鳴子温泉郷は、宮城県北部の大崎地方を流れる江合川の上流に位置し、鳴子、東鳴子、川渡、中山平、鬼首の5ヶ所の温泉地からなる。1200年の湯歴を持つ日本屈指の古湯で、奥州三名湯のひとつ。
375本もの源泉があり、別府、由布院、伊東、熱海、指宿に次ぐ6番目の源泉数らしい。
多くの宿が敷地内に自家源泉を持ち、湧出量も豊富なので源泉かけ流しが多い。温泉のデパートと呼ばれる登別温泉と同様、11種類の泉質のうち9つが存在している。
東北新幹線で2時間15分の古川駅で陸羽東線に乗り換え、鳴子温泉駅まで45分ほど。
鳴子温泉は鳴子温泉 湯の謌 吟の庄(宮城) – 温泉手帖♨︎(現 鳴子風雅)に来たのが最初。あまりに雑な備忘録しかないけど、少し期待外れだった記憶がある。
今回は、ひとつ手前の鳴子御殿湯駅で降りて徒歩5分の東鳴子温泉へ。
ちなみにもう一つ手前の駅は川渡温泉 山ふところの宿みやま(宮城) – 温泉手帖♨︎のある、川渡温泉駅。めっちゃくちゃいいお湯だった。
中山平温泉は鳴子温泉駅の一つ先にあり、名湯秘湯うなぎ湯の宿 琢ひで(宮城) – 温泉手帖♨︎に宿泊。鬼首温泉はノーマークだった。後で調べてみよ。
東鳴子温泉の旅館大沼は明治43年創業、110年の歴史ある老舗温泉旅館。湯治部屋も含めて20室弱の宿で、秘湯を守る会。諸々言い訳があるけど、楽天で予約してしまったのでスタンプもらえないという痛恨のミス。
夕方遅くに到着したので、夕飯前にすぐさま離れの貸切露天風呂「母里(もり)の湯」へ。
裏山にある母里の湯は、車で2、3分ほど。宿の車で連れて行ってくれる。1組1回30分(1,000円)の貸し切りで、宿に到着後に時間を予約するしくみ。
用意してくれている長靴を履き、車に乗り込む。
門を入るとすぐに小さな小屋。送迎を待つ時の待合室用の湯上り処。斜面の上手にはお茶室などもある。
凍った雪で滑らないように注意しながら小径を行くと湯小屋に辿り着く。
整然とした清潔な脱衣所。
仕切りなどはなく、すぐそこに湯船が有る。
露天だけど、しっかりした木の屋根がある。
大きな湯船。微妙に正確な長方形じゃないのはなんでなんだろう。
左側だけ湯船の中に一段の段差がある。
縁は木で、底は小石を敷き詰めたようなタイルみたいなやつ。
湯船の温度は42度弱。すぐに熱くなるので、ここで半身浴。湯口から離れると41.7度くらいだった。
ふわつるの肌触りで、肌にきゅうっと滲み入るようなお湯。土の香りがする。
雪が積もっているので分かりづらいけど、庭園に面していて、すぐ向こうには池がある。
湯口からはほんの少し、出てるかどうか分からないくらいしか湯が出てなくて、真下にあるパイプから投入されてるみたいだった。その湯温は54.5度。
大沼では2本の源泉を使用している。自家源泉と、東鳴子温泉の宿が数軒で使っている共同源泉。どちらも重曹泉だけど、やや異なる泉質のお湯を楽しむことができる。
この母里の湯は共同源泉(新井第2号泉と新井第5号泉の混合泉)。
泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉。pHは7.4の中性。肌の角質を溶かしてくれる重曹泉で、天然の保湿成分メタケイ酸が180mgと豊富な美肌の湯。塩分も含むので、コーティング効果で保温性もある。
源泉温度は66.4度。加水はもちろん消毒も一切ない源泉かけ流し。
小さめのこげ茶湯の花が舞ってる。
この共同源泉が注がれているもう一つの湯船が、混浴大浴場の「薬師千人風呂」。14時から翌朝9時まで一晩中入れ、19時半から21時の間だけ女性専用。
大浴場の入口は男女別。それぞれの脱衣所から浴室に入る。女湯の大浴場「天女風呂」も同じ出入口。
脱衣所には天女の絵。
あまり広くないので、籠をベンチに持っていって着替え。
右手に洗面台が2つ。右奥のガラス戸は閉鎖されてるけど、奥には女湯の天女風呂がある。L字型の脱衣所の向こうにL字型の浴室。
天女風呂はとりあえずおいといて。
この女湯の脱衣所から、混浴の千人風呂へ入れる。
湯気がすごくて何も見えない。
かなり大きい湯船。手前が女湯出入口で、奥が男性の脱衣所。男性側に薬師様がいる。
湯口らしき筒の上に目の絵。昔から目に効くとの言い伝えがあるそう。
もちろんかけ流しで、排湯口は女湯側。滔々とかけ流されている。
両側に洗い場があり、どちらもカラン3つに内シャワーが2つだったと思う。
翌朝覗いてみると、昨夜よりは湯気が少なくて、湯船が見えた。大きいけど、千人風呂は言い過ぎ。
女湯寄りの湯船の中に丸い座石があり、半身浴できるようになってる。
湯温は湯口の辺りが42度ちょっとで、離れた場所だと41.8度くらい。ふわつるの肌触り。
壁面にはたくさんの天女。仏画家の高橋典子氏が描いたもの。
さて、女湯に戻って天女風呂へ。
細長い浴室。出入口はここだけで、入ってすぐのところに洗い場がありシャワーが1つ。湯船の右奥にも洗い場がある。
奥の洗い場にはシャワーが2つ。この洗い場に来るには湯船の中を通るしかない。L字型の浴室。
うすい琥珀色の自家源泉。源泉温度が64.9度のナトリウム-炭酸水素塩泉で、湯口の温度は53.4度と熱い。湯船も42.8度。かなり熱い。すぐに顔から汗が出てくる。
自家源泉の大沼の湯は3本の源泉の混合泉で、重曹成分が特出している純重曹泉。純が付くのって、炭酸水素イオンとナトリウムイオンが85%以上の呼び方らしいけど、そんなに珍しいかな?意識したことなかった。
pH値は7.0で中性。肌にやさしくなめらかなお湯で、天然の保湿成分メタケイ酸が273mgも含まれている美肌の湯。とろみがあり、ふわつる感が強い。
湯船がそれほど大きくないので、排湯口だけでなく、縁を超えて溢れ出てる。
土の匂いがする。モール系なのかな。近くの川渡温泉 山ふところの宿みやま(宮城) – 温泉手帖♨︎がそうだったな。
茶色の細かい湯の花がたくさん舞っていて、翌朝は身体に積もるほどだった。
この源泉大沼の湯は、天女風呂の他にも「灯りの湯」「陰の湯」「陽の湯」と、5つの湯船に注がれている。
大沼は館内で湯めぐりが出来る宿で、8つのお風呂(1つは冬季閉鎖の足湯)があり、その内5つが貸切風呂。
最初に入った、車で連れてってもらう庭園露天風呂 母里の湯以外の4つは館内にあって、無料で一晩中入ることができる。
女湯の隣にある灯りの湯。貸切風呂は空いていたら中から鍵をかけて入るしくみ。
小さな脱衣室があり、湯船も小さめ。
手摺りがあり、介助が必要な方とかにいいらしいけど、それにしてはなかなかハードル高いよね‥。
湯守が湯量を調整して、適温にしているので、蛇口に触ってはだめ。
湯口の温度は52度。湯船は43.5度とかなりの熱さ。湯船が小さいので仕方ないけど熱すぎる。
シャワーも付いてる。
大浴場エリアにはもうひとつ、珍しいふかし風呂がある。
床下に温泉が流れ込む小さな部屋のお風呂で、浴衣のまま横になるそう。オンドルというやつ。入らなかったけど、床下から伝わる温泉熱と源泉が流れ込む音が心地いいらしい。
大浴場とこれらの貸切風呂は、玄関横の旅館棟にあるのでとても入りやすかったけど、残りの2つ「陰の湯」と「陽の湯」は湯治館にある。
しかも4階建ての4階。旅館棟の部屋から行くには階段の登り降りがちょっと大変。
一番上の階の廊下の行き止まりの左右に、陽と陰の湯がある。どちらも予約不要で空いていれば中から鍵をかけて入る貸切風呂だけど、ここまでやっとたどり着いて空いてなかったら凹む。
どちらも洗面台付きの小さな脱衣室がある。
陽の湯は長細い浴室。シャワーもついてる。壁には太陽を表す丸い窓がある。
黒湯に見えるほどの漆黒の湯船。縁は木で、中には備長炭が仕込まれているんだそう。備長炭の効果で、よりとろとろしたお湯になるとか。
パイプから源泉が注がれている。湯船の湯温は44度弱。かなり熱いけど、湯船が深いのでしっかり混ぜると42.7度くらいになり、なんとか浸かれる程度に。
暗めだし、備長炭がどんなふうにあるのか分からない。
陰も陽も女湯と同じ自家源泉の重曹泉。古い角質を溶かし肌をなめらかにする美肌の湯。しかも、コラーゲンの生成を助け、肌をみずみずしく保つ効果があるメタケイ酸がたくさん含まれている。
木の屑のような湯の花がたくさん舞ってる。
向かいにある陰の湯の浴室はゆったり広め。シャワーもある。
こちらの窓の形はお月さま。
湯船は小さめでひとり用。手前に段差があり、奥は少し深い。
湯の花がたくさん舞ってる。
湯温は43度ちょいで、湯船が深いのでしっかり混ぜたら42.7度くらいになったけど、小さいのであっという間に42.9度。これは熱い。
あっついので浅い段差に腰掛け半身浴。胸から下だけしか入ってなくても、汗だくに。
湯船には数種類の薬石が組み込まれていて、つぼ押し効果や、薬理効果が得られるそう。
汗だくになっても、あがるとすぐにさらりとする。さすが炭酸水素塩泉は清涼の湯。乳化現象で余分な角質を溶かした分、皮膚からの水分の発散がさかんになる。
湯上がりの肌はするする。指先を合わせると久々のするする。
東鳴子温泉 旅館 大沼
★★★★
[大沼の湯]
ナトリウム-炭酸水素塩泉
64.9度
pH 7.0
[共同源泉]
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
66.4度
pH 7.4
加水加温循環消毒なし
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