすすめです。たぶの家という宿ですと隣に日帰り温泉も併設されててどちらで入ってもトロトロの温泉味わえますよ。
yousay239さま、ありがとうございます!
ノーマークの温泉です。調べてみますね。ありがとうございます。