棧温泉‥かけはし温泉。前から認知はしてたけど、漢字が読めずになんとなくスルーしていた温泉。
しかも、木曽福島ってアクセスしづらいと思っていたけど、長野まで新幹線で1時間半、ワイドビューしなのに乗り換え1時間半。駅から車で10分かからない場所で、駅にはちゃんとレンタカーもある。
一軒宿の棧温泉旅館の創業は1956年。木曽八景のひとつ、中山道の難所に石垣で作られた「木曽の棧」の地に佇む秘湯。
紅い橋から対岸に見える右側の建物が客室や食堂、左側のひとまわり小さな平家が大浴場。
眼前に木曽川が流れる自然豊かな宿で、部屋にいても温泉に浸かっていても、常にいろんな野鳥が歌いまくってる。
ご家族で営む全9部屋の小さな宿で、食事も接客も素晴らしい。
大浴場は別棟なので、一旦宿泊棟を出て歩いていく。外履きに履き替えたりの必要はない。
遠い遠いとネットで目にしてたけど、別に大して遠くない。
渡り廊下を少し行けば、目の前に浴室棟。
階段を登ると、手前が男湯、奥が女湯の出入り口。
有り難いことに、一晩中いつでも入浴可能。
意外なほど広くて綺麗な脱衣所。手前に鍵付きロッカーとトイレもある。
確かに古いけど、窓に蜘蛛の巣とかもあるけど、清潔であってほしい部分がちゃんと清潔。
このゴザとか、どこよりも綺麗。普段は脱衣所はつま先で歩くけど、そんな必要もない。虫の死骸とか髪の毛とか、普通にありそうなものがない。
浴室に入ると、この独特な初めて見る風景に、ほほう、となる。
洗い場と湯船の間にカーテン。
カーテンの向こうには2つの湯船と木曽川。
想像以上に大きな湯船に、オレンジ色の湯が満たされてる。
古くは地元の村人や中山道をゆく旅人から“薬水”と呼ばれ、利用されてきた源泉。
洗い場にはシャワーが6つ。内ひとつ、1番奥のは故障中。こんなに綺麗な洗い場で、こんなにたくさんシャワーもあるんだ。
シャンプーもコンディショナーも、ボディソープまで揃ってる。
川向こうの旧中山道から洗い場が見えないように配慮したカーテンだと思うけど、カーテンから湯船に行く時、誰もが無防備だよ。
湯船からは紅い橋も、木曽の棧の石垣も見える。
ありがちな窓にスモークの目隠しとか、簾とかがなくて、眺めがいい。
2つの湯船は同じ大きさ。源泉湯船は小さいのかと経験則で思い込んでいたので、驚いた。
左の源泉湯船の方が茶褐色が濃い。ふわりと鉄の匂いがする。
加温湯船に先に入ると、もう源泉湯船に入れないんじゃないかと危惧し、とりあえず源泉湯船に突入。
足を踏み入れると、もわっと湯の花が舞い上がる。あまりの冷たさに足がぴりぴり痺れる。いや、炭酸の刺激なのかもしれない。
湯の中で足と足を擦り合わせると、ぬるりとした肌触り。
湯口までが遠い‥。あまりの冷たさに一歩も踏み出せない。ちりちり痛いほどの冷たさ。うーむ、夏にしか来られないな。
源泉湯船は源泉かけ流し。縁を超えて湯が溢れ出ていく。湯と言っていいのかな、湯じゃないよな。
洗い場の、源泉の通り道には立派な析出物の造形。
湯口の温度は14.7度。湯口にはねっとりと湯の花が溜まってる。
鉄分を含むので、湯口では透明だけど空気に触れると赤土色に変化する。
湯口からの源泉を手で受けると
この炭酸!平成25年の分析書だと1864mgも遊離二酸化炭素が含まれてる。
湯口の源泉で顔を洗うと、唇や頬がぴりぴり痛いほどの刺激がある。
鉄分を含む単純二酸化炭素冷鉱泉。飲むときはあまり鉄の感じはなくて、炭酸味というか完全なる炭酸水。
身体は入った瞬間に泡まみれ。肌をさするとぬるぬるで、泡がしゅわしゅわっと浮いてくる。
体内に吸収された炭酸ガスは血管を拡張し、血流を促進するので、血圧が下がり心臓の負担が減少する。二酸化炭素泉は心臓病に効く泉質。
でも、湯船の温度は17.9度。一歩入った段差に腰掛けるところまでしか出来なくて、肩まではつかれない。心臓止まりそうで。
一緒になったおばあさんは、勢いよく肩までつかり、加温と源泉を行ったり来たりしてた。見てるこちらが心配になる。心臓大丈夫なのかな。
源泉湯船には茶褐色の細かい湯の花が大量に舞ってる。しばらく身を潜めてから肌を触ると、細かい砂のようなざらざら感がある。沈んでいく湯の花が肌に積もってる。
源泉につかってる部分の肌が、あまりの冷たさでピンク色になってくる。やばいやばいと加温湯船へ。
湯からあがるとつかってた部分がぬるぬる。pH 5.4の弱酸性。何がぬるぬるなんだろう。1番多く含まれている成分は、重曹の炭酸水素イオンだけど208mgだし。
残念ながら、加温湯船にいる時間の方が長かった。仕切りの部分に浸かり、源泉で顔を洗いながら。
源泉温度が14度と低いので加温してる。コロナ以降、ほんの少し消毒もしてるそうだけど、塩素臭は感じない。ほんのり鉄の匂い。
湯口の温度が42度で、湯船は41.5度前後。循環してるとはいえ、この析出物。
源泉で冷えた状態から加温湯船に入ると、めっちゃ熱く感じるのかと思いきや、そうじゃない。肌の冷たさが持続したまま、少しずつ湯に溶かされていく感じ。暖かさを実感するまで、身体が暖まるまで、時間がかかる。
加温湯船の湯の花は粒が大きめで濃いオレンジ色。
夜中は、源泉に足先さえつける勇気はなく、加温湯船で程よく暖まるだけに。
翌朝の2つの湯船。昨日と色味が違う。茶褐色が濃く、濁りもあった源泉湯船がクリアに透き通ってる。
上の画像が源泉湯船で、下が加温湯船。
当たり前だけど、加温の方は昨日と変わらない。
近くで見ると、
上が源泉で、下が加温。
源泉湯船は底がはっきり見えるほど澄んでいて、湯の花が積もってるのも見える。
足を入れると巻き上がる。
加温の方のオレンジ色の大きめの湯の花とは全く違う、細かい砂のような湯の花。
朝の湯温は17度と、冷たさに磨きがかかってた‥。
肌への効果が的面。毛穴がなくなるみたいな細胞がぱんぱんな感じ。炭酸効果もあるのかな。炭酸の泡は血行促進の効果があるので、老廃物を流してくれ、むくみなどに効き美肌効果もある。天然の保湿成分メタケイ酸も86mg含んでる。
棧温泉 棧温泉旅館
★★★
単純二酸化炭素冷鉱泉
14.1度
pH 5.4
70.5ℓ/分
男女別内湯(各 加温1源泉1)
加水加温循環消毒なし ※加温湯船は加温循環消毒あり
2021.7.10 宿泊
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