キズ湯の誘惑に勝てず、9ヶ月越しに再訪。
今回の部屋は天泉。
できるだけキズ湯に近い部屋を選んだ。
広い内風呂と、外には露天風呂と冷泉風呂。この季節絶対入らないけど。
浴室がオレンジに染まっていて、少しテンションが上がる。
シャワーも2つと広い浴室。これくらいの大きさの大浴場、普通にある。
洗い場側へ切り込みの排湯口から、ざばざば湯がかけ流されてる。
素敵な段々の鱗のような茶褐色の析出物。素晴らしい。
湯口から出る源泉は46度なのに、湯量が多いからか、湯船は42度超えの熱さ。こんなに大きな湯船なのに、真冬なのに、そんなに冷めずに溜まるもんなんだ。すごいなぁ。
だけどなんと冷泉の蛇口付き!好きに湯温を調整できる。水で埋めるのとは違う嬉しさよ。
湯に浸かると、露天風呂側にある切り込みからも湯が溢れ出る。
今回、湯口から源泉が出てない事件があり、すぐ解決してくれたからなんの問題もないのだけど、湯が長い時間出てなかった湯面は、結晶のように湯の花が浮いてた。
浴室と露天風呂は、大きなガラス戸で仕切られてる。オープンにもできるけど、真冬なので締め切り。
露天風呂はゆったりサイズの源泉風呂と、小さめの冷泉風呂。
冷泉の方は16度ちょい。
チェックイン直後の湯口は47度超え、湯船は42.5度と熱い。湯搔き棒が見当たらなかったので、混ぜたら適温だったかもだけど、寒い中作業する気にもなれず、露天風呂には足を踏み入れなかった。
これまた素敵な排湯口の壁。
触れるとしっかりオレンジ色。
せっかく立派な露天風呂ついてるのに、寒いから入らないってもったいない。
今回キズ湯に入る気満々で、夕食まで1時間以上、ちょうど誰もいない独泉を堪能。
湯口で38.8度、湯船は37.5度前後しかないのに、10分くらい経つと顔や頭から汗が出てくる。春に来た時より湯温が2度も高く、この季節に有り難かった。じっとりした肌触りで、泡付きがあるのにざらりとする。
相変わらず、ものすごい泡付きで心地よさマックス。少し身体を動かすと、湯面で泡が弾ける。飲んでも炭酸を感じる口当たりにほんのり甘さ。なのに遊離二酸化炭素360mgしか含まれてないって。
★★★★★
2023.1 宿泊
♨︎ ♨︎ ♨︎ ♨︎ ♨︎
鹿児島空港から車で15分。好アクセスの大好きな温泉地のひとつ妙見温泉。
天降川にかかる赤い妙見大橋から右方に見えるおりはし旅館の文字。
左方には妙見温泉 妙見田中館(鹿児島) – 温泉手帖♨︎が見え、まだ行けてない田島本館もある。
数多くの名宿がある妙見温泉の歴史はここ折橋から始まったのだそう。
霧島の天降川と中津川が合流するこの辺りは、折橋と呼ばれていて、宝暦2年(1752年)に、ここに住む折橋左門が、川岸に泉源を発見し湯壺を作ったのが始まり。
明治10年(1877年)、西南戦争で傷を負った薩摩軍の兵が湯に浸かり、その効能を伝えたことで、折橋の名が広く知れ渡ることに。
おりはし旅館の創業は明治12年。薩摩藩島津家の漢方医が湯治宿として開業。143年もの歴史がある老舗宿。
本館は大正時代の建物そのままで、いまは食事処。
本館の少し奥の川側にあるのが、妙見温泉発祥といわれている大露天風呂「えのきの湯」。
利用時間は夜24時までで、朝は6時から。ここはとにかく空いてる。
こじんまりした脱衣所だけど、洗面台が2つもあり、ドライヤーや化粧水なども揃ってる。
日帰り客もいるからか、無料ロッカー式。でも、大きめなので不便ではない。
誰もいないので結局ロッカーは使わず、ベンチの上に荷物を置いて着替えたけど。
外履きを脱衣所の入り口で脱いで、また外に出るのに裸足って違和感あるけど、どうでもいいか、もうひとつの扉から裸足で外へ。
お、大きな露天風呂。
出た正面にシャワーがあり、シャンプーなどもある。屋外とは思えない清潔さ。
緑褐色の笹濁りっていうのかな、見るからにすごい湯量豊富なのが分かる。ざばざばかけ流し。
ここから排湯されてるのか、露天らしく葉っぱがたくさん。周りの岩は薄茶色に染まってる。
湧き水らしい冷たい壺湯。敷地内に5本の自家源泉を持ち、内1本は冷鉱泉らしいけど、どうだろ、冷鉱泉じゃなくて湧き水のような。いや、冷鉱泉だったらいいのにな。
湯船の温度は42度割れで、端の方だと41.5度と、それほど熱すぎない。冷たい壺湯に手さえ浸ける気にならなかったけど、暑い季節は重宝しそう。
大きな露天風呂。手前側には屋根があるので、一応雨でも大丈夫。
飛沫が散るほどざっばざっば投入されてる源泉は、湯口で46度。
分析書がなかったのだけど、妙見21号という源泉っぽい。源泉温度が47.4度のナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉。本館の内湯に使われてた源泉みたいで、pH 6.6の中性。
迫力の鍾乳洞系の析出物。触ると指がオレンジ色に。
こんなゆったり大きな露天風呂ががらがらなのは、多くの人の目当てが「キズ湯」だから。
キズ湯は宿泊してる離れからはちょっと遠い別館の山水荘にあり、利用時間も夜20時までと限られてる。朝は7時から。別館は素泊まりのみ宿泊可。
玄関に入ると専用の仲居さんがいて、大浴場に案内してくれる。
奥が女湯。シンプルで清潔な脱衣所。無料の鍵付きロッカーが2段で並んでる。
別館の大浴場には内風呂が2つ。キズ湯ともうひとつは「竹の湯」。
正面の壁の上側は抜けていて、男湯と繋がっているみたい。壁や天井は新しくて清潔。
右手の上側も窓からの明かりが入り、天井にも湯気抜きか明かりとりか、天窓があるので、自然光の雰囲気のいい湯治場といった空間。
向かって左がキズ湯で右が竹の湯。色が全然違う。
2つの湯船からは、ざばざばと湯が溢れ出ていて、
キズ湯から
竹の湯から
かけ流されていくお湯は、仕切りの向こう側の洗い場へ流れ、床を茶褐色に染めあげてる。
洗い場にはシャワーが3つ。仕切りはないけど、それぞれのスペースが広め。
2つの湯船のうち、入ってすぐの左手にある方がキズ湯。琥珀色がかってるように見える透明なお湯。
小さめな上、手前と右側の部分に段差があるので、3、4人サイズ。
遠目にも、底に溜まった湯の花や、湯面に浮かぶ大きな湯の花がたくさん見えて、わくわくする。
湯口で37度ちょいの源泉。思ってた以上に暖かく、しかもざばざば投入されてる。敷地内に37.1度で湧いてる自家源泉。
創業者の長男が外科医だったので、キズ湯を“鉄湯は外科的治療に効果がある”として、折橋温泉の効能と存在を広く世に知らしめたのだそう。
とろりとしたお湯は甘みを感じる炭酸味で、鉄の匂い。
湯口にはねっとりとたっぷり湯の花が溜まっていて、指ですくうと泥湯みたいなのがすくえて、指先で擦ると溶けていく。
湯の花が多いので、毎日夜8時に完全換水し掃除をしているとのことで、夜間は入れない。
朝も7時からとちょっと遅めなので、入れる時間が短くて、夕方はかなり混んでた。
ただ、私みたいにキズ湯だけに入りたい人ばかりではなく、ぬる過ぎると言ってる人も多くて、とりあえず試しに入りに来たけどって感じの宿泊者かな。
超絶気持ちのいいぬる湯。湯船は大体35.7度ほどだけど、長湯してるとぽかぽかしてくる。じぃーっとしてると身体が熱の塊みたいな、発光体みたいな感じになってくる。
肌にじっとりするけど、つるつる感もある。何より泡付きがすごい。
遊離二酸化炭素が360mg。ぬる湯だからしっかり炭酸が残ってるのか、あっという間にかなりの泡が身体に付き泡まみれに。気持ち良すぎる。ふわふわの泡をはらうと、手がじっとりきゅうっと肌に吸いつく。
妙見温泉 忘れの里 雅叙苑(鹿児島) – 温泉手帖♨︎の下に降りてく川沿いのあわあわラムネ湯ほどではないけれど、この辺り、炭酸含む泉源があるのかな。超気持ちいい。
pH 6.3のナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉。鉄の匂いがしっかりする。
湯の花もオレンジがかったもさもさしたやつ。じっとしてると、ふぁさふぁさと身体に積もって、くすぐったい。
湧出量が毎分30ℓとそれほど多いわけじゃないので、小さな湯船にしてるのだと思うけど、充分過ぎる湯量が投入されていて、もったいないほどかけ流されてる。でもそれだけに、すごい新鮮なお湯を堪能させてもらえる。
もうひとつの熱い方の湯船は竹の湯。縁から外へ溢れる源泉で、鱗のような析出物がびっしり。
キズの湯の倍以上の大きさ。こちらは茶褐色の濁り湯。緑がかった笹濁りに見える時間帯もあった。
pH 6.5のナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉。キズ湯と同じ泉質名。
鉄風味は同じだけど、甘みはほとんどなく炭酸味も感じない。
炭酸水素イオンが1,292mgと多く、鉄分も倍近く含んでる。ふわりとしたお湯で重曹成分のつるつる感がある。きゅっきゅと肌にきしむ感じもある。
湯口で47.3度、湯船の中は43度超え。
こっちは熱すぎて、こっちはぬる過ぎるのね、と言いながらすぐに出て行く人たち。
翌朝はほんの少しぬるめだったけど、私も熱くて入れない。
湯口の横にあるホースから出てるのは冷鉱泉。冷鉱泉で湯温調節できるなんて贅沢。
こちらの湯の花は、濁りが強くてあまり見えてないのかもしれないけど、湯膜のように細かめのがたくさん浮いてた。
こうして見ると、キズ湯は小さいな。
夕方は混んでたけど、朝食後はずっと独泉だった。もったいなくて出られなくて、ずっと独りで入ってた。湯からあがると、指先がするする。
何より、朝イチのキズ湯は湯の花が最高だった。いわゆる雲丹みたいな湯の花が大量に浮いたり沈んでたり。
泡の湯温泉 三好荘(山形) – 温泉手帖♨︎や、横向温泉 下の湯 滝川屋旅館(福島) – 温泉手帖♨︎や、近くの雅叙苑と同じような湯の花。
ぬるくて、鉄と遊離二酸化炭素でこれなのかな。
しかも独りだったので、楽しみ放題。
客室は7万坪もの敷地に離れが13室。離れを徐々に増やしていってるみたいだった。
経営者一族の後継者がおらず、閉館の危機にあったところ、日当山温泉の日当山温泉 数奇の宿 野鶴亭(鹿児島) – 温泉手帖♨︎の女将が社長になり、2015年にリニューアルオープン。
全室にかけ流しの内風呂と露天風呂が付いてる。
シャワーもあり、充分な広さの浴室に内風呂。しっかり深さがあり、笹濁りのお湯。えのきの湯と同じ源泉なのかな。
湯口で45.5度で湯船は43.5度と熱い。排湯口の近くにカランがあるので、入る前にざばーっと水を入れると、あっという間に適温に調節できる。
排湯が間に合わないほど、ざばざばかけ流されてる。
壁の石も手すりも茶褐色に染まってる。
内風呂から外へ出ると一段下に露天風呂。
かなり大きな湯船に、緑がかった濁り湯がたっぷり。
もうひとつ小さな1人用の湯船は水風呂。湯温は17度ちょっと。冷鉱泉じゃなくて湧き水とのこと。
柵の向こうは天降川。
咲き始めたばかりだけど、目の前には桜の木。
縁からどんどん湯が溢れ出てる。
湯口は内風呂と同じ45.5度で、湯船は43度。こちらもホースがあり、自由に加水できるので、好きな温度で入れる。ざばざば源泉が投入されてるので、あまり気にせず加水できる。
昭和4年に離れに泊まった晶子が
“折橋のくちなし咲ける山荘にあり百歩していでゆにかよふ”
と詠んでる。
どっちに歩いて行ったのかな。えのきの湯かな、キズ湯かな。私はとにかくキズ湯に向かって歩いたよ。
妙見温泉 おりはし旅館
★★★★★
[妙見19号 キズ湯]
ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉
37.1度
pH 6.3
30ℓ/分
[妙見20号 竹の湯]
ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉
48.1度
pH 6.5
露天風呂(男1 女1)内風呂(男2 女2)
加水加温循環消毒なし
2022.3.19 宿泊
コメント
念願のおりはし旅館に行ってきました。私どもが泊まったのも露天風呂付きの離れで、とにかく素晴らしい体験でした。もう1泊したかったです。ただ、キズ湯は、体感で37〜38度くらい、泡付きもほとんどなく、「あれ?」という感じでした。いえ、十分に素晴らしい温泉だったのですが。
ちょっと仲居さんと話したところ、以下の情報が!
・冬の間、キズ湯は加温している。(5月くらいからは、加温しない)
・別館は素泊まりだけれど、なんと清掃が終わったら一晩中、キズ湯に入れる。
迷うところですが、キズ湯が目当ての私どもは、次回は別館にしてみようかな、などと思っています。(でも、お部屋の露天風呂&お料理も捨てがたく、悩ましい…)
masaruさん、念願のおりはし旅館、素晴らしい体験で良かったです!
お正月に再訪した時、キズ湯の湯温が39度と前回より高かったので、冬場は加温してるんだなと思いました。でも、泡付きはすごかったので、さほど気にならず。真冬なのでちょうどいい加温が有難いなと思いました。泡付きないのはすごく残念でしたね。ぜひぜひあれを味わっていただきたいです。
別館の素泊まりは捨てがたいけど、うちは旦那さんが部屋風呂付きを御所望で。独りで家出した時にでも狙おうかと思ってます♨︎
ご報告うれしいです。ありがとうございます。