東北新幹線白石蔵王駅から遠刈田温泉行きのバスで約40分、終点からは宿の送迎車で約10分。辺りはすっかり雪景色。
標高500メートルの高原に、6軒の温泉旅館と1軒の日帰り温泉施設がある小さな温泉街 青根温泉。
21代続く湯元不忘閣。
仙台藩伊達氏の「御殿湯」が置かれ、代々伊達家の湯治場として利用されてきた。かつて藩主のための宿所であった「青根御殿」が、今も敷地内に残っている。
泊まった部屋から中庭の池越しに見るとこんな感じ。
青根御殿は明治時代に青根大火で焼失したものを昭和7年に再建したもの。
お殿様の部屋からは自分の領地の仙台、松島までが見渡せて、狼煙で連絡を取り合っていたそう。
毎朝、女将の青根御殿ツアーがあって、中に入ることができ、伊達家の古文書とか、お殿様が持ってきてたお弁当の重箱とか、いろいろ説明してもらえる。
ここからの眺めを見ることができるだけで満足。
開湯は1528年。伊達政宗から湯守を命ぜられたのが始まり。
江戸時代の不忘閣。
宿の名は、青根御殿に滞在した政宗が感激と喜びを忘れまいと「不忘」と名付けたのが由来。
1546年に伊達藩主の御殿湯としてつくられた「大湯」は、長い間共同浴場として利用されてきたけど2006年に老朽化で閉鎖。それを古代伝統工法による復元工事で復活させたもの。
青森ヒバを使った広い建屋。
高い天井。釘は全く使わず、内壁には温泉でこねた京都の稲荷山の土。
脱衣所はなく、端に籠がいくつかと木のベンチが1つ。
古い石組みの湯船は、伊達政宗が湯浴みした460年以上前と変わらぬまま。
当時、蔵王山中の転石でセメントを使わずに、ひとつひとつの石の大きさを組み合わせて、2年かけて作り上げたそう。
長い湯船。湯口付近は43度ちょいの湯温も、反対側の端っこでは42度弱。
しっとりと肌に馴染むお湯。
男女入れ替え制で夜の8時と朝の8時に交代。
同じ時間に交代になる「新湯」と男女入れ替え。新湯は建物の反対側。階段を降りていく。
籠があるだけだけど、清潔な脱衣所がある。
藩政時代からそのまま残るという石造りの湯船。すごい風情。歴史‥。
大湯についで古い1528年からの湯船。伊達政宗の時代から、芥川龍之介や川端康成などの文人たちも入った湯船そのまま。
優しい光が差し込む。
入る時や最初は熱くないのだけど、じんわり暖かさが染み入ってくる。42度前後。
お尻と足裏に石のざりっとした感触。湯は大湯よりもさらりとしている気がする。
大湯にもあったけど、湯口に柄杓。飲んでいいよーってこと。
芳ばしい硫酸塩泉の味。薄くて単純泉だけど。
男女入れ替えで「大湯」か「新湯」のどちらかに入れる。
単純温泉だけど、ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉に近い。どんなに温まっても、湯上がりの肌はさらっとする。
貸切風呂は2つ。
蔵の中の貸切風呂「蔵湯浴司(くらゆよくす)は、帳場の横に手形みたいな板(貸切札)があれば空いてる。それを浴場に持って行き、入口に立て掛けて入る。
ここで外履きに履き替えて。
明治初期に建てられたなまこ壁の蔵が3つ並ぶ石畳を進む。蔵には伊達家ゆかりの品々が納められているそう。
蔵湯は、突き当りの穀蔵として利用されてきた蔵にある。
重厚な扉を開けると、蔵一棟丸ごと浴室。
贅沢。殿様気分。
入った途端、檜の香りがすごい。
余計なものは何もない。檜の湯船以外は脱衣かごだけ。
高い天井に見事な梁組み。
湯が溜まったばかりの1番風呂。
外気がすごく寒いので、すっごい熱い湯に感じるけど、入ってしまえばそうでもない。
湯桶や台などすべての納まりが美しい。
朝の8時まで一晩中いつでも開いていれば貸し切れる。
もうひとつの貸切風呂は、先々代の湯守の名を引き継いだという「亥之輔の湯」。
短い外廊下の先に
背の低い潜り戸。
覗いてみるとわくわくする。
あがりに木のベンチと服を入れる木桶。
小さな露天風呂。唯一の露天風呂。
湯温は熱め。外がかなり寒いので、熱くしているみたい。
いわゆる大浴場なるものが、男女別の「御殿湯」。伊達藩一門が利用した殿様専用の木造の湯船。数百年の間に度々改築し、当時の面影は窓の外の石垣だけだとか。
これも夜と朝の8時に男女入れ替え。
脱衣所から浴場への扉。
小さな木の湯船。
透明で湯底の木が綺麗。
男女の浴場の境は上がかなり開いている。大湯が元はひとつの湯船だったように、御殿湯もそうだったのかも。
もうひとつの御殿湯は大きめ。とはいえ、蔵湯と同じくらいか、蔵湯より少し小さいか。
43度前後。湯船はタイルの浴槽の上に木板を張ってある。シャワーはここだけ。でも1つだけ。
湯船がいくつもあり、しかも一晩中入れるので、ほとんどが独泉。薄暗い灯りの中で入る歴史ある湯船は、ひとりだけどひとりじゃないみたいな不思議な湯浴み。
青根温泉 湯元 不忘閣
★★★★
49.8度
pH 7.4
内湯5 貸切露天風呂1
加水加温循環消毒なし
2018.12.15宿泊
コメント